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書評委員の「夏に読みたい3点」④有田哲文さん、小宮山亮磨さん、長沢美津子さん、加藤修「好書好日」編集長、柏崎歓・読書面編集長|好書好日
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書評しょひょう委員いいんの「なつみたい3てん」④有田ありたあきらぶんさん、小宮山こみやまあきらみがくさん、長沢ながさわ美津子みつこさん、加藤かとうおさむこのみしょ好日こうじつ編集へんしゅうちょう柏崎かしわざき歓・読書どくしょめん編集へんしゅうちょう

有田ありたあきらぶんさん(朝日新聞社あさひしんぶんしゃ文化ぶんか記者きしゃ

①スローカーブを、もういちきゅう山際やまぎわ淳司あつしちょ角川かどかわ文庫ぶんこ・616えん
②アメリカン・スクール(小島こじま信夫しのぶちょ新潮しんちょう文庫ぶんこ・781えん
日本にっぽん文学ぶんがく序説じょせつ うえした加藤かとう周一しゅういちちょ、ちくま学芸がくげい文庫ぶんこかく1540えん

 ①の表題ひょうだいさく高校こうこう野球やきゅうあつかったノンフィクション。速球そっきゅうではなくスローカーブを多用たようし、甲子園こうしえん出場しゅつじょうった投手とうしゅ主人公しゅじんこうだ。ゆらゆらとおそたまが〈まるで自分じぶんのようにおもえ、みょうきになれる〉。たまそのものが、しなやかなかた比喩ひゆである。
 戦後せんご79ねん。②の表題ひょうだいさくは、べいぐん占領せんりょう時代じだい英語えいご教員きょういんたちが米国べいこくじんけの学校がっこう見学けんがくはなしだ。敗戦はいせんがわ卑屈ひくつさがこれでもかとえがかれる。さて、いまの日米にちべい関係かんけいは。
 ③はするど太刀たちさばきの通史つうし文学ぶんがくじく政治せいじ社会しゃかいともむすぶ。忠臣蔵ちゅうしんぐら人気にんきとなる理由りゆう忠義ちゅうぎそのものにはなく、〈団結だんけつの、集団しゅうだん所属しょぞくかんの、つまるところ日本にっぽん社会しゃかい基本きほんてき構造こうぞうの、見事みごと集中しゅうちゅうてき表現ひょうげん〉にあるという。まとまった時間じかんがあるときにぜひ。

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小宮山こみやまあきらみがくさん(朝日新聞社あさひしんぶんしゃデジタル企画きかく報道ほうどう記者きしゃ

暴力ぼうりょく紛争ふんそうの“集団しゅうだん心理しんり”(縄田なわた健悟けんごちょ、ちとせプレス・2970えん
②ニセ科学かがくを10ばいたのしむほん山本やまもとひろしちょ、ちくま文庫ぶんこ・1045えん
空白くうはくマイル チベット、世界せかい最大さいだいのツアンポー峡谷きょうこくいどむ(すみはたゆいかいちょ集英社しゅうえいしゃ文庫ぶんこ・748えん

 なつ戦争せんそうおもぶし。ふつうのひと暴力ぼうりょくのスイッチがはい仕組しくみを社会しゃかい心理しんり学者がくしゃ徹底てってい解説かいせつした①をむと、このくに経験けいけんした蛮行ばんこうや、あのくにきている惨劇さんげきが、きゅう身近みぢかおもえてくる。自分じぶんしたしいだれかが加害かがいしゃになる。それを想像そうぞうすることが、もしかして平和へいわにつながるかも。
 「陰謀いんぼうろん」という言葉ことばにすることが、ここすうねんえた。ただ、そういうのはずっとまえからあって、パターンもほぼおなじ。②でオカルトやニセ科学かがくれいまねべば、「またアレね」と見抜みぬけるようになるはず。
 なつ冒険ぼうけん。③の著者ちょしゃ会社かいしゃをやめて峡谷きょうこく踏破とうはいどんだ。一気いっき間違まちがいなしだが、たびそのものは苦行くぎょうつづきでちょう不快ふかい。まねしたい気分きぶんには一切いっさいならない。お子様こさまんでも安全あんぜん安心あんしん

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長沢ながさわ美津子みつこさん(朝日新聞あさひしんぶんくらし報道ほうどう記者きしゃ

増補ぞうほ 借家しゃくやいえ文学ぶんがく西川にしかわ祐子ゆうこちょ平凡社へいぼんしゃライブラリー・2420えん
②ワンピースのおんな(宇壽山貴やまき久子ひさこ写真しゃしん、すまあみぶんくさおもえしゃ・1980えん
③ビギナーズ日本にっぽん思想しそう 道元どうげん「赴粥めしほう」(道元どうげんちょ石井いしい修道しゅうどう監修かんしゅう角川かどかわソフィア文庫ぶんこ・1166えん

 日々ひびらしがうわそらになりそうなときからだみききたえてくれる衣食住いしょくじゅうほんを。
 ①は「いえ」という視点してんきん現代げんだいひゃくあまりの作品さくひん解剖かいぼうし、時代じだい絵巻物えまきものにしてませる。主人公しゅじんこういえつくったり、ったり。自分じぶん居場所いばしょさがしにおもいをめぐらせる。初版しょはんから四半世紀しはんせいき先月せんげつぼっした著者ちょしゃは、コロナまれた作品さくひんくわえた増補ぞうほばんのこ(のこ)してくれていた。
 ワンピースのなつ。②は日米にちべい61にんのポートレートで、雑誌ざっしくらしの手帖てちょう連載れんさいかんじたジャーナリズムがほん鮮明せんめいに。きなふくを、自由じゆうこなして姿すがたそのものがメッセージ。
 ③は修行しゅぎょうそう食事しょくじたいする心構こころがまえを、写真しゃしんりで解説かいせつした新刊しんかん所作しょさ道具どうぐしずかさもつたわってきて、言葉ことば(ふ)にちます。

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加藤かとうおさむこのみしょ好日こうじつ編集へんしゅうちょう

①ガイズ&ドールズ(デイモン・ラニアンちょ田口たぐち俊樹としきやく新潮しんちょう文庫ぶんこ・935えん
りょうきょうじゅうにち Ⅰ・Ⅱ(うまはくいさおちょ齊藤さいとうただしだかとまりいさおやく、ハヤカワ・ミステリ・Ⅰ2420えん、Ⅱ2530えん
③ナショナル・ストーリー・プロジェクト Ⅰ・Ⅱ(ポール・オースターへん柴田しばた元幸もとゆきやく新潮しんちょう文庫ぶんこ・Ⅰ737えん、Ⅱ781えん

 「このみしょ好日こうじつ」のなつ特集とくしゅう児童じどう文学ぶんがくがテーマです。ふだんげられなかった反省はんせいもこめて、大人おとなにはなつかしく、どもたちには読書どくしょくちになる作品さくひん紹介しょうかいする予定よていです。
     ◇
 エンタメ翻訳ほんやく名手めいしゅ田口たぐち俊樹としきさんのによる①は、90ねんまえ作品さくひん見事みごと再生さいせいしています。ミュージカルでしたしまれた「野郎やろうども」のドタバタとえば加島かしまさちづくりさん(チャンドラーにおける清水しみず俊二しゅんじさん)の翻訳ほんやくというひと納得なっとく心地ごこちです。②はいのちねらわれたあかり皇太子こうたいしが、復権ふっけんのため南京なんきんから北京ぺきんへ15にちあいだにたどりけるかという冒険ぼうけん小説しょうせつで、はじめたらまりません。③はラジオ番組ばんぐみせられた、人々ひとびと実際じっさいにあった「物語ものがたり」をまとめたもの。4がつまつ死去しきょした作家さっかしのべ(しの)びながら、人生じんせいの「偶然ぐうぜん」におもいをせてみませんか。

柏崎かしわざき歓・読書どくしょめん編集へんしゅうちょう

①ふたりのイーダ(松谷まつやみよさくつかさおさむ講談社こうだんしゃあおとり文庫ぶんこ・748えん
②このなつほしる(辻村つじむらふかしがつちょ、KADOKAWA・2090えん
③パパイヤ・ママイヤ(だい雄介ゆうすけちょ小学館しょうがくかん文庫ぶんこ・715えん

 今週こんしゅうなつ特別とくべつ企画きかくとして、書評しょひょう委員いいんえらぶ「なつみたい3てん」をおとどけします。わたしからは、大人おとな子供こどもたのしめる極上ごくじょうなつ物語ものがたりを。
     ◇
 コトコトあるまわるふしぎな椅子いす、といえば映画えいが「すずめの戸締とじまり」を連想れんそうするかもしれませんが、①は児童じどう文学ぶんがく名作めいさく終盤しゅうばん劇的げきてき展開てんかいと、子供こどもたちの未来みらいそそ著者ちょしゃのまなざしに、大人おとなもきっとむねさぶられます。②はコロナ直面ちょくめんした中高生ちゅうこうせいたちが、オンライン会議かいぎ駆使くしして茨城いばらき東京とうきょう長崎ながさきからおな星空ほしぞら見上みあげる物語ものがたり。かけがえのないなつ今年ことしごしている若者わかものたち、そしてそれを見守みまも大人おとなたちに。③はちちきらいなパパイヤとははまわされるママイヤ、ふたりの少女しょうじょがSNSで出会であう。すべてのパパとママにおくりたい、せつなくてさわやかななつ物語ものがたりです。

朝日新聞あさひしんぶん書評しょひょう委員いいんの「なつみたい3てん」①はこちら

朝日新聞あさひしんぶん書評しょひょう委員いいんの「なつみたい3てん」②はこちら

朝日新聞あさひしんぶん書評しょひょう委員いいんの「なつみたい3てん」③はこちら

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