前回ぜんかい「『陰陽いんよう師し』のすべて」を出だしてから、もう四よん年ねんが過すぎている。

　その時ときは六ろく十じゅう一いち歳さいであったのだが、この文庫ぶんこ版ばんが出版しゅっぱんされる今年ことし、ぼくは六ろく十じゅう五ご歳さいとなってしまった。

　なんとも時間じかんの過すぎるのは、はやいものだ。

　今回こんかい、文庫ぶんこ化かするにあたって、この四よん年ねん分ぶんやもっと前まえのあれこれが、プラスされることになって、より充実じゅうじつした内容ないようになっているのが、ぼくにとってはありがたい。この頃ころ、多おおくの記憶きおくが曖昧あいまいになってきているので、自分じぶんの書かいた『陰陽いんよう師し』を読よみなおして、アイデアの確認かくにんをしたり、あれこれ資料しりょうを捜さがしたりせねばならない時ときが、しばしばあるのである。

　その資料しりょうとして、この本ほんが手元てもとにあるということが、なんとも便利べんりなのである。

『陰陽いんよう師し』、まだしばらくは書かいてゆけそうなので、もう十じゅう年ねんほどはおつきあいをよろしくお願ねがいします。

　二に〇一いち六ろく年ねん、春はる、桜さくらの頃ころに

―――小田原おだわらにて

（「文庫ぶんこ版ばんあとがき」より）