ヒコロヒー「直感ちょっかん的てき社会しゃかい論ろん」：自制心じせいしんなくやったツケは必かならず巡めぐってくるもの

一いち週間しゅうかん前まえのその日ひ、私わたしは仕事しごとが終おわるのが遅おそく、しかし一杯いっぱい飲のんで帰かえりたく、近所きんじょに住すむ後輩こうはい二に人にんに声こえをかければ彼かれらも来くるというので三さん人にんで集あつまることとなった。
「後輩こうはい」という生いき物ものはとにかく焼肉やきにくが好すきだ。本当ほんとうに好すきなのか、好すきな雰囲気ふんいきを醸かもし出だしておくことによって「自分じぶんみたいな下等かとう者しゃが肉にくになどありつけることは普段ふだんなら不可能ふかのうである」という異常いじょうな悲壮ひそう感かんを漂ただよわせることに成功せいこうし、先輩せんぱいという生いき物ものの同情どうじょう心しんや優越ゆうえつ感かんを煽あおることができることを知しっているのかもしれない。同時どうじに「肉にく切きれひとつで万歳ばんざい三唱さんしょうする若者わかもの」としての健気けなげさも見みせつけることができるためにそれが立派りっぱな愛想あいそとなって空間くうかんを円滑えんかつに回まわしていくことを理解りかいしているのかもしれない。彼かれらが焼肉やきにくを好このむ内訳うちわけの真実しんじつは知しらないが、とにかく彼かれらはいつ何なん時じでも焼肉やきにくに狂喜きょうき乱舞らんぶする仕草しぐさを忘わすれない。

その日ひも私わたしは小ちいさな焼肉やきにく屋やを集合しゅうごう場所ばしょとし、やはり彼かれらは「ウワア、焼肉やきにくゥ」と、誰だれの為ためにもならない言葉ことばを放はなつ。好すきなもんを食くえやと先輩せんぱい風ふうを吹ふかし、私わたしはといえば本来ほんらいの目的もくてきであるビールのみを注文ちゅうもんする。冷ひえたそれだけを飲のみながら肉にくをほおばっていく後輩こうはいたちを前まえにいつもの如ごとくどうでもいい会話かいわを繰くり返かえしていく。

数時間すうじかん後ご、深夜しんや一いち時じを越こえた頃ころ、彼かれらが一いち通とおり肉にくを食たべ終おえた途端とたんに私わたしは腹はらが減へってきていた。深夜しんやの判断はんだん能力のうりょくなど終おわっている。私わたしは私わたしのためだけの肉にくを注文ちゅうもんすることとし、タン塩しおやハラミにカルビ、炒飯ちゃーはんに焼やきそばを後輩こうはい二に人にんの前まえで全すべてを華麗かれいにたいらげた。幸福こうふくな満腹まんぷく感かんに支配しはいされながら帰宅きたくし、そして翌日よくじつ、信しんじられないほどの胃いもたれに襲おそわれた。悲かなしいかな老おいには抗こう（あらが）えず、それから約やく一いち週間しゅうかん、私わたしは豆腐とうふみたいな食たべ物ものばかりを摂取せっしゅするはめになった。

なんと頭あたまが悪わるすぎるのであろうか。自分じぶんの老おいを把握はあくせず自制心じせいしんなくやりたい放題ほうだいやるツケというのは、必かならず巡めぐってくる。何なにもこんな形がたで巡めぐってこなくとも、とは思おもうが、それが人生じんせいなのかもしれない。全すべては焼肉やきにくに大だい喜よろこびし続つづける後輩こうはいたちが悪わるい。あいつらのせいで焼肉やきにくを選えらばされている。私わたしは一刻いっこくも早はやくビーガンの後輩こうはいを見みつけるべきである。