Read 2023.12.20 Read 読よむ 2023.12.20 斉藤さいとう壮たけし馬ばの「ただいま、ゼロ年代ねんだい。」第だい19回かい ハロルド作さく石せき『BECK』 30代だいサブカル声優せいゆう・斉藤さいとう壮たけし馬ばが、10代のころに耽溺たんできしていたカルチャーについて偏愛へんあい的てきに語かたります。 photo: Natsumi Kakuto(banner),Kenta Aminaka / styling: Yuuki Honda(banner) / hair&make: Shizuka Kimoto / text: Soma Saito 連載れんさい一覧いちらんへ ハロルド作さく石せき『BECK』 古今ここん東西とうざい、音楽おんがくを題材だいざいにした作品さくひんは数かずあれど、ぼくにとってバンドものの金字塔きんじとうといえば、やはり『BECK』なのである。 コユキこと、平々凡々へいへいぼんぼんな中学生ちゅうがくせい・田中たなか幸雄ゆきお(たなかゆきお)が、ひょんなきっかけから音楽おんがくに巡めぐり合あい、仲間なかまを集あつめてバンドを結成けっせいし、世界せかいを股またにかけて人々ひとびとの心しんを震ふるわせていく物語ものがたりだ。 初はじめて読よんだのは、ぼく自身じしんも音楽おんがくに目覚めざめ、バンド活動かつどうに勤いそしんでいた中学生ちゅうがくせいのころ。先輩せんぱいへの淡あわい恋心こいごころや、おっかなびっくりライブハウスを初はつ体験たいけんするさまなど、等身とうしん大だいに描えがかれるコユキに共感きょうかんした。 BECKはその後ご、アニメ化かや映画えいが化かもされ、バンドキッズのみならず、多おおくの方ほうの支持しじを集あつめた。いったい何なにがそこまでぼくらを惹ひきつけるのか?答こたえは一ひとつだけではないだろうが、原作げんさくにぼくが感かんじたのは、音楽おんがくを崇高すうこうに描えがきすぎていない、ということだ。 コユキは当初とうしょ、あくまでも普通ふつうの中学生ちゅうがくせいであり、天才てんさい的てきギタリスト・南みなみ竜介りゅうすけ(みなみりゅうすけ)との運命うんめい的てきな出会であいにより、徐々じょじょに音楽おんがくにのめり込こんでいく。その過程かていで、かなりゴージャスで非ひ日常にちじょう的てきな体験たいけんもするのだが、彼かれは一貫いっかんして小しょう市民しみん的てきな感性かんせいを持もったままなのだ(むしろ、小しょう市民しみん的てきであるがゆえに、あっさり調子ちょうしに乗のって痛いたい目めを見みたりすることが多々たたある)。 死しや諍いさかいを乗のり越こえ、それでも音おとを紡つむいでいく彼かれらはもちろん格好かっこういいが、コユキたちはただ一人ひとりの人間にんげんとして音おとに向むき合あっているだけで、何なにかを超越ちょうえつし、悟さとっているわけではない。彼かれらの音楽おんがくがスタート地点ちてんと地続じつづきであるように、この物語ものがたりとぼくもまた、繋つながっているように感かんじたのだ。 そういえば、コユキのメインギターもフェンダー・テレキャスターで、ぼくと一緒いっしょだ。以前いぜんBloc Partyの回かいで、ギタリストのラッセル・リサック氏しの影響えいきょうでテレキャスターを使つかっているのかもと、書かいたように、これまでもいくつかのルーツを語かたってきた。この作品さくひんにも、多大ただいな影響えいきょうを受うけていることは間違まちがいない。 さて、コユキや竜介りゅうすけ以外いがいにも、作中さくちゅうには魅力みりょく的てきなキャラクターがわんさか登場とうじょうする。彼かれらが組くむことになるバンド、BECK/Mongolian Chop Squadだけでも、もう一人ひとりのヴォーカルでありラップも担当たんとうする、喧嘩けんかっ早はやいが情じょうに厚あつい男おとこ・千葉ちば恒美つねみ(ちばつねみ)。常つねに冷静れいせいでバンドの精神せいしん的てき支柱しちゅうでもあるファンキーベーシスト・平たいら義行よしゆき(たいらよしゆき)。コユキの同級生どうきゅうせいで、いつも笑顔えがおを絶たやさず優やさしく寄より添そってくれるドラマー・桜井さくらい裕志ひろし(さくらいゆうじ)。それぞれ個性こせい的てきな面々めんめんが、物語ものがたりに大おおきなうねりを加くわえていく。 ちなみにぼくは当時とうじ、ベースの平ひらたくんがめちゃくちゃ好すきだった。ギターの竜介りゅうすけも非常ひじょうにモテるキャラクターで格好かっこうよいのだが、平たいらくんの大人おとなな色気いろけがたまらなく魅力みりょく的てきだったのだ。しかし、彼かれは初はつ登場とうじょう時じ18歳さい。めちゃくちゃ若わかい。32歳さいの今いまでも、あの落おち着つきは醸かもし出だせそうもない。 漫画まんが『BECK』は、音おとのない世界せかいで音楽おんがくを描えがいている。それがぼくはいっとう好すきだ。今いまでも目めを閉とじると、聴きこえるはずのない歌うたが、聴きこえてくる気きがする。コユキの透明とうめいな歌うたが。BECKの奏かなでる唯一ゆいいつ無二むにの音楽おんがくが。 そんな空想くうそうに耽ふけりながら、今日きょうもぼくはギターを弾ひいている。 連載れんさい一覧いちらんへ 関連かんれん記事きじ 前まえの記事きじへ 斉藤さいとう壮たけし馬ばの「ただいま、ゼロ年代ねんだい。」第だい18回かい 町田まちだ康やすし『告白こくはく』 Read 2023.11.20 #小説しょうせつ #斉藤さいとう壮たけし馬ば #斉藤さいとう壮たけし馬ばの「ただいま、ゼロ年代ねんだい。」 #漫画まんが #音楽おんがく Videos 動画どうが 【猫ねこになりたい。】猫ねこのもぐたんが動画どうがを撮とったよ。八ヶ岳やつがたけに暮くらす猫ねこの1日にち。 【10/1発売はつばい】猫ねこになりたい。 Videos 動画どうが 【猫ねこになりたい。】猫ねこのもぐたんが動画どうがを撮とったよ。八ヶ岳やつがたけに暮くらす猫ねこの1日にち。 【10/1発売はつばい】猫ねこになりたい。