清水しみず崇たかし、寺内てらうち康太郎やすたろうら映像えいぞう製作せいさく者しゃが告白こくはくする、本当ほんとうに怖こわい映画えいが

当あたり前まえのはずの愛情あいじょうが失うしなわれた世界せかいが怖こわい

『鬼畜きちく』

監督かんとく：野村のむら芳太郎よしたろう／日にち／1978年ねん
松本まつもと清張せいちょう原作げんさく。印刷いんさつ業ぎょうを営いとなむ宗吉そうきちは愛人あいじんとの間あいだに3人にんの隠かくし子ごを持もっていたが、ある日ひ愛人あいじんが子供こどもを押おし付つけて蒸発じょうはつする。

小学生しょうがくせいの頃ころにたまたまテレビで観みた映画えいが。当時とうじの自分じぶんは作中さくちゅうの子供こどもと同どう世代せだい、寂さびしくなると「ガッチャマンの歌うた」を歌うたうのもリアルで、完全かんぜんにその視点してんで観みました。子供こどもたちを憎にくむ大人おとな、居場所いばしょのない家いえ、いなくなる弟おとうとや妹いもうと……すべてが怖こわい。当あたり前まえと思おもっていた愛情あいじょうが失うしなわれ、崩くずれていく日常にちじょうと心しん、そのメロディがトラウマになりました。（清水しみず崇たかし）

バケモノたちの形状けいじょうの定さだまらなさが怖こわい

『遊星ゆうせいからの物体ぶったいX』

監督かんとく：ジョン・カーペンター／米べい／1982年ねん
ある日ひ、南極なんきょく観測かんそく基地きちに一いち匹ひきの犬いぬが現あらわれる。その正体しょうたいは、10万まん年ねん前まえに宇宙うちゅうから飛来ひらいした特殊とくしゅ能力のうりょくを持もつ生命せいめい体たいだった。

この映画えいがにはゴアで美うつくしいバケモノたちが、極きわめて物理ぶつり的てきな存在そんざいとして登場とうじょうする。それらはある生物せいぶつへの擬態ぎたい途中とちゅうであったり、複数ふくすうの生物せいぶつの混こん合体がったいであったりして、不定ふてい形がたで、真しんの姿すがたを見みることはできない。極きわめて物理ぶつり的てきで、同時どうじに霊的れいてきと言いえるほど曖昧あいまいな存在そんざいだ。本質ほんしつが見みえないものは怖こわいが、その存在そんざいは物理ぶつり的てきに見みせつけられる。（白石しらいし晃あきら士し）

一般いっぱん社会しゃかいとは分断ぶんだんされた登場とうじょう人物じんぶつたちの愛あいや正義せいぎ感かんが怖こわい

『籠かごの中なかの乙女おとめ』

監督かんとく：ヨルゴス・ランティモス／ギリシャ／2009年ねん
子供こどもを社会しゃかいから隔絶かくぜつさせて育そだてる夫婦ふうふ。年頃としごろの長男ちょうなんのためにある女性じょせいを連つれてきたことを機きに秩序ちつじょが乱みだれる。

作品さくひんを鑑賞かんしょうする醍醐味だいごみは“カルチャーショック”だと思おもう。日常にちじょうに潜ひそむ異い文化ぶんか体験たいけんに興味きょうみをそそられ、知識ちしきを得えて、感嘆かんたんし感動かんどうする。本ほん作さくは最初さいしょから最後さいごまで、その連続れんぞくだけで構成こうせいされている。そうなると話はなしは変かわってくる。しかも登場とうじょう人物じんぶつ全員ぜんいんがつつましく一生懸命いっしょうけんめいに生いきている。これが一番いちばん怖こわいこと。なぜなら、誰だれもが“いつそうなっても”おかしくないからだ。（寺内てらうち康太郎やすたろう）

監督かんとくの的確てきかくな演出えんしゅつがもたらす映像えいぞうのリアルさが怖こわい

『エクソシスト3』

監督かんとく：ウィリアム・ピーター・ブラッティ／米べい／1990年ねん
ある日ひ発見はっけんされた少年しょうねんの異様いような死体したい。警部けいぶはその状態じょうたいが15年ねん前まえの連続れんぞく殺人さつじん事件じけんと酷似こくじしていると気きづく。

原作げんさく者しゃウィリアム・ピーター・ブラッティ自身じしんが監督かんとくした『エクソシスト3』には、リアルな恐怖きょうふが横溢おういつしている。当時とうじ最先端さいせんたんのVFXを駆使くしした1作さく目めに比くらべると地味じみな印象いんしょうだが、実際じっさいの悪魔あくま憑（つ）き事件じけんを取材しゅざいした経験けいけんがブラッティの演出えんしゅつに生いかされている。監督かんとくが心底しんそこ怖こわいと感かんじることを的確てきかくに演出えんしゅつに生いかした作品さくひんが、やはり一番いちばん怖こわい。（鶴田つるた法男のりお）