サマリー:DXを推進していくためには、組織開発や人材育成が大きなカギとなる。顧客体験のデジタル変革とEC事業で快進撃するパルグループは、社員の自主性とモチベーションを重視しながら、着実な変化を遂げている。
「カスタネ」「チャオパニック」などのブランドで知られる衣料事業や「スリーコインズ」を主力とする雑貨事業が、消費者から支持されているパルグループ。直近の連結決算では売上高と利益が過去最高を更新したが、その推進力となっているのがeコマース(EC)事業だ。EC事業と顧客体験(CX)のデジタル変革を統括するパル取締役専務執行役員の堀田覚氏と、プレイド執行役員の阪茉紘氏、同社でアパレル業界を担当する中野康平氏が、DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進チームの組織開発、人材育成のあり方について話し合った。
低迷していたECにドライブをかけた目標設定
阪 パルグループは、ECの売上高が衣料事業全体の約4割に達し、PALアプリ会員数も1000万人に迫るなど、顧客体験のデジタル変革とオムニチャネル化がグループの成長を牽引するエンジンになっています。堀田さんは2014年にパルに入社され、2016年からECやデジタル変革の推進を担当されていますが、当時はどのような状況でしたか。
堀田 アパレル業界のECについてはZOZOTOWNが圧倒的な存在感を持っていて、自社ECで大きな売上げを上げているブランドは数えるほどでした。当社もECの売上比率は全体の5%ほどで、それもZOZOTOWN頼りの状況でした。
僕のミッションは、まずECの売上げを倍増させることでした。しかし、当時は社内にノウハウが蓄積されておらず、人材も育っていませんでした。何より、「うちの商品はECでは売れないんじゃないか」というムードが社内に蔓延していました。
その空気を変えるのが1丁目1番地の仕事だと思ったので、小さくてもいいから成功体験をつくろうと、ZOZOTOWNでどうやったら売れるかを徹底的に研究しました。その結果、2年で売上倍増を達成することができて、この変化をきっかけに「ECでも売れる」という手応えをみんなが感じるようになりました。
阪 スモールサクセスを重ねて、素早くスケール(拡大)させていくのは、事業開発やデジタル変革の鉄則の一つですね。その中でも、ここが1丁目1番地だ、と絞り切るのは難しいことでもあるかと思います。当時はどのような思いからその決断に至ったのですか。
堀田 僕らはリソース(経営資源)が限られていたので、シンプルな目標を立てて力を結集すべきだと考えました。その一つがZOZOTOWNの売上拡大でした。チームの空気が大きく変わったことで手応えを感じました。ECならではの成果も生み出したいと思って立てたもう一つの目標があります。それがECでの予約販売です。