シャープ子会社の粉飾決算は「二度目の崩壊」の序曲か、V字回復も今は昔
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シャープ子会社で、スマートフォン向けカメラを開発するカンタツで発覚した75億円の粉飾決算。シャープは台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入った2016年以降、「信賞必罰」の厳しい評価制度によってV字回復を果たしたとされていた。しかし、子会社の経営陣はその制度をプレッシャーに感じ、不正に走ったという。シャープから送り込まれた子会社社長はなぜ不正会計に手を染め、発覚が遅れたのか。シャープのガバナンス体制に疑問符が突き付けられている。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
経営危機からのV字回復に暗い影
シャープ子会社で発覚した循環取引
かつて液晶パネル事業への過剰投資が響き、経営危機に陥ったシャープ。2016年8月に台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入ってから数年は、徹底したコスト管理や「信賞必罰」の厳しい評価制度によってV字回復を遂げたとみられていた。
だが20年3月期はコロナ禍の影響もあって減収減益となり、足元の業績も18~19年頃の勢いは失われている。そればかりか、スマートフォン向けカメラを開発する子会社カンタツが循環取引などに手を染め、売上高を水増ししていたことが昨年末に発覚。復活ぶりに暗い影を落としている。
「株主や関係者に深くおわびする。さらなるガバナンス強化に努める」――。
シャープの野村勝明社長は3月12日、調査委員会が粉飾決算の詳細を調べていた影響で、約1カ月遅れで開いた決算会見で頭を下げた。
加えて会見では、09年に約4300億円を投じて設立したテレビ向け液晶ディスプレーメーカーで、現在は関連会社である「堺ディスプレイプロダクト」の売却交渉が破談に終わったことも発表され、野村社長の声にはどこか力がなかった。
カンタツは米アップルなどと取引がある部品メーカーだ。調査委が12日に発表した報告書によると、不正を行っていた期間は18~20年。水増しされた売上高は累計約75億円で、シャープは過年度決算の修正を余儀なくされた。
問題の発端は、シャープがカメラモジュール事業の強化に向けて、カンタツを18年3月に連結子会社化したことにさかのぼる。
子会社化に伴い、シャープのカメラモジュール事業部で本部長を務めていた本道昇宏氏が18年6月にカンタツに転籍し、10月に社長に就いた。そして報告書によれば、カンタツの業績をよく見せるために本道氏が循環取引などを主導したという(本道氏はすでに退任済み)。
本道氏を始め、カンタツには総勢11人がシャープから出向していた(20年3月時点)。このうち複数人が不正に関与したという。
親会社の人間が大挙して押し寄せたことが、子会社経営の透明性を失わせたことは想像に難くない。その背景で何があったのか。