「あなたの職場しょくばでは、会話かいわや雑談ざつだんが気軽きがるに行おこなわれていますか？」
そう語かたるのは、これまでに400以上いじょうの企業きぎょうや自治体じちたい等とうで、働はたらき方かた改革かいかく、組織そしき変革へんかくの支援しえんをしてきた沢渡さわわたりあまねさん。その活動かつどうのなかで、「人ひとが辞やめていく職場しょくば」には共通きょうつうする時代遅じだいおくれな文化ぶんかや慣習かんしゅうがあり、それらを見直みなおしていくことで組織そしき全体ぜんたいの体質たいしつを変かえる必要ひつようがあると気きづきました。
その方法ほうほうをまとめたのが、書籍しょせき『組織そしきの体質たいしつを現場げんばから変かえる100の方法ほうほう』です。社員しゃいん、取引とりひき先さき、お客様きゃくさま、あらゆる人ひとを遠とおざける「時代遅じだいおくれな文化ぶんか」を変かえるためにできる、抽象ちゅうしょう論ろんではない「具体ぐたい策さくが満載まんさい」だと話題わだい。この記事きじでは、本書ほんしょより一部いちぶを抜粋ばっすい・編集へんしゅうし、「雑談ざつだんする文化ぶんかのない職場しょくば」の問題もんだい点てんについて指摘してきします。

人が辞めていく「時代遅れな組織」が職場で「禁止していること」・ワースト1会話かいわや雑談ざつだんが気軽きがるに行おこなわれているか？（イラスト：ナカオテッペイ）

静粛せいしゅく重視じゅうしの組織そしき、ワイガヤ重視じゅうしの組織そしき

　あなたの職場しょくばは、以下いかのいずれの状態じょうたいに近ちかいだろうか？

　つねにシーンとしていて、雑談ざつだんはおろか、ちょっとした会話かいわさえも遠慮えんりょしなければいけない雰囲気ふんいき。それどころか、パソコンのキータッチの音おとなども大おおきくなりすぎていないか気きにしてしまう。

　一方いっぽうで、オフィスは比較的ひかくてきにぎやかで雑談ざつだんも会話かいわも歓迎かんげい。マネージャーとメンバー、メンバー同士どうし、相手あいてを問とわず自然しぜんとその場ばで会話かいわが始はじまり、そして終おわる。

　いずれも合理ごうり性せいがある。
　オフィスは作業さぎょうに集中しゅうちゅうする場所ばしょであるため、静粛せいしゅくであるべきだ。設備せつびの維持いじ管理かんりを担になう職種しょくしゅにおいては、異常いじょうを知しらせる警告けいこく音おんや、装置そうちの異い音おとに敏感びんかんになるために静粛せいしゅく性せいを重おもんじる職場しょくばもある。

　反面はんめん、静粛せいしゅく重視じゅうしの場合ばあいは、雑談ざつだんや相談そうだんが起おこりにくい、仲間なかま同士どうしの自己じこ開示かいじや相互そうご理解りかいが行おこなわれにくい、個人こじん主義しゅぎ的てきな体質たいしつが醸成じょうせいされやすいなどのデメリットも伴ともなう。説教せっきょうの声こえだけが響ひびき渡わたるなど、職場しょくばの雰囲気ふんいきが悪わるくなることもある。

　対たいして、にぎやかな職場しょくばでは雑談ざつだんや相談そうだんによる相互そうご理解りかいやちょっとしたアイデア出だし、協力きょうりょくも生うまれやすい。一方いっぽうで、他人たにんの会話かいわや突然とつぜんの声こえがけが気きになって作業さぎょうに集中しゅうちゅうしにくいなどのネガティブな面めんもある。

職場しょくばのノリは組織そしきによって異ことなる

　筆者ひっしゃは転職てんしょく前後ぜんこうの組織そしきで、真ま逆ぎゃくの文化ぶんかに面食めんくらったことがある。

　転職てんしょく前まえの職場しょくばはオープンなスタイル。座席ざせきもフリーアドレスで、どこに座すわって仕事しごとをしてもよい。近ちかくの人ひととの雑談ざつだんや対話たいわも自然しぜんに行おこなわれていた。
　一方いっぽう、転職てんしょく後ごの職場しょくば（企業きぎょう名めいは、筆者ひっしゃプロフィール上じょう、非公開ひこうかい）は固定こてい席せき。あるとき、近ちかくの席せきの同僚どうりょうと仕事しごとに関かんする内容ないようで意見いけんを交かわしていたところ、直属ちょくぞくの上長じょうちょうから呼よび出だされてこう言いわれた。

「他たチームの管理かんり職しょくから、あなたたちの会話かいわの声こえが気きになって作業さぎょうに集中しゅうちゅうできないから控ひかえてくれとクレームが入はいった」

　しまった。前まえの職場しょくばと同おなじノリで会話かいわしてしまったのがいけなかった。オフィスのあり方かたに対たいする認識にんしきが前まえ職しょくとは異ことなっていたのだ。同おなじ会社かいしゃでも部署ぶしょによって、オフィスのあり方かたに対たいする認識にんしきのギャップ、行動こうどうのギャップはある。どちらが良よい悪わるいではなく、まずはその違ちがいを認識にんしきしよう。

適度てきどな雑談ざつだんや会話かいわが組織そしきを共きょう創そう体質たいしつに変かえる

　とはいえ、筆者ひっしゃは適度てきどな雑談ざつだんや会話かいわは組織そしきに不可欠ふかけつと考かんがえる。

　コミュニケーションや人間にんげん関係かんけいを円滑えんかつにするのはもちろん、「一人ひとりで悩なやみを抱かかえることが減へる」「より良よいアイデアが生うまれる」「意外いがいな着眼ちゃくがん点てんや解決かいけつ策さくが見みつかる」など、雑談ざつだんや会話かいわには組織そしきやチームで仕事しごとをするゆえのメリットがたくさんある。他者たしゃに興味きょうみ・関心かんしんを持もつようになり、そこから組織そしきが共きょう創そうできる体質たいしつに変かわっていく（共きょう創そうの対義語たいぎごの一ひとつは、無む関心かんしん）。

「その手ての雑談ざつだんは業務ぎょうむ時間じかん外がいでやれ」

　という意見いけんもわからなくはないが、わざわざ業務ぎょうむ時間じかん外がいに場ばを設もうけるのも気きが引ひける人ひともいる。アフターファイブの飲のみニケーションに参加さんかしにくい人ひともいる。テレワークをしているなど、その場ばにいない人ひともいる。業務ぎょうむ時間じかん外がいに寄よせてしまうと、「そこまでするほどではない」ちょっとした相談そうだんごとや気きづきも共有きょうゆうされにくくなる。手軽てがるさ、気軽きがるさもコミュニケーション活性かっせいの重要じゅうような要素ようそなのだ。