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爆音の始まり : 私を爆音に連れてって - 映画.com

コラム:わたし爆音ばくおんれてって - だい1かい

2010ねん3がつ19にち更新こうしん

私を爆音に連れてって

音楽おんがくライブよう音響おんきょう装置そうち使つかい、だい音量おんりょう映画えいがるド迫力はくりょくかつ新鮮しんせん映画えいが体験たいけん話題わだいんでいる「爆音ばくおん映画えいがさい」。どう映画えいがさいのディレクターをつとめる映画えいが評論ひょうろん樋口ひぐちやすしじんは、なぜ爆音ばくおん映画えいがせられたのか? 樋口ひぐち自身じしん印象いんしょうのこった上映じょうえい作品さくひんかえりながら、爆音ばくおん映画えいが魅力みりょくせまります。(ぜん3かい

だい1かい爆音ばくおんはじまり

バウスシアターの 巨大“爆音”スピーカー
バウスシアターの きょだい爆音ばくおん”スピーカー

映画えいが爆音ばくおんたいとおもったのはいつのことだったか。具体ぐたいてきなきっかけはいくつかあったとおもうのだが、それよりもとにかく身体しんたいおと全身ぜんしんびることをほっしていた。みみではなく身体しんたい全体ぜんたいおとをうけとめたい。そんなおもいをおさえきれなくなった。

ならば映画えいがではなくライブにけばいいじゃないかとおもわれるかもしれない。だがちがうのである。映画えいがかんうごかぬ座席ざせきにじっとすわったまま見開みひらきスクリーンをつめながらおとびる。そのうごかぬ身体しんたい見開みひらかれたまぶたをおと直撃ちょくげきしそしてつつむとき、なにかがわる。スクリーンと座席ざせきとのあいだひろがる空間くうかん変容へんようし、わたし一気いっきにその未知みちなる世界せかいへときずりまれる。そのエネルギーによってさらあらたな人生じんせいあゆはじめられるのではないか。身体しんたいうごかぬままなのに、一方いっぽうでそれは映画えいがとも宇宙うちゅうてまでんでいく、そんな電撃でんげきてき一瞬いっしゅんることとくことの奇跡きせきてき出会であしにはありないはずだ。

そんな妄想もうそうひろがっていたのかどうかいまとなってはさだかではないのだが、とにかく映画えいがることとくことを一気いっきむすびつける装置そうちのようなものを、当時とうじわたし夢想むそうしていたのだとおもう。吉祥寺きちじょうじのバウスシアターならかつてライブもやっていたしなにとかならないか。たったそれだけの理由りゆうでバウスシアターにライヴよう音響おんきょうシステムを使つかっての上映じょうえい相談そうだんしたのだった。当然とうぜん快諾かいだく。バウスもまた、劇場げきじょう保有ほゆうする巨大きょだいスピーカーを使つかっての音楽おんがく映画えいが上映じょうえい独自どくじ企画きかくしていたのである。そしてさらなるおとを、より身体しんたいてきおとをと、わたしもバウスのスタッフも俄然がぜんがっていった。通常つうじょう上映じょうえいとはまったくちが爆音ばくおん仕様しよう機材きざいセッティングもほどこされることになった。

樋口氏が一番驚いたという スコセッシ監督の「クンドゥン」
樋口ひぐち一番いちばんおどろいたという スコセッシ監督かんとくの「クンドゥン」

ではそのスペシャルなセッティングでなに上映じょうえいするのか? 爆音ばくおんなら当然とうぜんニール・ヤングでしょう、ということでまずはジム・ジャームッシュニール・ヤングのツアーをいかけたドキュメンタリー「イヤー・オブ・ザ・ホース」と、ヤングが音楽おんがく担当たんとうしたジャームッシュの「デッドマン」の上映じょうえいめたのだった。それだけではちょっとさびしいので、ためしにパンクロック映画えいがストレート・トゥ・ヘル」とチベットそうたちのおけいになった「クンドゥン」も上映じょうえいしてみることにした。04ねん5がつ1にちのことである。

オールナイトでのあさまで爆音ばくおん。いやあ、すごかった。なかでも一番いちばんおどろいたのは「クンドゥン」だった。フィリップ・グラス音楽おんがくがおけい低音ていおんからって、ているわたしはらそこから脳天のうてんへとけていく。同時どうじに、マーティン・スコセッシ監督かんとく特有とくゆう神経症しんけいしょうてきいそがしすぎるカッティングとカメラのうごきとがダイレクトにのうへと侵入しんにゅうしぐるぐるまわる。まさに、チベットそうたちがつく曼荼羅まんだら世界せかいへまっしぐら、ばくおんによってべつ視覚しかく覚醒かくせいしたのである。映画えいがなかかくされたおと作者さくしゃさえもづかなかったおと浮上ふじょうによって、あらゆるものの配置はいちがすっかりわることを、爆音ばくおんなかわたし実感じっかんした。以降いこう音楽おんがく映画えいがではない普通ふつう劇映画げきえいが激変げきへんとこちらの身体しんたい覚醒かくせいもとめての爆音ばくおん探求たんきゅうはじまることになった。

>>「だいさんかい爆音ばくおん映画えいがさい」(5がつ28にち〜6月12にち東京とうきょう吉祥寺きちじょうじバウスシアター)ホームページはこちら

筆者ひっしゃ紹介しょうかい

樋口泰人のコラム

樋口ひぐちやすしじん(ひぐち・やすひと)。映画えいが評論ひょうろん爆音ばくおん映画えいがさいディレクター。ビデオ、単行本たんこうぼん、CDなどを製作せいさく発売はつばいするレーベル「boid」を98ねん設立せつりつ著書ちょしょに「映画えいがとロックンロールにおいてアメリカと合衆国がっしゅうこくはいかにたたかったか」 「映画えいが爆音ばくおんでささやく 99-09」 、編著へんちょに「ロスト・イン・アメリカ」など。

Twitter:@boid_bakuon/Instagram:@vogboidbakuon/Website:https://www.boid-s.com/

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