コラム：細野ほその真宏まさひろの試写ししゃ室しつ日記にっき - 第だい39回かい

映画えいがはコケた、大だいヒット、など、経済けいざい的てきな視点してんからも面白おもしろいコンテンツが少すくなくない。そこで「映画えいがの経済けいざい的てきな意味いみを考かんがえるコラム」を書かく。それがこの日記にっきの核かくです。

また、クリエイター目線めせんで「さすがだな～」と感心かんしんする映画えいがも、毎日まいにち見みていれば1～2週間しゅうかんに1本ほんくらいは見みつかる。本音ほんねで薦すすめたい作品さくひんがあれば随時ずいじ紹介しょうかいします。

更新こうしんがないときは、別べつ分野ぶんやの仕事しごとで忙いそがしいときなのか、あるいは……？（笑）

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第だい39回かい　「人間にんげん失格しっかく　太宰だざい治おさむと3人にんの女おんなたち」。映画えいがにおける蜷川にながわ実花みか監督かんとく作さくのポテンシャルは？

2019年ねん7月がつ17日にち＠アスミック試写ししゃ室しつ　配給はいきゅうは、松竹しょうちくとアスミック・エース

好調こうちょうだった夏休なつやすみ映画えいがとバトンタッチをする形かたちで、そろそろ秋あき映画えいがが勢いきおいを増ましていきそうです。

まずは、今週こんしゅう末まつの9月がつ13日にち(金)きん公開こうかいの蜷川にながわ実花みか監督かんとく作さくの「人間にんげん失格しっかく　太宰だざい治おさむと3人にんの女おんなたち」と三谷幸喜みたにこうき監督かんとく作さくの「記憶きおくにございません！」に注目ちゅうもくしたいと思おもいます。

今回こんかいは、蜷川にながわ実花みか監督かんとく作さく「人間にんげん失格しっかく　太宰だざい治おさむと3人にんの女おんなたち」について。

まず、蜷川にながわ実花みか監督かんとくは、2007年ねんに「さくらん」で映画えいが業界ぎょうかいに新風しんぷうを起おこし、色彩しきさい豊ゆたかで強烈きょうれつな映像えいぞうで印象いんしょうを残のこし150スクリーンで興行こうぎょう収入しゅうにゅう7.3億おく円えんを記録きろくしました。

続つづく2012年ねんの第だい2作さく目め「ヘルタースケルター」では、中規模ちゅうきぼな204スクリーンでR15+指定していながら興行こうぎょう収入しゅうにゅう21.5億おく円えんを記録きろくしました！

これは文字通もじどおり「大だいヒット」と言いって良よく、まだ実績じっせきが少すくなかった分ぶん、製作せいさく費ひも標準ひょうじゅん並なみだったので興行こうぎょう収入しゅうにゅう10億おく円えん突破とっぱの時点じてんで、既すでに利益りえきは出でていたはずです。

ただ、その後ごの蜷川にながわ実花みか監督かんとくは、本業ほんぎょうの写真しゃしんなどで活躍かつやくしていて、今年ことしまで映画えいがの公開こうかいは無なかったのですが、第だい2作さく目めの「ヘルタースケルター」の大だいヒットのおかげで“ヒットが見込みこめる監督かんとく”というイメージが映画えいが業界ぎょうかいに出来できました。

その分ぶん、プレミア感かんや大だい規模きぼ公開こうかいも見込みこめて、一般いっぱん的てきに製作せいさく費ひは上あがる方向ほうこうになると思おもわれます。

そんな中なか、まず第だい3弾だんの今年ことしの7月がつ5日にちに公開こうかいされた「Diner ダイナー」では、初はつのアクションにも挑戦ちょうせんし興行こうぎょう収入しゅうにゅう12億おく円えんを突破とっぱしましたが、製作せいさく費ひが上あがっているとしたら少すこし期待きたい外はずれの面めんもあったかもしれません。

私わたしは「Diner ダイナー」については脚本きゃくほんに、やや難なんがあったと思おもっていたため、無難ぶなんな結果けっかだと思おもっていますが。

(C)2019 映画えいが「Diner ダイナー」製作せいさく委員いいん会かい

さて、そのような背景はいけいがある中なかで、いよいよ蜷川にながわ実花みか監督かんとくの映画えいが業界ぎょうかいにおける真価しんかが試ためされる作品さくひん「人間にんげん失格しっかく　太宰だざい治おさむと3人にんの女おんなたち」が公開こうかいされます！

これまで太宰だざい治おさむや「人間にんげん失格しっかく」を描えがいてきた映画えいがは世よの中なかに多数たすうありましたが、私わたしは、それらの中なかで本ほん作さくが一番いちばん好すきです。

まず、脚本きゃくほんは賞しょうレースでも話題わだいになった「紙かみの月つき」の早船はやふね歌江うたえ子こが担当たんとうし、「太宰だざい治おさむと“3人にんの女性じょせい”との関係かんけい」における実話じつわを基もとに、フィクションも織おり交まぜ描えがいています。

そして、その3人にんの女性じょせい陣じんは、宮沢みやざわりえ、沢尻さわじりエリカ、二階堂にかいどうふみといった演技えんぎ派はが固かためていて、男性だんせい陣じんも太宰だざい治おさむを演えんじた小栗おぐり旬しゅんを筆頭ひっとうに、藤原ふじわら竜也たつや、成田なりた凌りょう、千葉ちば雄大たけひろ、瀬戸せと康史やすし、高良こうら健吾けんごといった豪華ごうかな布陣ふじんで固かためられています。このような点てんからも、蜷川にながわ実花みか監督かんとくの「私わたしの作品さくひんには美うつくしいものしか登場とうじょうしてほしくない」といった声こえが聞きこえてきそうですし、本業ほんぎょうが写真しゃしん家かでもあるため実際じっさいに全員ぜんいんが、より魅力みりょく的てきに映うつし出だされています！

これまでの太宰だざい治おさむや「人間にんげん失格しっかく」を描えがいてきた映画えいがでは、私わたしには何なにかピンとくるものがありませんでした。そのため、本ほん作さくのように実在じつざいの「最後さいごの3人にんの女おんなたち」に絡からませて展開てんかいする構成こうせいは何なんとも現代げんだいっぽく蜷川にながわ実花みか監督かんとくらしい着眼ちゃくがん点てんで、いろんな意味いみで分わかりやすくて良よかったです。

私わたしは、太宰だざい治おさむという文豪ぶんごうは、どうして自殺じさつばかりを繰くり返かえしていたのか、なぜ自殺じさつで死しなずにいられたのか、イマイチ分わかっていませんでしたが、ようやく本ほん作さくで理解りかいできたように思おもいます。

そして太宰だざい治おさむが死しの直前ちょくぜんに完成かんせいさせた「人間にんげん失格しっかく」の背景はいけいなどもようやく理解りかいできました。

そもそも太宰だざい治おさむは、1909年ねんに青森あおもり県けん北津軽きたつがる郡ぐんに生うまれ、戦後せんごの1948年ねんに39歳さいで「人間にんげん失格しっかく」を書かき上あげ、亡なくなっています。

本ほん作さくは「時代じだい劇映画げきえいが」でもよく論争ろんそうになる点てんで、方言ほうげんや当時とうじの言葉ことばはできるだけ避さけ現代げんだい風ふうにしていますが、私わたしはそのほうが見みやすくていいと思おもっています。

映像えいぞうにおいても蜷川にながわ実花みか監督かんとくの得意とくいとする赤あかと青あおを基調きちょうとした色彩しきさい豊ゆたかな映像えいぞうに加くわえ、花はなもふんだんに使つかっていて、どこから見みても「蜷川にながわ実花みか作品さくひん」となっています。

私わたしは、本ほん作さくでようやく蜷川にながわ実花みか監督かんとく作さくの完成かんせい形がたを見みた気きがしていて、これまでで一番いちばん出来できが良よいと思おもっている作品さくひんです。

(C)2019「人間にんげん失格しっかく」製作せいさく委員いいん会かい

さて、肝心かんじんの興行こうぎょう収入しゅうにゅうですが、おそらく10億おく円えんを突破とっぱできるとは思おもいますが、果はたして「ヘルタースケルター」のように20億おく円えんに迫せまれるかどうかは、まだ未知数みちすうでしょうか。

というのは、「ヘルタースケルター」の時ときは、かなりイレギュラーな状況じょうきょうがあったことを忘わすれてはいけません。

まさに「ヘルタースケルター」が公開こうかいされる2か月げつくらい前まえから毎週まいしゅうのごとく、今いまでいう「文春ぶんしゅん砲ほう」によって、それこそ映画えいがが公開こうかい延期えんきになるんじゃないか、という騒動そうどうがあったのです。

結果けっかは、無事ぶじに予定よてい通どおりに公開こうかいされて、映画えいが会社かいしゃと週刊文春しゅうかんぶんしゅんが裏うらで手てを結むすんでいたんじゃないか、といった「やらせ疑惑ぎわく」さえも出でるようになりましたが実じつは、これは「100％ガチンコ」でした。

週刊文春しゅうかんぶんしゅんで一連いちれんの記事きじの陣頭じんとう指揮しきを執とっていたのは私わたしの担当たんとう者しゃでしたし、私わたしは映画えいが会社かいしゃのトップとも仲なかが良よかったため、非常ひじょうに居いた堪たまれないような気持きもちだったのでした…。

ただ、この騒動そうどうがあって映画えいが公開こうかい時じは、「これは映画えいがではなく事件じけんだ！」といったキャッチコピーも舞まい、一種いっしゅの社会しゃかい現象げんしょう化かした結果けっかでもあったのです。

いま思おもうと、これほど効果こうか的てきな宣伝せんでんは無なかったと言いえますが、本ほん作さくではそのようなことがなく、作品さくひん本体ほんたいの評価ひょうかがそのまま観客かんきゃく動員どういんにつながります。

この「人間にんげん失格しっかく　太宰だざい治おさむと3人にんの女おんなたち」で、今後こんごの映画えいが業界ぎょうかいにおける蜷川にながわ実花みか監督かんとく作さくの行方ゆくえが決きまってくるように思おもわれます。

作品さくひんの完成かんせい度どと題材だいざい、キャストの豪華ごうかさでも負まけてはいませんが、果はたして「ヘルタースケルター」と比くらべて結果けっかがどうなるか注目ちゅうもくです！