コラム：編集へんしゅう長ちょうコラム　映画えいがって何なにだ？ - 第だい50回かい

2022年ねん12月27日にち更新こうしん

2022年ねんを振ふり返かえり、個人こじん的てきな「今年ことしの10本ほん」をご紹介しょうかい

2022年ねんも残のこり数日すうじつ。今年ことしも海外かいがいの映画えいが祭さいには一いち度ども参加さんかできていないので、鑑賞かんしょうできた映画えいがの本数ほんすうは少すくないという状況じょうきょうに変化へんかはありません。そんな中なかで、あくまで個人こじん的てきに、今年ことし見みて心しんに残のこった10本ほんをご紹介しょうかいしたいと思おもいます。

●「トップガン　マーヴェリック」

映画えいが界かいの1年ねんを振ふり返かえってみてひと言ことで言いえば、2022年ねんは「トップガン」の年としでした。配信はいしんプラットフォームに売却ばいきゃくする選択肢せんたくしを断固だんこ拒こばんで、劇場げきじょう公開こうかいにこだわったトム・クルーズには拍手はくしゅ喝采かっさいしかありません。映画えいがの内容ないようも想像そうぞうの遙はるか上じょうをいくクオリティーで、観客かんきゃくのリピート率りつも相当そうとう高たかかったと思おもいます。私わたしの知人ちじんで「映画えいが館かんで6回かい見みた」って人ひとがいましたもんね。あとは、来年らいねんオスカーをいくつか取とって仕上しあげとしたい案件あんけんですね。

●「RRR」

「バーフバリ」2部ぶ作さくを見みたときから、S・S・ラージャマウリ監督かんとくの新作しんさくは必かならず見みるって誓ちかいました。それから5年ねん近ちかく経たって、今年ことし、遂ついに新作しんさくが公開こうかいされました。インド独立どくりつを目指めざし、熱あつきインド男子だんしたちが宗主そうしゅ国こく英国えいこくの支配しはい者しゃ階級かいきゅうと渡わたり合あいます。いやあシビれました。手てに汗あせ握にぎりました。踊おどりたくなりました。いつか、ラージャマウリ監督かんとくの新作しんさく映画えいがを、インドの映画えいが館かんで鑑賞かんしょうしたいと思おもっています。

●「モガディシュ　脱出だっしゅつまでの14日間にちかん」

これ、韓国かんこく映画えいがなんですが、ソマリアのモガディシオ（モガディシュ）が舞台ぶたいだって設定せってい聞きいただけで相当そうとう期待きたい値ちが上あがりました。で、実際じっさいに本編ほんぺん見みたら「何なにこれ超絶ちょうぜつ面白おもしろいじゃん！」って。南みなみと北きたの問題もんだいを描えがいた韓国かんこく映画えいがは名作めいさく揃ぞろいですが、アフリカの辺境へんきょうみたいなエリアでも南北なんぼくメソッドは成立せいりつするんですね。古ふるいメルセデスをギュンギュン走はしらせるカーアクションは、目めからウロコの面白おもしろさでした。

「モガディシュ脱出までの14日間」 — 「モガディシュ　脱出だっしゅつまでの14日間にちかん」

●「アバター　ウェイ・オブ・ウォーター」

13年ねんぶりなんですねえ。「アバター」の1作さく目めは、まさに映像えいぞうに関かんする常識じょうしきを根底こんていから覆くつがえすようなチャレンジングな作品さくひんでしたが、世界せかいの興行こうぎょう収入しゅうにゅうランキングで、2022年ねんの今いまでも首位しゅいに君臨くんりんしています。第だい2作さく目めの「ウェイ・オブ・ウォーター」は、製作せいさく費ひが3億おく5000万まんドルから4億おくドルと推定すいていされていますが、ジェームズ・キャメロン監督かんとくがライフワークに位置いちづけている作品さくひんだと確信かくしんしました。キャメロン（＝神かみ）による天地てんち創造そうぞうですね。

●「ナワリヌイ」

ドキュメンタリーも色々いろいろありましたが、まずはサンダンスで観客かんきゃく賞しょうを取とった「ナワリヌイ」をあげておきます。ロシアのウクライナ侵攻しんこうがあった年としの公開こうかいは、実じつにタイムリーです。プーチンに暗殺あんさつされそうになったアレクセイ・ナワリヌイと、その協力きょうりょく者しゃであるネット探偵たんてい団だんベリングキャットの活動かつどうについて、非常ひじょうに重要じゅうような学まなびを得えられました。改あらためて、ロシアは恐おそろしい国くにだって再さい確認かくにん。「007」の初期しょきの頃ころから、本質ほんしつ的てきには変かわっていないんじゃないかと。

●「ジャマル・カショギ殺害さつがい事件じけん　真犯人しんはんにんは逮捕たいほされない」

これまた政治せいじドキュメンタリーですが、本線ほんせんのカショギ暗殺あんさつ事件じけんの裏側うらがわを暴あばく驚おどろきの証言しょうげんの数々かずかずに加くわえて、ジェフ・ベゾスの不倫ふりん発覚はっかく事件じけんが描えがかれていてもの凄すごく驚おどろきました。ネットの世界せかいは、本当ほんとうに油断ゆだんならないですね。ベゾスだってやられちゃうんだから。私わたし（あなた）のスマホも誰だれかに覗のぞかれているかもって可能かのう性せいに恐怖きょうふを覚おぼえます。サイバー・セキュリティーの常識じょうしきをアップデートする必要ひつようがありますね。

●「ミーティング・ザ・ビートルズ・イン・インド」

これは、個人こじん的てきに「オレの映画えいがだ！」って唸うなった一本いっぽんです。ビートルズとデビッド・リンチの大だいファンなもんで。その昔むかし、インドのマハリシ・マヘーシュ・ヨギの道場どうじょうに瞑想めいそうの修行しゅぎょうに行いったビートルズの4人にんと、偶然ぐうぜんに同宿どうしゅくだったカナダ人じん男子だんしが、50年ねん後ごにその当時とうじの写真しゃしんを倉庫そうこから発掘はっくつして製作せいさくしたドキュメンタリー。マハリシの瞑想めいそうは、いまデビッド・リンチが布教ふきょうするTM瞑想めいそうと同おなじものなんです。あと、この映画えいがはビートルズの「ホワイトアルバム」のメイキングオブだと言いえます。彼かれらの曲きょく作づくりのエッセンスが伝つたわってくる珍めずらしくて素晴すばらしい映画えいがです。

●「チーム・ジンバブエのソムリエたち」

昔むかし、ジャマイカのボブスレーチームが冬季とうきオリンピックに出場しゅつじょうするという「クール・ランニング」という映画えいがが大だいヒットしましたが、それに近ちかいノリです。南みなみアフリカの隣となり、ジンバブエのソムリエたちが、フランスで行おこなわれる世界せかいソムリエ選手権せんしゅけんに出場しゅつじょうするという胸むね熱ねつドキュメンタリー。出演しゅつえん者しゃたちを応援おうえんしたくなるようなイベントが幾度いくども発生はっせいして、共感きょうかんに次つぐ共感きょうかんが味あじわえる映画えいがです。

●「ハケンアニメ！」

日本にっぽん映画えいがも少すこしだけ。私わたしはアニメの世界せかいにはそれほど詳くわしくないのですが、この映画えいがでアニメ業界ぎょうかいの一端いったんを垣間見かいまみることができて大変たいへん有意義ゆういぎでした。主演しゅえんの吉岡よしおか里さと帆ほももちろん抜群ばつぐんの存在そんざい感かんなのですが、中村なかむら倫りん也とか、柄本えもと佑たすくとか、尾野おの真千子まちことか、脇わきを固かためる俳優はいゆうさんたちがいちいち素晴すばらしい。アンサンブル・キャストって言いってもいいかと思おもいます。

●「流浪るろうの月つき」

本屋ほんや大賞たいしょうの案件あんけんですね。脚本きゃくほんがかなり作つくり込こまれていると同時どうじに、画が作づくりがちょっと尋常じんじょうじゃないぞと鑑賞かんしょう途中とちゅうで気きづき、あとで資料しりょうを見みたら、撮影さつえい監督かんとくが「パラサイト　半地はんじ下かの家族かぞく」のホン・ギョンピョでした。俳優はいゆうを映うつすカットもさることながら、空あきや川がわなど風景ふうけいを切きり取とるカットが絶妙ぜつみょうです。「パラサイト」がまた見みたくなりました。

以上いじょう、あくまで個人こじん的てきな「今年ことしの10本ほん」の紹介しょうかいでした。映画えいが館かんで見逃みのがした作品さくひんは、配信はいしんなどで見みられる物ものも多おおいので、是非ぜひご覧らんになってみてください。

2023年ねんも、たくさんの素晴すばらしい映画えいがに出合であえることを期待きたいして。

筆者ひっしゃ紹介しょうかい

駒井こまい尚文なおふみ（こまいなおふみ）。1962年ねん青森あおもり県けん生うまれ。東京外国語大学とうきょうがいこくごだいがくロシヤ語ご学科がっか中退ちゅうたい。映画えいが宣伝せんでんマンを経へて、97年ねんにガイエ（旧きゅうデジタルプラス）を設立せつりつ。以後いご映画えいが関連かんれんのWebサイトを製作せいさくしたり、映画えいが情報じょうほうを発信はっしんしたりが生業せいぎょうとなる。98年ねんに映画えいが.comを立たち上あげ、後のちに法人ほうじん化か。現在げんざいまで編集へんしゅう長ちょうを務つとめる。

Twitter：@komainaofumi