第 だい 77回 かい カンヌ国際映画祭 かんぬこくさいえいがさい 総括 そうかつ グレタ・ガーウィグ 、ショーン・ベイカー 、ルーカスにコッポラ…アメリカの新旧 しんきゅう 世代 せだい が並 なら ぶ閉幕 へいまく 式 しき 日本 にっぽん の若手 わかて の活躍 かつやく も印象 いんしょう 的 てき ポスターは黒澤 くろさわ 明 あきら 「八 はち 月 がつ の狂詩曲 きょうしきょく 」を用 もち いたデザイン (C)Kuriko SATO
今年 ことし も12日間 にちかん に及 およ ぶ、熱 ねつ に浮 う かされたようなカンヌ国際映画祭 かんぬこくさいえいがさい が幕 まく を閉 と じた。ここでは、ニュース欄 らん のリポートで書 か ききれなかった全体 ぜんたい 像 ぞう ををふり返 がえ って総括 そうかつ してみたい。
グレタ・ガーウィグ 率 ひき いる審査 しんさ 員 いん メンバーが選 えら んだパルムドールは、アメリカのインディペンデント系 けい 監督 かんとく 、ショーン・ベイカー の「Anora 」。セックスワーカーの女性 じょせい とロシアの新興 しんこう 財閥 ざいばつ の放蕩 ほうとう 息子 むすこ の出会 であ いをコミカルに描 えが いた本 ほん 作 さく は、批評 ひひょう 家 か の人気 にんき は高 たか かったものの、「まさかパルムドールとは」、という声 こえ も聞 き かれた。ポリティカリー・コレクトで選 えら ぶならイランのモハマド・ラスロフ の「The Seed of the Sacred Fig 」、下馬評 げばひょう の高 たか さではジャック・オーディアール の「Emilia Pérez」が上 うえ だった。だがガーウィグ自身 じしん がインディ出身 しゅっしん のことを考 かんが えれば、同 おな じ畑 はたけ の先輩 せんぱい (ベイカーはひと回 まわ り上 じょう の世代 せだい )に花 はな を持 も たせたというところだろう。彼女 かのじょ は授賞 じゅしょう の理由 りゆう を、「エルンスト・ルビッチやハワード・ホークス を彷彿 ほうふつ させるクラシックな構造 こうぞう のなかに真実 しんじつ を感 かん じさせた。すべてのパフォーマンスに魅了 みりょう され、心温 こころあたた まるものを感 かん じた」と語 かた った。
パルムドールはショーン・ベイカー、ジョージ・ルーカスに栄誉 えいよ 賞 しょう 写真 しゃしん :ロイター/アフロ
閉幕 へいまく 式 しき ではベイカーに賞 しょう を授与 じゅよ したジョージ・ルーカス に栄誉 えいよ パルムドールが捧 ささ げられ、そのプレゼンテーターには彼 かれ の盟友 めいゆう フランシス・フォード・コッポラ が登場 とうじょう するなど、期 き せずしてアメリカの新旧 しんきゅう 世代 せだい が並 なら んだ。
今年 ことし のセレクションの傾向 けいこう で真 ま っ先 さき に浮 う かぶのが「若返 わかがえ り」である。カンヌと言 い えば、これまで常連 じょうれん が多 おお く、「毎年 まいとし あまり代 かわ り映 ば えしない顔 かお ぶれ」と評 ひょう されることが少 すく なくなかった。だが今年 ことし はコンペティションに初 はつ 監督 かんとく 作 さく (アガート・リダンジェの「Wild Diamant」)が一本 いっぽん あった他 ほか 、若手 わかて とベテランがほどよく混 ま ざり、ある視点 してん 部門 ぶもん に至 いた っては18本 ほん 中 ちゅう 8本 ほん が初 はつ 監督 かんとく 作 さく だった。
また、以前 いぜん ならミッドナイト上映 じょうえい やスペシャル・スクリーニングで披露 ひろう されたようなエンターテインメント系 けい の作品 さくひん やジャンル映画 えいが が、コンペティションに入 はい ったのも特徴 とくちょう だ。たとえば脚本 きゃくほん 賞 しょう に輝 かがや いたコラリー・ファルジャ の強烈 きょうれつ なボディ・ホラー「The Substance 」、アクションとロマンスにヴァイオレンスを足 た して攪拌させたようなジル・ルルーシュ の「Beating Hearts」など。そもそもオープニングから、シュールなコメディの監督 かんとく として知 し られるカンタン・デュピュー の新作 しんさく 「Le Deuxième acte」を持 も ってくるなど、例年 れいねん 以上 いじょう にチャレンジングな印象 いんしょう があるのは、未来 みらい に向 む けた世代 せだい 交代 こうたい を意識 いしき しているからかもしれない。実際 じっさい 今回 こんかい は、コッポラ(「Megalopolis 」)やデビッド・クローネンバーグ (「The Shrouds 」)、ポール・シュレーダー(「Oh Canada 」)といった大御所 おおごしょ より、パヤル・カパディア (グランプリ受賞 じゅしょう の「All We Imagine as Light 」)やアリ・アッバシ (トランプ前 ぜん 大統領 だいとうりょう の若 わか き時代 じだい を描 えが いた「The Apprentice」)ら、若手 わかて の方 ほう に勢 いきお いが感 かん じられた。
国際 こくさい 批評 ひひょう 家 か 連盟 れんめい 賞 しょう 受賞 じゅしょう 、「ナミビアの砂漠 さばく 」チーム(C) KAZUKO WAKAYAMA
日本 にっぽん 勢 ぜい はコンペティションこそなかったものの、是枝 これえだ 裕和 ひろかず が審査 しんさ 員 いん を務 つと め、彼 かれ が注目 ちゅうもく する気鋭 きえい 、奥山 おくやま 大 まさる 史 し の「ぼくのお日 ひ さま 」がある視点 してん 部門 ぶもん に入選 にゅうせん 。監督 かんとく 週間 しゅうかん 部門 ぶもん には山中 やまなか 瑶子 ようこ の「ナミビアの砂漠 さばく 」と、久野 くの 遥子 ようこ 、山下 やました 敦 あつし 弘 ひろし のふたりによるアニメーション「化 ば け猫 ねこ あんずちゃん 」が入 はい った。山中 さんちゅう 監督 かんとく は、監督 かんとく 週間 しゅうかん と批評 ひひょう 家 か 週間 しゅうかん 部門 ぶもん を対象 たいしょう にした国際 こくさい 批評 ひひょう 家 か 連盟 れんめい 賞 しょう を、女性 じょせい 監督 かんとく として史上 しじょう 最年少 さいねんしょう で受賞 じゅしょう 。「21世紀 せいき の日本 にっぽん に生 い きる登場 とうじょう 人物 じんぶつ たちのあいだに絶 た え間 ま なく存在 そんざい する距離 きょり を捉 とら え、それらを通 とお して、現代 げんだい の感覚 かんかく の多様 たよう 性 せい を大胆 だいたん に探求 たんきゅう している」と評 ひょう された。山中 さんちゅう も奥山 おくやま も今回 こんかい が商業 しょうぎょう 映画 えいが としてのデビュー作 さく となるだけに、日本 にっぽん の新 あたら しい世代 せだい の活躍 かつやく を印象 いんしょう 付 つ ける機会 きかい となった。今後 こんご も世界 せかい の新 しん 世代 せだい と肩 かた を並 なら べる活躍 かつやく を期待 きたい したい。(佐藤 さとう 久 ひさ 理子 さとこ )