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ブルーバック あの海を見ていた : 映画評論・批評 - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2023ねん12月29にち

  • 予告編よこくへん

ブルーバック あのうみていた : 映画えいが評論ひょうろん批評ひひょう

2023ねん12月25にち更新こうしん

2023ねん12月29にちよりYEBISU GARDEN CINEMA、シネスイッチ銀座ぎんざほかにてロードショー

自分じぶんつめなおすことがあらたな発見はっけん

自分じぶんもどろう」…これはあるアスリートがスランプをだっしたのちかたった言葉ことばである。不調ふちょうおちいったとき、おもうようにことすすまないとき、なやみ、逡巡しゅんじゅんする。びと活動かつどうするためになにをすればいのか。これはだれもが幾度いくどとなくたる切実せつじつ問題もんだいだ。

原点げんてんへの回帰かいき子役こやくとして活動かつどうはじめたのちティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」(2010)で華々はなばなしいハリウッドデビューをかざった女優じょゆうミア・ワシコウスカは、エンタメ大作たいさくからジム・ジャームッシュデビッド・クローネンバーグギレルモ・デル・トロなど、作家さっかせいたか映画えいが監督かんとく現場げんばともにしてきた。オファーがえないなかで、彼女かのじょはある重大じゅうだい決断けつだんをする。活動かつどう拠点きょてん母国ぼこくオーストラリアにうつ選択せんたくをしたのだ。

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そしてもうひとり、スティーヴン・スピルバーグの「ミュンヘン」(2005)やガイ・リッチーの「キング・アーサー」(2017)など、ハリウッド映画えいが常連じょうれん俳優はいゆうエリック・バナほんさく製作せいさくしゃで、猟師りょうしとして出演しゅつえんしているバナは、大作たいさく志向しこうから一線いっせんかくすかのように母国ぼこくオーストラリアで映画えいが製作せいさくつづけている。

前置まえおきがながくなったが、この映画えいが海洋かいよう研究けんきゅうしゃである主人公しゅじんこうが、ははたおれたとのほうけて故郷こきょうであるごう海岸かいがん沿いのへともどるおはなしである。言葉ことばはっしなくなったはは気遣きづかいながら、彼女かのじょ幼少ようしょうから成長せいちょうへ、海岸かいがん自然しぜんうみを棲家とする生命せいめいたちをまもつづけてきたははごした日々ひびおもいをめぐらせる。

8さい誕生たんじょう、そのちわびていたははは、むすめをボートにせると一緒いっしょうみにダイブする。まれてはじめてのうみでアビー(ミア・ワシコウスカ)は巨大きょだい硬骨魚こうこつぎょるいウェスタン・ブルーグローバーと出会であう。背中せなかあおいことから“ブルーバック”とばれてあいされるさかなとの“一生いっしょうもの”の出会であいによって海洋かいよう生物せいぶつうつくしさに魅了みりょうされていく。

15さい成長せいちょうしたアビーは、うみ出会であったさかなたちをえがきながら進学しんがく準備じゅんびをしている。うみ見渡みわたせる場所ばしょ自然しぜん共生きょうせいするははむすめおだやかならしは、リゾート開発かいはつ目論もくろおとこ登場とうじょう荒波あらなみさらされる。さらに、絶滅ぜつめつ危惧きぐしゅにすら水中すいちゅうじゅうける密猟みつりょうしゃうみらす。侵略しんりゃくしゃたちの蛮行ばんこうかねたははもっかっていく。

1997ねん原作げんさくしゃティム・ウィントンは、うみえるいえから都会とかいへとした幼少ようしょう体験たいけんと、30だいになって切実せつじつかんじた自然しぜんうったえかける「枯渇こかつかんしるした小説しょうせつ「ブルーバック」を発表はっぴょう出版しゅっぱん直後ちょくご監督かんとくロバート・コノリー映画えいがもうる。“ブルーバック”をCGで再現さいげんすることも可能かのうだが、監督かんとくはリアルな描写びょうしゃにこだわり、当初とうしょはアニメ作品さくひんとして構想こうそうされていた。その、クリーチャー制作せいさく技術ぎじゅつ劇的げきてき進化しんかし、あお巨大きょだいぎょ“ブルーバック”を実寸じっすんだい再現さいげんし、水深すいしん20メートルの海中かいちゅうおよがせることが可能かのうとなった。

未来みらい見定みさだめるために自分じぶんもどること。この映画えいが根底こんていにあるのは、みずからの原点げんてんもどり、かけがえのないものをさい認識にんしきすることの大切たいせつさだ。過剰かじょう描写びょうしゃなどは一切いっさいなく、どこまでも自然しぜんにある“そのもの”をつめようとしている。つくしゅ演者えんじゃたちのつながりと故郷こきょうへのいつくしみの精神せいしんが、かざてることがないこの映画えいが独特どくとくあじわいをあたえている。

髙橋直樹なおき

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