パレード
配信開始日:2024年2月29日
解説
「新聞記者」「余命10年」の藤井道人監督が長澤まさみを主演に迎え、この世から旅立った人々から残された人々への思いをテーマに描いたオリジナルのヒューマンドラマ。
瓦礫が打ち上げられた海辺で目を覚ました美奈子。離ればなれになったひとり息子の良を捜す彼女は、道中でアキラという青年や元ヤクザの勝利、元映画プロデューサーのマイケルらと出会い、やがて自分がすでに亡くなっていること、未練を残して世を去ったため、まだ“その先”に行くことができずにいることを知る。そしてアキラたちもまた、さまざまな理由でこの世界にとどまっていた。現実を受け止めきれない美奈子だったが、月に一度死者たちが集い、それぞれの会いたかった人を捜すパレードに参加したことをきっかけに、少しずつ心が変化していく。
自らの死を自覚し、次第に運命を受け入れていく美奈子役を長澤が務めたほか、青年アキラ役を坂口健太郎、ヤクザの勝利役を横浜流星、映画プロデューサーのマイケル役をリリー・フランキーがそれぞれ演じた。そのほかの共演にも寺島しのぶ、田中哲司、森七菜、黒島結菜、中島歩、若林拓也、深川麻衣、でんでん、舘ひろし、北村有起哉、木野花、奥平大兼と実力派キャストが集った。撮影は、藤井監督と数々の作品でタッグを組んできた今村圭佑。Netflixで2024年2月29日から配信。
2024年製作/132分/日本
配信:Netflix
配信開始日:2024年2月29日
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2024年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
未練を残して死んだ人間が「その先」に行くことができずに亡霊のようにさまよっているという設定で震災を描く点で、『天間(てんま)荘の三姉妹』にも近い作品。あるいは是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』を思い出す人もいるかもしれない。こういう生の世界と死の世界の狭間という感覚は日本以外にどれくらいあるんだろうか。あまり西洋的な感覚じゃないのかもしれないとふと思った。
この作品では、子ども一人を残して震災で命を落としたシングルマザーが主人公で、他に様々な理由で未練を残した人々とのやり取りを描く。リリー・フランキー演じる男は映画プロデューサーで、未完成の作品を完成させるというエピソードが出てくるのだが、亡霊と「映画という虚構的なあわい」の親和性を活かしていて、主人公のエピソードよりも全体の中で光っている。それは全体としてバランス的にどうなのかという気もするのだが、気持ちのいい作風なので良いかな。
福島県南相馬市にある朝日座でロケをしているのだが、これが大変良い効果をあげている。かつての生者たちがかつて映画館だった場所につどい、映画という虚構を見つめる。このシーンはなかなか味がある。震災後に朝日座を訪れたことがあるのだが、「ニュー・シネマ・パラダイス」のような「夢の跡」を感じさせる場所だった。本作のロケ地にピッタリだと思う。
2024年7月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ネタバレ! クリックして本文を読む
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
このNetflix映画『パレード』は、いわゆる現世に心残りを持っている死者たちの話です。
私達は死者に対して、一般的には(罪を償っていない犯罪やそれに匹敵する行為がない場合)強い批判を継続することはないとおもわれます。
なぜなら死者は反論の機会を失っているからです。
例外としては、その人の成し得た功績や作品などについて、外化された物として(その内容や作品自体に反論が内包されていて)後に評論されることはあり得ますが、やはり1つの人格としての反論の機会のない相手に対しての一方的な批判は避けられる傾向にあります。
この作品で出てくる主要な人物は、(現世に心残りを持っている)死者たちです。
すると彼らは現実の世界での反論の機会を失われていて、是々非々でもって評価される機会を失っています。
すると、死者たちの描写は良い部分を強調されて表現されることになると思われるのです。
例えば、映画プロデューサーだったマイケル/古賀充(リリー・フランキーさん、若林拓也さん)のエピソードでは、(おそらく亡くなられた河村光庸プロデューサーがモデルになっていると思われますが)彼の撮影した沖縄での米軍基地反対闘争の映画が流されます。
しかし今作の中では、まずマイケルは死者として、そして彼の描いた沖縄基地闘争は劇中の映画作品として、二重に守られることで、彼やその劇中映画に対する是々非々の論評や批判を観客にやり辛くしています。
沖縄の米軍基地問題は、現在も解決されていません。
例えば辺野古基地移設の話を最終的に決めたのは、現在の野党議員の多くが所属していた民主党政権の時であり、そんなに簡単に解決できる話ではないことは多くの人が知っています。
しかし今作では、マイケルは死者として、描かれた沖縄米軍基地反対闘争の映画は劇中映画として、問題への言及はされないように守られています。
マイケルと佐々木博(舘ひろしさん、中島歩さん)との最後の会話では、米軍基地反対闘争の時に自分たちは「団結していた」と語られます。
ただその「団結」は、現在の私達から見れば、問題の現実解決策の本質から、地道な手仕事から、目を逸らせていたから可能だったのではないか?という疑念が現れるのです。
(今作の藤井道人 監督は本質ノンポリで、そこまで深くこの問題を取り扱う気もないかもですが‥)
しかしそんな疑念も、死者の彼らに届く術はありません。
同様に、息子や報道との関係での主人公・美奈子(長澤まさみさん)や、ヤクザや恋人との関係での勝利(横浜流星さん)や、家族の中でのかおり(寺島しのぶさん)など、それぞれ死者であるために、生きた相手との対立や功罪含めた相手との相互の葛藤は描かれないままです。
(ナナ(森七菜さん)が生きて次の周りとの関わり葛藤へと向かえたのは良かったとは思われました。また、アキラ(坂口健太郎さん)は藤井道人 監督の分身であるのか、多少はアキラの父・恵介(でんでんさん)とのリアリティある葛藤が伺えて共感度合いはありました。)
私がこのNetflix映画『パレード』に乗れなかった理由は、出てくる主要登場人物たちが死者として守られていて、彼らの一方的な想いが吐露され続けた所にあると思われました。
今作は特に美術や映像が素晴らしく、さすが予算あるNetflixは違いますね、と思われました。
であるので、今回の実力俳優陣の内容ある演技含めて、次は同様の座組で、相互に関係対立する生きた人々の映画として観たいと、僭越ながら思われました。
2024年6月28日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
なんだろう、優しい気持ちで観られる作品でした。
長澤まさみさんが出る作品はハズレがない気がするなぁ。
オススメする作品なので内容については書きません!
2024年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
採点3.6
残してしまった者への、届かない想いを描いた作品。
まず最初から死んでる感じを隠さないのが潔いですね。
キャストも豪華で、舘ひろしなんてほんのちょっとなのに「やっぱり格好良いわ…」ってなる位印象に残りました。
それとフランキーの歌が思いの外うまく、結構作品の良いアクセントになってました。
あと一行が立ち寄った劇場、そして後の息子が足を運んだ劇場がユーロスペースなのが面白かったです。
ちょいちょい脚を運ぶシアターなので、何だかくすぐったい気持ち。
皆にそれぞれのエピソードがあって、やっぱりキュってなるんですね。
中でも長澤まさみと息子との再会は…流石に涙してました。
あと音楽が中々良いですね。新海作品ではピンとこなかったのですが、こちらは作品にとても合っていました。
何というか、心が少し暖かくなるような物語です。