プラダを着きた悪魔あくま

<映画えいがのことば>
いつもは、もっと違ちがうタイプの子こを雇やとうの。
オシャレで、細身ほそみの子こ。
うちの雑誌ざっしの崇拝すうはい者しゃたち。
でも、失望しつぼうさせられることがあるわ。
だから、あなたの素晴すばらしい履歴りれき書しょと、立派りっぱなスピーチを聴きいて「この子こは違ちがう」と思おもったのよ。
自分じぶんに言いったのよ。「リスクを承知しょうちで雇やとうんだ。利口りこうな太ふとった子こを。」と。
期待きたいしたのよ。
望のぞみを託たくしたのに、失望しつぼうさせられたわ。
他たのどんなバガな子こたちよりも。
以上いじょうよ。

鬼おに編集へんしゅう長ちょうの「鬼おに」ぶりは、流行りゅうこうの変化へんかか激はげしいファッション業界ぎょうかいをリードする立場たちばにあって、片時かたときも気きを抜ぬくことができない…その重圧じゅうあつから来きていたのではないでしょうか。
夫おっととの離婚りこん問題もんだいを心中しんちゅうのに抱かかえながらも（しかも、二に度目どめの離婚りこん？）。
反面はんめん、その一見いっけんするとパワハラぶりは、アンディに対たいする期待きたいでもあったのだろうと思おもいます。

無茶むちゃであることは内心ないしんでは百ひゃくも承知しょうち、二に百ひゃくも合点がてんの上うえではあっても、自分じぶんの要求ようきゅうに応こたえてもらえなかったことに満足まんぞくはしていないミランダのセリフとして出でてくる上記じょうきの映画えいがのことばは、たぶん、おそらく…というか、ほぼ確実かくじつに、アンディに奮起ふんきを促うながす「励はげまし」のことばだったのだと、評論ひょうろん子こは受うけ取とりました。

い回いまわしとしては辛辣しんらつでも、ミランダの本心ほんしんとしては。正せい（まさ）しく、あたかも、ライオンがわが子こを千尋ちひろ（せんじん）の谷たに底そこに突つき落おとしその練ねり獄ごくから這はい上あがって来くることを期待きたいすると言いわれるように。
（そのことは、アンディが、彼女かのじょの希望きぼうだったマスコミ業界ぎょうかい＝新聞しんぶん社しゃへの転職てんしょくについて、ミランダが元もとボスとして、好こう評価ひょうかの推薦すいせん状じょうを書かいていたということからも明あきらかだったと思おもいます。）

そういう点てんからいえば、本ほん作さくも（ファッション業界ぎょうかいの）「人ひとと人ひととの関係かんけいを描えがいた一本いっぽん」ということでは、それなりのヒューマンドラマとして位置いちづけても、まるきりの的外まとはずれということではなかったかと思おもいます。

そういう要素ようそも加味かみすると、なかなかの佳作かさくではあったと思おもいます。
評論ひょうろん子こは。

（追記ついき）
ミランダのきれいな銀髪ぎんぱつと、艶つや（つや）かなアンディの黒髪くろかみ－。
それは二に人にんの女性じょせいの年代ねんだいの差さを、はっきりと象徴しょうちょうしていたのではないでしょうか。
専門せんもん雑誌ざっしの編集へんしゅうを通つうじ、いかにファッション業界ぎょうかいを切きり開ひらき、牽引けんいんしてきたとはいえ、ミランダはすでに「老兵ろうへいは死しなず、ただ消きえ去さるのみ」ということが、そうは遠とおくない世代せだい。
引ひき換かえて、もちろんアンディは、これからの世代せだい。
その二人ふたりの女性じょせいの決定的けっていてきな違ちがいを象徴しょうちょうしていたのが、二人ふたりの髪かみの毛けの色いろではなかったでしょうか。
そう思おもいました。評論ひょうろん子こは。

（追記ついき）
それにしても…。
ブランドものの洋服ようふくって、やっぱり洗練せんれんされた艶つや（あで）やかさとでも形容けいようすべきなのか、独特どくとくの「見栄みばえ」は、するものなのですね。
いつも「着きたきり雀すずめ」のファッションで過すごしている評論ひょうろん子こには、とんと無縁むえんの世界せかいですけれども。
一流いちりゅうファッションのブランドを題名だいめいに冠かんした作品さくひんだけあって、ブランドもののファッションが、惜おしげもなく登場とうじょうするようです（前記ぜんきのとおり、その方面ほうめんにはまったく疎うと（うと）い評論ひょうろん子こには、すでに、その程度ていどの認識にんしき。）

女性じょせいは、身みにつける服装ふくそうでもテンションが上あがったりするのでしょうか。

華はなのないことを言いってしまえば、もちろんメーカーからの貸与たいよ品ひんなのでしようけれども。製作せいさく側がわにも「予算よさん」という限かぎりがあることでしょうから。

しかし、ブランドものの洋服ようふくが惜おしげもなく登場とうじょうするという点てんては、ブランド好すきの向むきには、垂涎すいぜん（すいぜん）の一本いっぽんだったこととも思おもいます。

（追記ついき）
にしても…。
さすがは女優じょゆうさんですねぇ。
ブランドものの洋服ようふくを颯爽さっそうと着きこなしている様子ようすは。
アン・ハサウェイにしても、メリル・ストリープにしても。
「目めの保養ほよう」というのは、こういうことを指さして言いうのかも知しれません。

（追記ついき）
迫力はくりょくがありましたねぇ、メリル・ストリープの「鬼おに編集へんしゅう長ちょう」。
いやはや、すでに堂どうに入はいっている彼女かのじょの演技えんぎには、いまさらですけれども。
その存在そんざい感かんには、終始しゅうし、圧倒あっとうされます。

そして、アンディ自身じしんの希望きぼうもあり、必かならずしも「同おなじくファッション業界ぎょうかいで」ということではなかったのですけれども、「自分じぶんの決断けつだん」でわが道みちを選えらびとっていったアンディの成長せいちょうを喜よろこんだのは、他たでもない、ミランダその人ひとであったことは、疑うたがう余地よちもありません。

何なにを隠かくそう、別べつ作品さくひん『クレイマー、クレイマー』のジョアンナで見みかけてから、すっかり恋こいをしてしまい、自他じたともに許ゆるすメリル・ストリープの「追おいかけ」である評論ひょうろん子ことしても、老獪ろうかい（ろうかい）な年配ねんぱい編集へんしゅう長ちょうという役回やくまわりの彼女かのじょには、また彼女かのじょの新あらたな一いち面めんを感かんじたようにも思おもいます。
もっともっと、見みてみたいものです。他たの彼女かのじょの出演しゅつえん作品さくひんも。

（追記ついき）
ともすると、日本にっぽんでいう就職しゅうしょくは、文字通もじどおりに「職しょくに就つく」ということではなく、希望きぼうする会社かいしゃに入社にゅうしゃすること（就社）であるとも言いわれますけれども。
しかし、本ほん作さくでは、ジョブ型がた雇用こようと転職てんしょくによるステップアップというアメリカでの就労しゅうろう形態けいたいが明確めいかくに描えがかれ、彼我ひがの雇用こよう形態けいたいを比較ひかくするにも、良よい作品さくひんで、その意味いみでは「cinema de 労働ろうどう契約けいやく法ほう」ということでは、優すぐれた一本いっぽんでもあったと思おもいます。

<映画えいがのことば>
君きみが働はたらく雑誌ざっしは、世界中せかいじゅうの偉人いじんを掲載けいさいした。
彼かれらが創造そうぞうしたものは、美術びじゅつ品ひんよりも偉大いだいだ。日々ひび、身みに纏まとい（まと）うから。
これは、ただの雑誌ざっしではない。
輝かがやかしい希望きぼうの光ひかりだ。
多おおくの伝説でんせつ的てきな人物じんぶつが歩あるいた建物たてものにも、君きみは無む関心かんしん。ここで働はたらけるなら、多おおくの者ものは、命いのちも捧ささげる。
甘あまったれるな。

名作めいさくとして名前なまえだけは知しってた。18年ねん後ごの今いまでも色褪いろあせていなかった。起承転結きしょうてんけつがしっかりしており、転てんが少すこし複雑ふくざつで、観み終おわったあと解説かいせつサイトなどで多少たしょう補完ほかん。それプラス小しょうネタなど仕入しいれてまた観みたくなるような出来できでした。キャストもキャラ立だちしていて◎