みんなのいえ : 映画評論・批評
2001年6月1日更新
2001年6月9日より日劇東宝ほか全国東宝系にてロードショー
ノンクレジットの豪華ゲストも! 三谷監督最新作
ドラマ作家で金を溜めた男(ココリコ田中直樹)が家を建てようとする。大工は妻(アナウンサー八木亜希子)の実父田中邦衛、設計はアメリカの建築美学に思い入れるインテリア・デザイナー唐沢寿明。玄関ドアは外開きか内開きか、大黒柱は必要か、壁の色はどうするなど個々の局面で混乱は必至。そこに直樹の実母で風水狂の野際陽子の注文まで入る。オブラートでくるまれたテンポのある世代間価値の対立劇。作品は「ラヂオの時間」同様、せわしない多元的な長回しショットを駆使する。そして直樹=気弱、唐沢=颯爽とした自信家、八木=キツい、邦衛=昔気質で超頑固、野際=能天気というタイプキャストにより、驚くべきことにドラマの先行きが全く読めてしまうのだ(つまり結局、邦衛と唐沢は互いの職人ぶりを認め家が完成する)。その予定調和的安心感が本作の受けのよさだろう。微温的な笑かしの連続にも三谷センス特有の柔らかい感触があり、そのなかで例えば「墨壷」のエピ ソードが胸に暖かく迫ってくる。「心憎い」といえるかもしれない。ただし家の完成の瞬間の描写がないのはちょっと残念だった。和田誠の新作「真夜中まで」と配役上の応答がある点にも注意が必要だ。
(阿部嘉昭)