ハリー・ポッターと不死鳥ふしちょうの騎士きし団だん : 映画えいが評論ひょうろん・批評ひひょう

2007年ねん7月がつ10日とおか更新こうしん

2007年ねん7月がつ20日はつかよりサロンパス・ルーブル丸まるの内うちほかにてロードショー

大人おとなの領域りょういきに足あしを踏ふみ入いれたハリーの葛藤かっとうに迫せまる

(C)2007 Warner Bros. Ent. Harry Potter Publishing Rights (C) J.K.R.

クリス・コロンバス（1、2作さく）のゆるめの演出えんしゅつが、楽たのしかったと懐なつかしくなるほど、第だい5作さく「不死鳥ふしちょうの騎士きし団だん」はハードでダークな作品さくひんになった。毎回まいかい、ハリーの成長せいちょうを追おい続つづけてきたシリーズだが、明あきらかにこの回かいがターニング・ポイント。子供こども時代じだいの楽たのしい日々ひびは終おわりを告つげ、ヴォルデモートとの最終さいしゅう戦せんに向むけて、ハリーは大人おとなの領域りょういきに足あしを踏ふみ入いれる。復活ふっかつしたヴォルデモートへの恐怖きょうふを人一倍ひといちばい感かんじ、悪夢あくむに悩なやまされているハリーは、自分じぶんの苦くるしみを分わかってくれない大人おとなたちに対たいして怒いかりと苛立いらだちを抑おさえられない。今いままでの我慢強がまんづよい優等生ゆうとうせいから感情かんじょう的てきで猜疑心さいぎしんの強つよいハリーへの変化へんか。その葛藤かっとうに深ふかく迫せまって内面ないめんの描写びょうしゃに徹てっしているのが今回こんかいの特徴とくちょうだ。

ダニエル・ラドクリフも演出えんしゅつの要望ようぼうに応こたえて男おとこっぽく一いち歩ほ前進ぜんしん。ハリーの新あたらしい局面きょくめんという意味いみでは成功せいこうしているが、その代かわり、魔法まほうがもたらすワクワク・ウキウキした空気くうきも消きえて、真面目まじめで地味じみな仕上しあがりになった。その真面目まじめさ故ゆえか、大切たいせつな人ひととの別わかれの辛つらさを克服こくふくし、自分じぶんを愛あいしてくれる味方みかたや友ともだちの存在そんざいを再さい確認かくにんするというエモーショナルなポイントも、やや盛もり上あがりに欠かけたのが惜おしい。もうちょい、泣なかせてくれても良よかったのでは。

（森山もりやま京子きょうこ）