ストーリー
篠原良子は京都に住む人形作家。彼女は時折人形を買い求めにくる青年、平垣信治に不思議な魅力を感じていた。良子のパトロンである老舗の京染屋主人、藤岡は、不動産屋の村松の勧めもあって良子に宿屋を買い与えることにした。良子と藤岡の関係は、良子の実家が倒産して送金出来なくなった事から始まった。彼女は師匠の菱川玉池に相談したのだが、玉池は金銭的に面倒をみることができず、玉池の名前を使って呼び出した藤岡に世話になることになったのだ。ある日、藤岡の妻、満枝が良子の家を訪れ、罵倒を浴びせて帰っていった。屈辱に堪える艮子は展覧会に出品する人形制作に没頭した。藤岡は気安めにと温泉に誘うが、その旅先の宿で良子は信治の姿を目撃した。その夜、良子は信治に抱かれる夢をみる。時は流れ、ある夜良子は、藤岡の実娘、香織の恋人の健太郎に乱暴されてしまう。怒りと絶望に満ちて戻った良子を待ち受けていたのは、脳卒中で藤岡が亡くなったという訃報だった。数日後、良子の前に信治が現れ、仕事を尋ねた彼女に美術商だと答えて去って行った。暫くして藤岡の弁護士、小室が訪れ、良子が住んでいる家と土地を遺産分けという形で相続して欲しいと頼み込んだ。即座に断わった良子だったが、再度話があるからとの小室の呼び出しに応じる。だが、小室は遺産の話でなく愛人にならないかと誘いをかけてきた。抱いてくる小室の手を振りほどく良子。数日後、信治は洋装で別人のような良子を見かけて声をかけた。無数の石仏と石塔が立つ念仏寺で、良子は信治の愛の告白に戸惑ってしまう。過去を話しだす良子に、信治は以前からあなたを知っていたと告白する。良子は大学生だった頃、二人の学生を同時に愛した事で思い悩み自殺を計ったが、運よく土屋という男に救けられた。土屋は気を失っている良子を犯したのだが、土屋の息子である信治はそれを覗いていたのだ。それ以来、彼の中には良子の姿が刻み込まれていた。その夜、二人は結ばれた。翌朝、別れが訪れたが、良子の顔は新しい愛に生きる事ではればれとしていた。
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