エレメント・オブ・クライム

映像えいぞうの色味いろみや音楽おんがくは幻想げんそう的てきだが美うつくしいと言いい切きるにはあまりにも廃すたれた街まち、家いえ、人々ひとびと。
玩具おもちゃの車くるまが走はしり出だし、ぶつかるとともに画面がめんを横切よこぎる人ひとの乗のった車くるま。
新聞しんぶんを叩たたく音おとが鳥とりの羽はばたく音おとに重かさなる。
無数むすうの空あき瓶びんが敷しき詰つめられた倉庫そうこの中なかにある、小屋こや。
主人公しゅじんこうフィッシャーの頭痛ずつうは動うごくドアノブと少女しょうじょの悲鳴ひめいが聞きこえた、が。眼めは開ひらいているはずなのに頭あたまは何なにも考かんがえておらず、テレビ画面がめん以外いがいには何なにも見みえていない。
主人公しゅじんこうは犯罪はんざい者しゃの心理しんりに迫せまり過すぎた？よく分わからないが、少すこしだけわかる気きもするストーリーは絶妙ぜつみょうなのかもしれない。多分たぶん解わかった風ふうに私わたしの頭あたまが解釈かいしゃくしているだけだとは思おもうが、いつか再度さいど見直みなおして、答こたえの無ない答こたえ合あわせはしなければならないと思おもう。

　カイロで精神せいしん治療ちりょうを受うけるフィッシャー刑事けいじは、問診もんしんにより担当たんとうしていた事件じけんを振ふり返かえる。13年ねんぶりにヨーロッパへもどったフィッシャーは、宝たからくじ売うり少女しょうじょ殺人さつじん事件じけんの捜査そうさにあたる。彼かれの恩師おんしオズボーンの「犯罪はんざいの原理げんり」という本ほんに基もとづいて犯人はんにんの足跡あしあとを追おい、その過程かていで出会であったキムとともに行動こうどうするが。
　公開こうかい当時とうじ見みてみたいと思おもっていた作品さくひんを、ようやく観賞かんしょう。トリアー監督かんとくのものだったのか。夢ゆめか現実げんじつか、ヨーロッパにいながら中東ちゅうとうとアジアの迷宮めいきゅうに落おとしこまれるような印象いんしょうでした。事件じけんも迷宮めいきゅう入いりかと思おもわれたが、意外いがいにあっさり真相しんそう解明かいめい。

　基本きほん的てきにはハードボイルドタッチな刑事けいじ物ぶつで、精神せいしん科か医いの催眠さいみん療法りょうほうによって過去かこの事件じけんを進すすめていく展開てんかい。そこでは宝たからクジ売うりの少女しょうじょ（LOTTO GIRL）が次々つぎつぎとバラバラ殺人さつじんの被害ひがいに遭あう。刑事けいじフィッシャーは恩師おんしであるオズボーンのメモによって犯人はんにんと思おぼしきハリー・グレイという男おとこになりすまして各地かくちのホテルに泊とまるのだが・・・

　これがラース・フォン・トリアーのデビュー作さくなのか！後ごの作品さくひんに繋つながっていくセンスは感かんじられるが、まだまだ残念ざんねんな部分ぶぶんもあったりする。全編ぜんぺんセピア調ちょうで主人公しゅじんこうの主観しゅかん部分ぶぶんが多おおいが、映像えいぞうには徐々じょじょに慣なれてくる。犯人はんにんと同おなじ薬やくを飲のんだり、売春ばいしゅん婦ふのキムと行動こうどうを共ともにしたりと、混沌こんとんとした夢ゆめの世界せかいで事実じじつが交錯こうさくする内容ないようだ。

　ハリー・グレイの筆跡ひっせきとフィッシャーの筆跡ひっせきが似にていたことから、もしや同どう一いち犯はん？と展開てんかいも想像そうぞうできたけど、彼かれの傷きずついた精神せいしんはもっと別べつ次元じげんのベクトルで破壊はかいされそうな・・・「犯罪はんざいの原理げんり」というオズボーンの理論りろん。むしろ「犯罪はんざいの美学びがく」とでも言いいたいような内容ないようでした。

セピア色しょくの映像えいぞうから実験じっけん的てきで混沌こんとんとした近きん未来みらい的てきな雰囲気ふんいきと世界せかい観かんに斬新ざんしんなものを感かんじながら、攻せめマクったラース・フォン・トリアーのブレない姿勢しせいは監督かんとくデビュー作さくである本ほん作さくから健在けんざいであるようデ。

一瞬いっしゅん、アラン・パーカーの『エンゼル・ハート』みたいな方向ほうこう性せいかと思おもいきや、キムが襲おそわれる場面ばめんと少女しょうじょのがリンクしているようで同おなじ構図こうずに思おもえるのが印象いんしょう的てきにも、ワイパー掴つかんでワーゲンとＳ●Ｘの描写びょうしゃがギャグのようで笑わらえてしまう！？

混乱こんらんしてしまう複雑ふくざつな展開てんかいから素直すなおに観みていれば難むずかしくもないようで、幻想げんそう的てきな映像えいぞうで誤魔化ごまかしながら捻ねじくれた演出えんしゅつで本ほん作さくを知的ちてきに装よそおってしまった感かんじもする。