コレクター（1965）のレビュー・感想かんそう・評価ひょうか

主人公しゅじんこう（テレンス・スタンプ）は蝶ちょうの収集しゅうしゅう家か、賭かけで大金たいきんを手てに入いれ、郊外こうがいの大おおきな家いえを買かう。
そして美術びじゅつ学校がっこうに通かよう女学生じょがくせい（サマンサ・エッガー）を拉致らち、監禁かんきんするが、何なにもせずに見守みまもるだけだった。
ほとんどが二に人にんの駆かけ引ひきだが、監督かんとくがあのウィリアム・ワイラー、退屈たいくつしない。

まさかの結末けつまつ
最近さいきんでこそ、後味あとあじ悪わるい映画えいが多おおいですが、まさかこの時代じだいに、それも名匠めいしょうワイラー君くんですよ。ビックリ。でもスタンプ君くんのイッちゃってる演技えんぎすごいですね。

｢ミニヴァー夫人ふじん｣の延長えんちょうで鑑賞かんしょう。

｢ベン・ハー｣等とうの超ちょう大作たいさくや
｢ローマの休日きゅうじつ｣等とうの名作めいさくを手掛てがけてきた
ウィリアム・ワイラー監督かんとくとしては異色いしょくの
題材だいざいと言いえそうで、それだけに彼かれの
テーマ選択せんたくとしては空振からぶり感かんを
感かんじてしまう映画えいがだった。

降ふって湧わいたあぶく銭ぜにが歪いがんだ性格せいかくの人物じんぶつに
更さらに暗転あんてんをもたらすとの典型てんけい話ばなしで、
現代げんだいだったら陰湿いんしつな展開てんかい・描写びょうしゃにしか
ならない題材だいざいだが、流石さすがにワイラー監督かんとく、
大物おおものらしく無難ぶなんな表現ひょうげんにまとめてはいる。
しかし、二人ふたりの感情かんじょう推移すいいにウエイトが
かかり過すぎて、ドラマの振幅しんぷく性せいが弱よわく
リアリティにも欠かけた印象いんしょうの作品さくひんだ。

そもそもがフレディの人物じんぶつ像ぞうの設定せっていに
｢コレクター｣としてまとめることに
無理むりはないのか。

｢コレクター｣的てきに象徴しょうちょう的てきなのは、
逃にがすように促うながされる瓶びんに入いれられた蝶ちょうと
ミランダを同おなじに見立みたてた場面ばめん、
そしてラストシーンだ。
フレディがミランダに持もつ感情かんじょうは、恋愛れんあい要素ようそ
が加くわわるので蝶ちょうとは異ことなるのは理解りかいする。
しかし、フレディの、
女性じょせいに腫はれ物もののように接せっしたり、
彼女かのじょの死しに際さいして動揺どうようが激はげしかったり、等ひとしの
彼かれが拉致らち犯罪はんざいで見みせる感情かんじょうは、
全すべて歪いがんだ性格せいかくの結果けっかだ。
それらを蝶ちょうの収集しゅうしゅうと同おなじように｢コレクター｣
として符合ふごうさせることに無理むりはないのか等とう、
余あまりにも歪いがんだ世界せかいを見みせられて、
この映画えいがを面白おもしろいと思おもえる訳わけがない。

果はたしてこの作品さくひんのテーマはワイラー監督かんとくに
相応ふさわしいものだったのだろうか。

因ちなみに私わたしの
ウィリアム・ワイラー監督かんとくベスト3は、
｢我が等とうの生涯しょうがいの最良さいりょうの年とし｣
｢探偵たんてい物語ものがたり｣
｢大おおいなる西部せいぶ｣
です。

どちらが主導しゅどう権けんを握にぎるのか、立場たちばが逆転ぎゃくてんする会話かいわの内容ないように被害ひがい者しゃは女おんなであるのに、何故なぜか？変態へんたい紳士しんしを加害かがい者しゃとして見みれない自分じぶん！？

最後さいごの最後さいごに化ばけの皮かわが剥はがれたか、ただのド変態へんたい自己じこ中ちゅうヤローであって、救すくいようもない、また同おなじことの繰くり返かえし的てきな悪事あくじに手てを染そめ。

エンディングは爽さわやかな音楽おんがくが流ながれて、テレンス・スタンプの演技えんぎを含ふくめ、観みていた映画えいがのジャンルに戸惑とまどってしまう、まぁサイコなサスペンスであるのは確たしかだけれど。

次つぎは理想りそうの女性じょせいでありますように！？って間違まちがった目線めせんで主人公しゅじんこうを思おもう、イヤイヤ、早はやく捕つかまって下ください。

不快ふかいで嫌いやぁな気持きもちにならない、心地ここち良よさ！？イヤイヤ、観み終おわった後のちが不思議ふしぎな感覚かんかく？？

　小学校しょうがっこうの頃ころだろうか、深夜しんや枠わくで何なん度どもTV放映ほうえいされていた。その頃ころの邦題ほうだいは『変態へんたい　コレクター』というものだったのですが、おかげで変態へんたい＝COLLECTORだと間違まちがえて覚おぼえた友人ゆうじんが大勢おおぜいいました。「違ちがうよ、それは。収集しゅうしゅう家かって意味いみだよ」と言いっても、彼かれらの頭あたまにはコレクターは変態へんたいだと刷すり込こまれてしまったらしいのです。それが小学校しょうがっこう高学年こうがくねんになると、理科りかの授業じゅぎょうで「卵たまご、幼虫ようちゅう、さなぎ、蝶ちょうと変かわることを変態へんたいという」ことを覚おぼえた彼かれらは、「ほーらみろ、やっぱり蝶ちょうは変態へんたいじゃんか」と勝かち誇ほこったようにはしゃいでいたものです。今いま思おもい出だそうとしても、どうも理りに適かないません。

　今いまで言いうと「完全かんぜんなる飼育しいく」シリーズの雰囲気ふんいきなのかもしれないけど、レイプしそうな素振そぶりも見みせないし、4週間しゅうかんという期間きかんを設もうけてただ話はなしをするだけ。自分じぶんの蝶ちょうコレクションを自慢じまんげに見みせたりして、打うち解とけようと試こころみるフレディ。だけど蝶ちょうはみんな死しんでいる。ミランダもこれら蝶ちょうのように殺ころされるのじゃないかと恐怖きょうふする。だけど、結局けっきょく4週間しゅうかん経たつまで何なにもしないフレディ。「ライ麦らいむぎ畑はたけでつかまえて」を議論ぎろんしたり、彼女かのじょの絵えを嬉うれしそうにもらったり・・・

　『サイコ』のアンソニー・パーキンスを真似まねたというだけあって、テレンス・スタンプは不気味ぶきみな青年せいねん役やくがとても似合にあっている。最後さいごのディナーを済すませ、いざ彼女かのじょを家いえまで送おくろうかという段だんになって、「結婚けっこんしよう」と切きり出だすところが二に人にんの葛藤かっとうが最高潮さいこうちょうになる。微妙びみょうな駆かけ引ひきは何なん度ども登場とうじょうしてきたけど、結局けっきょくは彼女かのじょに自分じぶんを愛あいしてもらおうと頑張がんばっていただけのフレディ。だけど、そんなんじゃ絶対ぜったい無理むり（笑）

　さらに「結婚けっこんOK」とか「抱だいて」とかミランダが言いっても、いつまでも逃にげ出だすための作戦さくせんじゃないかと懐疑かいぎ的てき。抱いだくことよりも家いえに置おいておきたいだけなのです。最終さいしゅう的てきには彼女かのじょを死しなせてしまったが、また次つぎの獲物えものを狙ねらうなんてのは許ゆるせないところだ。こうやって、連続れんぞく殺人さつじんが起おこるんだろうなぁ・・・

蝶ちょうの収集しゅうしゅうが趣味しゅみの根ね暗くら男おとこが若わかい娘むすめを誘拐ゆうかいし監禁かんきんする。変質へんしつ的てきな事件じけんが起おこるといつもこの映画えいがのテレンス・スタンプを思おもい出だしてしまう。監督かんとくは「ローマの休日きゅうじつ」や「ベン・ハー」を手てがけた巨匠きょしょうウイリアム・ワイラー。幅広はばひろいジャンルの作品さくひんを手てがけどれも面白おもしろいから凄すごい。突然とつぜん訪おとずれた隣人りんじんに犯罪はんざいがバレそうになった時ときには犯人はんにん目線めせんでハラハラしてしまった…あぶねえ～

基本きほん的てきには、安心あんしんして見みていられる映画えいがなんだと思おもいます。テレンス・スタンプが最初さいしょに地下ちか室しつに入はいり込こむ時ときの、空間くうかん全体ぜんたいを見みせながらの構図こうずとか好すきだったし。なんか古ふるき良よきアメリカ映画えいがの片鱗へんりんを感かんじるんですよね。
でも、どこか今いま一いち歩ほという感かんじもしたんですよねぇ、なんでだろうなぁ。鬼気きき迫せまる場面ばめんで、いちいち丁寧ていねいにズームとかしちゃうからかなぁ？　なんで今一いまいち歩あゆみ、自分じぶんがこの映画えいがに乗のれなかったのか、それが分わかるようになって、ちゃんと言葉ことばにできるようになりたいなぁ・・・って、自分じぶんへのぼやきです。

今いまで言いうストーカーです。
約やく50年ねん前まえの作品さくひんですがそのテーマの
衝撃しょうげき度どで後世こうせいの多おおくの作品さくひんに影響えいきょうを
与あたえた。

今いまも監禁かんきんにまつわる多おおくの作品さくひんが
作つくり出だされている事ことを考かんがえると
異常いじょう者しゃとその感情かんじょうや行動こうどうはずっと
不変ふへんなのかも知しれない。

自分じぶんを正常せいじょうとして、自分じぶんより弱よわい他人たにん
にだけ自分じぶんの意思いしを押おし付つける。
困こまった事ことに時間じかんだけはある。

この作品さくひんでも、逃にげようとする女おんなと
それを阻止そしする男おとこの歪いがんだ愛情あいじょうが
交錯こうさくする異常いじょうなシチュエーションが
描えがかれている。

最初さいしょは気弱きよわな主人公しゅじんこうを演えんじる
二枚目にまいめ俳優はいゆうテレンス・スタンプだが、
時間じかんがたつにつれ、狂気きょうきの異常いじょう者しゃに
なってゆく様さまが見応みごたえあり。

＜感想かんそう＞

この作品さくひんは、宮崎みやざき勤つとむの幼児ようじ連続れんぞく殺傷さっしょう事件じけんという世よにもおぞましい事件じけん当時とうじ、ビデオテープで一いち杯はいの彼かれの部屋へやを見みたせいか、捜査そうさ員いんらが「まるで、『コレクター』のようだ。」と口々くちぐちに漏もらした作品さくひんでもあるのだが、宮崎みやざき勤つとむのような猟奇りょうき的てきな場面ばめんは出でてこないです。

ただ、女性じょせいを崇あがめ、尊敬そんけいしつつも、監禁かんきんし、自分じぶんの思おもうように、ことを運はこびたい主人公しゅじんこうの異常いじょう心理しんりは、共通きょうつうするものがあります。

何故なぜ、当時とうじすでに巨匠きょしょうとして確立かくりつされた評価ひょうかを持もっていたはずのウィリアム・ワイラーが、このような異色いしょくの商品しょうひんをとったのかは、僕ぼくには定さだかではない。
僕ぼくが参照さんしょうしている死しぬまでに観みたい映画えいが1001本ほん 改訂かいてい新版しんぱんにも掲載けいさいされていなかったし、双葉ふたば 十三郎じゅうざぶろう氏し（Amazon著者ちょしゃページ）の外国がいこく映画えいがぼくの500本ほん (文春ぶんしゅん新書しんしょ)にも掲載けいさいされていなかった。

が、この映画えいが『コレクター』は、明あきらかにジョン・コーン、スタンリー・マンの脚本きゃくほんの勝利しょうりなのである。

冴さえない銀行ぎんこう員いんであり、みなから軽蔑けいべつの眼差まなざしで見みられていた主人公しゅじんこうが、賭かけで大金たいきんをモノにし、何なに不自由ふじゆうのない生活せいかつを、送おくれるようになった。

そんな彼かれが、遠とおくから眺ながめていたに過すぎない憧あこがれの女性じょせいを、監禁かんきんし、自分じぶんを愛あいしてくれるように仕向しむける。

[映画えいがレビュー]ウィリアム・ワイラー監督かんとくの異色いしょく作さく『コレクター』 | だから、映画えいがを観みるのはやめられないに続つづく。

トグサ的てき評価ひょうか：★★★☆☆