ストーリー
北アイルランドの一都会、冬の日のことである。ジョニィ(ジェームズ・メイソン)はある政治結社のこの市に於る首領をつとめる理想家肌の男、銃器密輸の罪で服役中逃走したお尋ね者で、彼に愛情を捧げているキャスリーン(キャスリーン・ライアン)の家に、腹心の部下デニス(ロバート・ビーティ)と共に身を潜めていたが、ジョニィは自分の情熱のすべてをその結社の活動に注ぎ、キャスリーンの深い愛に気附かなかった。この日、四時、ジョニィは三人の仲間と結社の資金獲得の為リンネル工場の襲撃に赴き、金の強奪には成功したが工場の会計係を射殺し、自分も重傷を負い車にしがみついて逃走しようとして振り落され、部下だけが逃走した。彼は防空壕に身を隠し暗くなるのを待つうちに雨が降り出した。警察では懸賞金をかけ全力を挙げて厳しい追求を始めた。多量の出血に苦しむジョニイは暗い雨の街に隠れ場所を求めてよろめき歩き、何とかキャスリーンとも連絡をつけようとした。キャスリーンも、あらゆる階層の人々と懇意なトム神父(W・G・フェイ)の許を訪れ、事情を打明けて連絡を依頼した。ジョニィはその頃フェンシイ(ウィリアム・ハートネル)の酒場にたどり着いて、奇妙な人々に出会った。一人はシェル(F・J・マッコーミック)と云う暗黒街の片隅に生きる老人で、トム神父と連絡してジョニィを隠れ家に帰えそうと努めて呉れた。もう一人画家のルウキィ(ロバート・ニュウトン)は瀕死の人物を描くことを念願とする男で、息も絶えだえのジョニイこそ彼の求めるイメージだったので、自分のアトリエに連れモデル台に坐らせた。意識不明のジョニィはそこで医師くずれのトバーの手当を受けた後、また夜の街にさ迷い出た。雨はいつか雪に変っていた。連絡によりジョニィを待っていたキャスリーンは彼を逃亡させるため、共にドックへ向った。が、すべては遅過ぎ警官隊の追跡は真近かに迫っていた鉄柵に追い詰められた二人は、警官の銃弾に雪を血に染めて倒れた。時計は十二時を告げ、かくして丁度八時間の出来事は終った。
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