レイジング・ブルのレビュー・感想かんそう・評価ひょうか

初はつ見みの印象いんしょうはあまり面白おもしろくありませんでしたが、傑作けっさくの呼よび声ごえ高たかいので再さい見み。

確たしかに主役しゅやく三さん人にんの超絶ちょうぜつ演技えんぎ、スコセ先生せんせいならではの映像えいぞうセンス、メリハリの効きいた映像えいぞう展開てんかいの運はこび、陰影いんえいを最大限さいだいげんに生いかしたモノクロ撮影さつえい、傑作けっさくと呼よばれる要素ようそは備そなえています。

がしかし、全体ぜんたいとしてつまらなくはありませんが、といって面白おもしろい、とも感かんじません。
面白味おもしろみは薄うすいが、完成かんせい度どはたかい純文学じゅんぶんがくの傑作けっさくみたような作品さくひんです。

主人公しゅじんこうジェイクの前妻ぜんさいに対たいする八やつ当あたりを見みていて、２番目ばんめの妻つまであるビッキーに対たいしても同様どうようの行為こういに及およぶだろうと思おもっていたが、案あんの定じょうだった。そしてビッキーに対たいする束縛そくばくが強つよく、どこで何なにをしていたか監視かんしをしないと気きが済すまないという病的びょうてきな性格せいかくを見みせる。しまいには弟おとうとまで疑うたがい出だす始末しまつ。今いままで他者たしゃを信頼しんらいしたことが無ないのだろう。だから暴力ぼうりょくで他者たしゃを押おさえつけたがる。妻つまにも弟おとうとにも見限みかぎられる根本こんぽん的てきな原因げんいんが、他者たしゃを信頼しんらいできないことにある。

ストーリーはボクシングの試合しあいと家庭かてい内ない不和ふわの問題もんだいが繰くり返かえされ、単調たんちょうに進すすむのでそこまで面白おもしろいとは感かんじなかった。ジェイクを演えんじたロバート・デ・ニーロの役やく作づくりは見事みごと。いつ怒いかり出だして何なにをするか分わからない男おとこの恐怖きょうふ感かんを出だすことができていた。

兎うさぎに角かく『ゴットファーザー』と同おなじで、イタリア系けいに対たいする自虐じぎゃく的てき歴史れきし史観しかんです。さて、それを好すきな人ひともいるでしょうね。しかし、アメリカン・ニューシネマに変へんなものが多おおいのはどうしてなんでしょう。本国ほんごくのイタリアには素直すなおに良よい映画えいがが沢山たくさんあるとおもいますが。

さて、この映画えいがは1980年ねんの映画えいがですが、伝記でんき映画えいがだそうで、主人公しゅじんこうは2017年ねん迄までご存命ぞんめいだったらしいです。つまり、この映画えいが公開こうかい時じには、1922年ねん生うまれで、58歳さいとお元気げんきだった訳わけです。
まぁ、それは兎うさぎも角すみ『八百長やおちょうはあった』訳わけですね。つまり、格闘技かくとうぎはやっぱり、興業こうぎょうなんですよ。それで、裏うら社会しゃかいで『賭博とばく』として成なり立たつんです。
その社会しゃかいの中なかで、自己じこ中心ちゅうしん的てきで、下品げひんで、叡智えいちが無なく、わがままで、暴力ぼうりょく的てきな、一人ひとりの成人せいじん男子だんしがボクシングと言いう格闘技かくとうぎを続つづけたというだけです。そんな男おとこの偉人いじん伝でんは見みるに耐たえませんよね。だって、八百長やおちょうやっているわけでしょ。
しかも、女おんなたらしで、嫉妬しっと深ふかいときている。何一なにひとつ良よい所ところないですね。

ご当人とうにん（本人ほんにん）からのクレーム無なかったんですかね。

さて『悪わるくないのに何なんでこんな目めに合あわせられる！』って、充分じゅうぶんに悪わるい事ことをしていると思おもいますが、そして、最後さいごに『新約しんやく聖書せいしょ』ヨハネによる福音ふくいん書しょ第だい9章しょう『盲めくらていたが、今いまは見みえると言いう事ことです』と締しめくくるなんて。
多分たぶん、敬虔けいけんなカソリックであるはずの演出えんしゅつ家かはこの言葉ことばを『心しんの中なかでせせら笑わらった』と思おもいます。だから、この『醜みにくい男おとこ』の生いき様ざまを目め一いち杯はい皮肉ひにくったと思おもいます。だから、高こう得点とくてんを差さし上あげたいのですが、2017年ねんまで老おいさらばえた事ことは許ゆるせないので、評価ひょうかできないです。『生いきる事ことは良よい』ですが、こんな映画えいが作つくらせて『い訳いわけで締しめ括くくる』なんて『もっての外ほかだ』と思おもいますが。
また、彼かれは半分はんぶんはユダヤ系けいだった訳わけですが、その事ことを、この演出えんしゅつ家かは差別さべつの対象たいしょうにした可能かのう性せいはあると思おもいます。いずれにしても、当とうの本人ほんにんは相当そうとうに『空気くうきの読よめない人物じんぶつ』であったような気きがします。
また、1980年代ねんだいの始はじめは、まだ、ペド●●●●が大手おおてを振ふって生息せいそくしていました。だから『若わかくとも、未成年みせいねんには見みえなかった』と言いうい訳いわけが公然こうぜんと許ゆるされる様ような時代じだいでした。だから、現代げんだいに於おいてこう言いった映画えいがを上映じょうえいする場合ばあいは、それを断ことわるべきだと思おもいます。
それを考慮こうりょすると『デ・ニーロは演技えんぎがうまい』とか『デ・ニーロはかっこいい』などと言いえないと思おもいます。愛あいなど欠片かけらもない立派りっぱな犯罪はんざい映画えいがですし、女性じょせいの地位ちい向上こうじょうを程遠ほどとおくした映画えいがな訳わけでしょうから。
ニューヨークでのたれ死しんだ我わが従兄弟いとこが大好だいすきな映画えいがでした。だから、今いままで見みなかったのですが、全まったく正解せいかいでした。

太ふとったり、筋肉質きんにくしつになったり、髪かみの毛け抜ぬいたり、いわゆるデニーロアプローチと呼よばれる役やく作づくりが浸透しんとうしたのはこの作品さくひんからではないでしょうか。そういう意味いみでは革命かくめい的てきな作品さくひんですね。デニーロはこの作品さくひんの演技えんぎが素晴すばらしすぎるがために指針ししんとなってしまい、後ごの作品さくひんでの演技えんぎが物足ものたりなく見みえるというか、なかなかオスカー獲得かくとくに繋つながらない、幸こうか不幸ふこうか・・・天才てんさいマーティン・スコセッシ監督かんとくが描えがくデニーロ演えんじるジェイクラモッタの病やんでる描写びょうしゃが容赦ようしゃないというか、血ちも涙なみだもなく描えがいてますよね。人間にんげんとしてボクサーとしてのジェイク・ラモッタの罪つみと罰ばちの物語ものがたり。こんなすごい人間にんげんドラマを見みせられたら、某ぼうボクシング映画えいがのアメリカンドリームが安やすっぽく見みえてしまう・・・

ブロンクス少年しょうねん愚連隊ぐれんたい。

ボクシングシーンの、
殴なぐられて、顔面がんめんが切きれて血ちが飛とび散ちるシーンなど迫力はくりょくあるが、
ボクシングシーンがメインではない。
ハードな練習れんしゅう風景ふうけいや
減量げんりょうの苦くるしみシーンもそんなにあるわけではなく、
主人公しゅじんこうのジェイク・ラモッタの
嫉妬しっと深ふかさなど、内面ないめんに焦点しょうてんを当あてた映画えいがになっている。
なので、
娯楽ごらく映画えいがとして期待きたいして見みるのであれば、
ロッキーの方ほうが面白おもしろいが、
ジェイクが栄光えいこうから転落てんらくし、
ショウパブにおちつくところまで、
ロバート・デ・ニーロの役者やくしゃ魂たましいをとことん味あじわえる映画えいがだ。
現役げんえきボクサーの頃ころの出来上できあがった肉体にくたいから、
ボクシングやめた後のちの
だるんだるんの
たいこ腹ばら、全部ぜんぶ役やく作づくりでつくり上あげたのであれば
この努力どりょくは半端はんぱない。
映画えいがとしては特別とくべつ好すきではないが、
ロバート・デ・ニーロの役者やくしゃとしての生いき様ざま、
役者やくしゃとはなんぞやを
がっちり見みれる映画えいがだ

そんなに名作めいさくかなぁ…？
成なり上あがりの熱あつく燃もえるようなやつかと思おもってたら全然ぜんぜん違ちがうんですね。事前じぜんの概説がいせつで町山まちやまさんも言いってたけど。
きっとボクシングの勝利しょうりへの執着しゅうちゃくと同おなじように、妻つまへの嫉妬しっと心しんを払はらうことが出来できず、そのために身みを滅ほろぼす主人公しゅじんこう。
ボクサーとしては魅力みりょく的てきなんだろうが、一人ひとりの人間にんげんとしては、ねぇ…
観みていて辛からかったです…

ロバートデニーロが演えんじたいと渇望かつぼうした映画えいが

んー、なんとも男性だんせい的てき
暴力ぼうりょく的てきで退廃たいはい的てき

まさにマーティンスコセッシの映画えいがだ
変へんなところで妙みょうに長ちょう回まわしするのが
癖くせになるっちゃなる

リングとか滴したたる血ちとか
素晴すばらしいシーンは多々たたあった

だいぶ前まえにDVDで観みたけど、改あらためて映画えいが館かんで観みたら、ボクシング映画えいがと言いうより狂気きょうきに取とり憑つかれた男おとこの心理しんりドラマの印象いんしょうでした。妻つまや弟おとうとにすら疑心暗鬼ぎしんあんきになり、試合しあいでは相手あいてを徹底的てっていてきに痛いためつける凶暴きょうぼうなプレイスタイルのボクサーである主人公しゅじんこうの屈折くっせつした心理しんりが、モノクロ画面がめんで不気味ぶきみに描えがかれています。観客かんきゃくに血ちしぶき飛とび散ちる試合しあいのバイオレンス描写びょうしゃも凄すさまじいけど、監督かんとくと脚本きゃくほんは『タクシードライバー』のコンビで納得なっとく。デニーロの体型たいけい改造かいぞう演技えんぎもあって、引退いんたいしてからは憑つき物ものが落おちたような豹変ひょうへんぶりも、どこか薄気味悪うすきみわるさがあります。役者やくしゃではデニーロの演技えんぎは言いうに及およばずだけど、意外いがいと目立めだっていたのはジョー・ペシで、目めつきからして怖こわかったです。キャシー・モリアーティの妖艶ようえんさも凄すごいけど、15歳さいの少女しょうじょ役やくは無理むりでは？

スコセッシは殴なぐられる方ほうだったが、カトリックの神父しんぷに助たすけられて、本当ほんとうは神父しんぷになりたかったという。
そんな人間にんげんの業ごうみたいなものをぼくしの壮絶そうぜつな演出えんしゅつの先さきに見みせるのはとてもうまい。
自分じぶんをバカと言いう場面ばめんは、自みずから省かえりみて心しんに残のこるものがあった。

デニーロさんの体型たいけい激変げきへん、知しってて観みてもやっぱりスゲー！
実話じつわベースだからなるほどって勉強べんきょうみたいに鑑賞かんしょう。
モノクロなのがなんか残念ざんねん。
カラーでいいのでは？
それにしてもデニーロさんの演技えんぎ、良よかったわ！

実在じつざいのボクサー・ジェイク・ラモッタの自伝じでんを基もとに半生はんせいを描えがいた名作めいさく。モノクロ作品さくひんとして制作せいさくした監督かんとくの意気込いきごみが伝つたわってくる。人間にんげんの弱よわさを描えがいていて栄光えいこうを掴つかみ取とるのは本当ほんとうに大変たいへんだが転ころげ落おちるのは簡単かんたん。一時いちじ的てきな気きのゆるみから転落てんらくしてしまう典型てんけい的てきな事例じれいでしょうか。
（午前ごぜん十じゅう時じの映画えいが祭さいにて鑑賞かんしょう）
2022-192

がかっこいい。
ロバート・デ・ニーロがシャドーボクシングをしているのだけれど、音楽おんがくとのちぐはぐさ(？)が妙みょうに心しんに残のこり、かっこいい、というか美うつくしい！
ひとつの映画えいがで、こんなにやせたり太ふとったりするのは、改あらためて役者やくしゃ(デ・ニーロ)の執念しゅうねんを感かんじた。
見みたかった映画えいががやっと見みれた。

罪つみはない。迫力はくりょくも凄すごかった。しかし、上映じょうえい前ぜんと後ごの企画きかくを考かんがえたのは誰だれですか!本当ほんとうに何なん十じゅう年ねんかぶりに退席たいせきしました。

マーティン・スコシージが演出えんしゅつした、破滅はめつ型がたボクサーの成なれの果はての映像えいぞう詩し。ロバート・デ・ニーロの役者やくしゃ魂たましいがストレートに感かんじられる闘たたかう男おとこの熱あつさと敗北はいぼくの無様ぶざまな姿すがたが強烈きょうれつである。この演出えんしゅつと演技えんぎが一ひとつに溶とけ合あって見事みごとな映画えいがとなる。描えがかれたものは男おとこの敗北はいぼく、それも生いきながらえて人生じんせいに負まけた男おとこの挑戦ちょうせん者しゃのむき出だしの生いき様ざま。ここには今日きょうの社会しゃかい性せいとは無縁むえんの、勝負しょうぶに拘かかわる男おとこの性せいがあるだけ。「アリスの恋こい」が自立じりつして生いきて行いく女性じょせいの困難こんなんさを描えがいたのに対たいして、この作品さくひんは本能ほんのうだけで生いきて行いく男性だんせいの孤独こどくを見詰みつめた男おとこのための映画えいがだった。物語ものがたりは非常ひじょうにシンプルで、モノクロ映像えいぞうの美うつくしさが際立きわだち、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティーカ』の間奏かんそう曲きょくと渾然一体こんぜんいったいとした演出えんしゅつも素晴すばらしい。この叙情じょじょう的てきな曲きょくが、ボクサーを主人公しゅじんこうにしたドラマのメインテーマ曲きょくとして生いかされている。
ドラマツルギーと云いうより、ジェイク・ラモッタの見みたスローモーションの残像ざんぞうが音楽おんがくで抒情じょじょう化かされた、男おとこのドリームとジェラシー。

　　1981年ねん　2月がつ18日にち　　日比谷ひびや映画えいが劇場げきじょう

面倒めんどうくせー奴やつ。しかもボクサーだから拳こぶしが凶器きょうきで厄介やっかい。主人公しゅじんこうの病気びょうきとまで思おもうほどの猜疑心さいぎしん、嫉妬しっと心しんから妻つまや子供こども、弟おとうとまで離はなれていき、落おちぶれていく元もとチャンプの実話じつわだけに、共感きょうかんはできない。ロバート・デ・ニーロの体重たいじゅう減量げんりょう、増量ぞうりょう、迫力はくりょくあるボクシングシーンは見みどころあり。

映画えいががと言いう意味いみでなくこんな狂人きょうじん,分わからず屋やが昔むかし自分じぶんの家いえにいた
思おもい出だしちゃった

　栄光えいこうやサクセス・ストーリーとはかけ離はなれた転落てんらく人生じんせいに焦点しょうてんを当あてた力作りきさくだ。『ロッキー』がアカデミー賞しょうを獲えったことに対たいするアンチテーゼの意味いみも込こめてあるような気きがしてならない。

　結局けっきょくオスカーでは、作品さくひん賞しょうや監督かんとく賞しょうはとれなかったもののジェイク・ラモッタの半生はんせい以外いがいにロバート・デ・ニーロ自身じしんの半生はんせいをも反映はんえいしたかのように、彼かれの映画えいがになっているような作つくりだ。どんどん下くだっ腹はらが醜みにくく出でてくる映像えいぞうも役者やくしゃ魂たましいを感かんじるし、彼かれにしか出来できない役柄やくがらだったのではないだろうか。疑心暗鬼ぎしんあんきにかられるジェイク、嫉妬しっとに狂くるうジェイク、人生じんせいを投なげ捨すててコメディアンとして生いきるジェイク、人生じんせいの勝者しょうしゃなんて中なか々生うまれてこないんだなぁ、としみじみ思おもう。

なかなか減量げんりょうできず苦くるしむ一人ひとりだが、役者やくしゃの増減ぞうげん量りょうは本当ほんとうに凄すごいよな。ロバート・デ・ニーロは顔かおつきまで変かわって、シャーリーズ・セロンといい勝負しょうぶ。
ボクサーの映画えいがって極限きょくげん状態じょうたいで殴なぐりあうせいか、パンチドランカー的てきになりがち。この作品さくひんでも、美人びじんの奥おくさんが浮気うわきしていないかという疑念ぎねんが尋常じんじょうでなく、次第しだいに人々ひとびとが離はなれていく。チャンピョンがここまで落おちていくのか、その落差らくさが余あまりに残酷ざんこく。
マスカーニのカバレリアが何なんとも切せつない。冒頭ぼうとうは前奏ぜんそう曲きょくと思おもえたが、ラストはレクイエムに感かんじた。