夏至げし

　『青あおいパパイヤの香かおり』『シクロ』の監督かんとくトラン・アン・ユンが5年ねんぶりに撮とった作品さくひん。

　撮影さつえいはマーク・リー。邦画ほうが『春はるの雪ゆき』(2005)でも撮影さつえいを担当たんとうしている台湾たいわん監督かんとくだ。冒頭ぼうとうから圧倒的あっとうてきな映像えいぞう美びによって魅了みりょうしてくれる手腕しゅわんはお見事みごと。長女ちょうじょの夫おっとが植物しょくぶつ専せん門もんの写真しゃしん家かで人間にんげんを撮とるのが苦手にがてだという設定せっていと、この映画えいがの撮影さつえいの対比たいひが妙みょうにバランスのとれた伏線ふくせんとなっている。そして、すべてのカットに妥協だきょうを許ゆるさないまでの色いろにこだわった映像えいぞう。目めの保養ほようになりました。

　ストーリーは理想りそう的てきな両親りょうしんの愛あいをモチーフにして、徐々じょじょに姉妹しまいの不倫ふりんの事実じじつが描えがかれはじめる。長女ちょうじょは名前なまえも告つげずに男おとこと密会みっかいを繰くり返かえし、次女じじょは妊娠にんしんしたお腹なかをしげしげと見みつめる。3女じょリエンは俳優はいゆうの兄あにハイと一緒いっしょに暮くらし、恋人こいびとからも遠とおざかり、兄あにと近親きんしん相姦そうかんになりそうなハズなのにならないぎりぎりの描写びょうしゃが素晴すばらしいです。

ベトナムの風景ふうけいが見みれるのがいい。

やっぱり、ベトナムは女おんなの人ひとがよく働はたらくんだなーって感かんじた。

3姉妹しまい、それぞれの恋愛れんあいがどろっとしてるようでピュアな気きがする。

トラン・アン・ユン監督かんとくの映画えいがは、途中とちゅうで自己じこ完結かんけつしたような食くい足たりない内容ないようのものがあるのだけど、この作品さくひんだけは別べつ。美人びじん姉妹しまいの恋こい物語ものがたりが、ゆるやかなベトナムの時間じかんの中なかで、スローテンポながらスリリングに展開てんかいされて、なかなかに面白おもしろい。

　恋こい物語ものがたり以外いがいで、この作品さくひんの見みどころはベトナムの生活せいかつ文化ぶんかだ。朝あさ、皆みなで外そとでフォーをゆつくりと味あじわいながら食たべて、昼間ひるまは春巻はるまきを美味おいしそうにほおばる。いったいこの人達ひとたち、いつ仕事しごとしているのだろう、なんて思おもうくらいに、ベトナムのゆっくりと流ながれる時間じかんの中なかでの人々ひとびとの豊ゆたかな生活せいかつぶりは、本当ほんとうにうらやましくなるくらい。

　もうひとつの見みどころは、世界せかい遺産いさんに登録とうろくされているハロン湾わんの景観けいかん。海うみから岩山いわやまがニョキニョキと生はえてきたかのような幻想げんそう的てきな美うつくしさで、映画えいがの中なかの風景ふうけいとして印象いんしょうに残のこるものだ。この映画えいがを見みたら、ベトナムに行いきたくなります。