アメイジング・スパイダーマン : 映画えいが評論ひょうろん・批評ひひょう

2012年ねん6月がつ19日にち更新こうしん

2012年ねん6月がつ30日にちよりTOHOシネマズ日び劇げきほかにてロードショー

スリーカードからフラッシュへ。監督かんとくも俳優はいゆうも技わざをきれいに決きめる

リブート、リブートと騒さわがしいが、要ようは作つくり直なおしのことだ。

ただ、出来できの悪わるい原型げんけいを焼やき直なおすのではなく、けっこう出来できのよかったシリーズを作つくり直なおすというのは、なかなか厄介やっかいな作業さぎょうだ。

つまりポーカーでいうなら、スリーカードを伸のばしてフルハウスを作つくるのではなく、スリーカードになりそうな手てを捨すて、あえてフラッシュを狙ねらう作戦さくせん。リスキーで、勇気ゆうきの求もとめられる仕事しごとだ。

だとすれば、サム・ライミに替かえてマーク・ウェブを監督かんとくに起用きようしたのは正解せいかいといえる。ウェブは「（500）日にちのサマー」でロマンティック・コメディを解体かいたいした。解体かいたいしつつ、新あたらしい抒情じょじょうと新あたらしい笑わらいを運はこび込こむことに成功せいこうした。ストレート・フラッシュとまでは行いかなかったものの、ローカードのフラッシュは構築こうちくした。今回こんかいの目的もくてきは、ひねったアクションと純情じゅんじょうな人々ひとびとの融合ゆうごうだ。さて、結果けっかは？

結論けつろんからいうと、私わたしは「アメイジング・スパイダーマン」を楽たのしんだ。ともに欠落けつらくを抱かかえた超人ちょうじん同士どうしの対決たいけつという話はなしの構造こうぞうに目新めあたらしさはないが、主演しゅえんのアンドリュー・ガーフィールドが繊細せんさいだ。しなやかで、神経質しんけいしつで、持もって生うまれた可愛かわいげがあり、ビョーキになる前まえのアンソニー・パーキンスを思おもわせる。しかも彼かれは、体技たいぎをきれいに決きめる。

監督かんとくのウェブも、「きれいな技わざ」を決きめるのが得意とくいな人ひとだ。サム・ライミのような特異とくい体質たいしつには恵めぐまれていないが、アクション・シーンの編集へんしゅう術じゅつやローアングルの前進ぜんしん移動いどう撮影さつえいや広大こうだいな空間くうかんのなかの足場あしば作づくりなどは、十分じゅうぶんに快楽かいらく的てきだ。となると、悔くやまれるのは悪役あくやくリザードの造型ぞうけいか。右腕うわんが半分はんぶんしかないコナーズ博士はかせに扮ふんしたリス・エバンスが巧たくみい役者やくしゃだけに、変身へんしんしてからの一本いっぽん調子ちょうしの暴あばれっぷりがやや憾（うら）みを遺のこす。ここでチェンジアップが投なげられていたら、私わたしはこの映画えいがをもっと楽たのしめたと思おもう。