ザ・マスター
劇場公開日:2013年3月22日
解説
ポール・トーマス・アンダーソンが「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」(2007)以来5年ぶりに手がけた監督作。第2次世界大戦直後のアメリカを舞台に、爆発的に信者を増やしていった新興宗教の教祖とその弟子となった男の関係を描き出す。第2次世界大戦が終結し、赴任先からアメリカへ戻ってきた帰還兵のフレディ・クエルは、戦地ではまったアルコール依存症から抜け出せず、社会生活に適応できずにいた。そんなある日、フレディは「ザ・コーズ」という宗教団体の指導者で、信者から「マスター」と呼ばれているランカスター・ドッドに出会う。ドッドは独自のメソッドで人々を悩みから解放し、フレディもドッドのカウンセリングで次第に心の平静を取り戻していく。ドッドは行き場のないフレディをかたわらに置き、2人の絆は深まっていくが……。主演はホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマン。2012年・第69回ベネチア国際映画祭で銀獅子(監督)賞、男優賞を受賞。
2012年製作/138分/R15+/アメリカ
原題または英題:The Master
配給:ファントム・フィルム
劇場公開日:2013年3月22日
スタッフ・キャスト
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受賞歴
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2024年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
これはほんと観て良かった。
このホアキン・フェニックスの演技を観てないのは勿体なかった。
今年2024年で観た作品で、これが1番になりそうだな。
最近はずっとRyan Gosling祭だったのに、急にホアキンの演技が観たくなって最近観てるけど...やあ......すごい。単純すぎる褒め言葉だけど、ほんとにすごいとシンプルに「すごい」だけ言っちゃうんだな。
約2時間、頭から最後までホアキン演技に夢中だった。
なんで?なんであんなに惹きつけられるのか?
なんだろな、集中してるからなんだろうな。自分のことに。
だから、見やすいんだろうな。見てしまうんだろうな。
媚びてない。自分のやるべきことに全身全霊を傾けてる姿、それを見てる側も集中させられる。
周りの何かによって、自分の集中がブレることはないというか。
当てはまるいい言葉が出てこないんだけど
何かに集中してる人を見れるって、人にいい効果をもたらしてる気がする。
スポーツを見てるような。集中しているアスリートを見てるような。
見てるこっちも一緒に集中できてる。
映画なら必ずしも集中できるわけではない。
中には集中が途切れる作品もあるわけで。
だからこういう、最初っから最後まで集中させてくれる作品に出会えるとすごく嬉しい。
ホアキンフェニックスがとにかく終始すごかった。
どうすごかったんだろう。
最初はココナッツ割ってるシーンから。あそこでもう惹きつけられてる。
どういう人間なんだ?と、登場した瞬間に興味がわいてる。
そこからずーーっと。ずーーーっとこの人間に興味が湧いてしまう。
めちゃくちゃ生きてる。フリじゃない。ホアキンフェニックスでもない。
このフレディという人間が生きてた。動いてた。
猟奇的であり、野犬のような荒々しさ獰猛さ。
従順さ、悲しみ、トラウマも持っている。ときにとても切ない顔をする。
笑ったり怒ったり泣いたり。
悪い、どうしようもないヤツのようで、なぜか放って置けない不思議な魅力もあって。
こんな人間をどうやって役作りしたんだ?できるんだ?なれるんだ?
この映画で鍵となるフレディの特性って
怒り悲しみトラウマ不安、いろんなネガティブなものを抱えているけど、弱っていく・無気力になっていくのではなく、フレディーの場合、生きる力、パワー、マグマみたいなものがすごくあることだ。
だから見てるとすっごいエナジー、生きてるエネルギーを感じる。
そういうところに、マスターは惹かれたのだろう。
だから彼をそばに置いていたのだろう。
どうしようもないとこがあるんだけど、彼フレディから感じるエネルギーをスルーすることはできなかったんだろう。
まるで獰猛な犬を辛抱強くしつけしているかのようだった。
手がやける。でも愛情がある。
この作品のあらすじ・説明文には「マスターの右腕までのぼりつめた」と書いてあったから、「有能で頭が切れる敏腕」みたいなイメージをしてたけど全然違った(笑)右腕、というか....舎弟、みたいな感じかも。
印象的なシーン、いっぱいあったなあ。
印象的すぎて笑ってしまったり。
なんかまだこんなに映画を見て新鮮に驚けたり、興味を惹きつけられたりできる作品があることが嬉しい。
・牢屋シーン
刑務所に連れてこられて引きづられてるところからもうすっごい始まってる。で牢屋に入った瞬間にベットのカバーか何かを食いちぎる。
そして便器を蹴り壊し、二段ベット?みたいなのの上段を下から背中でバンバンバンバン持ち上げる。ずーーっと。怒りクレイジー獰猛爆発。
あれすーごいエネルギーだった。見ちゃう。
・バイクシーン
マスターから次フレディやってみろと言われ乗る。
すごいスピードで走り続けるフレディ。
マスター心の中:すごいスピード出してんな、あいつやるなあ。,,,あれ、もしかしてあいつ...おい....ど、っこまで行くねん「フレディーーーー!!!」
のこの流れ、マスターのフレディー叫ぶところまでの流れが笑ってしまう。
おそらく視聴者みな、フレディがバイクに跨った瞬間から「おいおいフレディに乗せたらダメだって。絶対なんか起きるよ、知らないよ、やらかすよ」って思いがあるから、そうなるわな!で笑っちゃったと思う。
・ようこそフィラデルフィアへ
玄関で出迎えてきた人、あれ...ローラダーンじゃね?...声だけのシーン...喋ってる...この喋り方ぜったいローラダーンだ....ローラダーンだったらめっちゃこの作品合ってるわ!って胸高鳴った次の瞬間、ローラダーンがバーンと映ったからめっちゃニヤけた。最高だ配役。
ローラダーン主演ドラマ「ENLIGHTED」を思い出す。内容的にも。
・アリゾナ?で写真撮影
ピント合ってるのか?のシーン
3、2、1でシャッターを切る瞬間の、めっちゃ笑顔、すごい愛嬌ではにかむホアキンの姿、佇まい。数回巻き戻して見た。
・ラストの方、イギリスでマスターと対話
自由なんだ、自由気ままに生きていい。マスターの下につかなくていい。
マスターがいない人生を歩め。
過去生で一緒にパリで働いていた話。
そんな話をして、最後にマスターが歌う。
それを聞いて涙するフレディ。ここの一連の表情が、なんとも...素晴らしい。「人間」の味がしみ出てる感じ。人間の味がめちゃくちゃしてる。
もうほんとに、ストーリーということに触れる前に
この映画におけるホアキンフェニックスの演技を取り上げることに精一杯になってしまう。むっずかしい役だよほんと。複雑な役。演じ切ってるよ、すごいほんと。
マスター役を演じたフィリップ・シーモア・ホフマン、彼の演技も良かったなあ。
人と人との掛け合いのシーンを、ゆっくり静かに集中して見られる撮り方、演出の仕方は好きだったな。好みだった。
激しいところは激しく。味わうべきところはゆっくり味わわせてくれた。
p.s.
今作でのホアキン、細身だったなあ。身体仕上がってたなあ。顔もバッキバキ。無駄なものがなく、ホアキン作品の中でもキレキレなホアキンを見れた気がした。男前だった。男臭くて色気がめちゃくちゃあった。
シャツ、パンツスタイルもキマってた。
p.s.2
あのフレディが作ってたドリンク、一体何が入ってんの?笑
人間が飲めるものなの?笑
2023年8月26日
PCから投稿
この人の映画、去年のピザ屋と同様に、これが面白いのが通、的な評論家やマニアが喧々諤々やって嬉しがるタイプの作品が多いですね。
一日の仕事が終わって、さあ映画でも観ようか、って時に選んだら100人中95人は更に疲れが増し、20人は翌日有給扱いです。
戦争帰りの変わり者が新興宗教の教祖に出会って色々ある、って話ですが、その「色ある」部分の一つ一つがまるで意味不明、繋がりも必然性も理解できません。
レビューにキネ旬的な、いかにも的な論評が散見されますが、はー?
なんでそんな風に感じられるの?個人の自由だけど。
終わったときにこれほど解放感を感じる映画もめずらしい。尤もピザ屋もそうだったけど。
それなりのまとまったストーリーで、最後にちゃんと収束する作品を好む普通の人は観ない方がいいです。
2023年7月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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正直話はざっくりまとめると
戦争で狂犬のようになってしまった男が
うさんくさい新興宗教の開祖と知り合い、
何やかやでメンタルの傷がおちついて
独り立ちできるようになる、というもの。
てっきり破滅的な方向へ向かうのかと
身構えていたが、
予想外に落ち着いた。
それにしても鬼気迫るという表現がここまで
あてはまる人物もあまりいないと思う。
ホアキンのファンではあるが、正直
電車で隣に来てほしくない。怖い。
それと対峙して疑似父親のような関係に発展していく
相手、そして妻、の演技も
もはやそういう人なんだというようにしか見えず。
うすら寒い心地さえする。
見どころはその演技対決。
正直内容はそれほど面白いものではない。
2023年4月6日
Androidアプリから投稿
時折交錯しながら、男と男の、一人の人間と人間の、友人どうしの、教祖と仕える者の、あまり見たことのない形の「永遠の愛」を見せられたのかもしれない。ホアキン・フェニックスの顔芸がここでも光ってた★