孤独こどく

解説かいせつ

「花はなの舞妓まいこはん」の桜井さくらい義久よしひさがシナリオを執筆しっぴつ「花はなの舞妓まいこはん」の市村いちむら泰一やすいちが監督かんとくした青春せいしゅんもの。撮影さつえいもコンビの倉持くらもち友一ともかず。

1964年ねん製作せいさく／93分ふん／日本にっぽん
配給はいきゅう：松竹しょうちく
劇場げきじょう公開こうかい日び：1964年ねん8月がつ1日にち

ストーリー

伸一しんいちと浩二こうじは腹はらちがいの兄弟きょうだいだ。伸一しんいちはかつて、大学だいがくボクシングのチャンピオンで、今いまはアマチュアのチャンピオンを狙ねらっていた。一方いっぽう浩二こうじも、大学だいがくボクシングのチャンピオンを、とろうとしていた。兄弟きょうだいの生甲斐いきがいはボクシング以外いがいの何なにものでもなかった。が、そんな二人ふたりを穹子は激はげしく憎にくんでいた。穹子の恋人こいびと進しんは、以前いぜん大学だいがくのチャンピオンの座ざを伸一しんいちと争あらそい、執拗しつように打うちまくる伸一しんいちのストレートを顔面がんめんに受うけ、両りょう眼め失明しつめいの危険きけんにさらされていた。アマチュア選手権せんしゅけんの当日とうじつ、伸一しんいちは、たび重かさなる穹子の誘惑ゆうわくに体調たいちょうを狂くるわせ、マットに沈しずんだ。一方いっぽう浩二こうじは見事みごとに大学だいがくチャンピオンの座ざについた。穹子はさらに、浩二こうじにも誘惑ゆうわくの手てをのばした。そんなある日ひ、沖おきで泳およいでいた穹子が鮫さめに襲おそわれた。伸一しんいちは逃にげ、浩二こうじが穹子を助たすけた。そして浩二こうじは激はげしく伸一しんいちを糾弾きゅうだんし、二人ふたりは凄絶せいぜつな乱闘らんとうを始はじめた。しかし居合いあわせた、別荘べっそう番ばんの老人ろうじんと女中じょちゅうきぬ子こがこの争あらそいに割わって入はいって、ことなきを得えた。－－この別荘べっそう番ばんの老人ろうじんこそ、浩二こうじの母ははの昔むかしの恋人こいびとだったのだ。かつて浩二こうじの母ははは、この老人ろうじんを愛あいしながら伸一しんいちの父ちちに乱暴らんぼうされ、浩二こうじを残のこして、一人ひとり自殺じさつしたのだった－－老人ろうじんの告白こくはくに胸むねをえぐられた浩二こうじは邸やしきを出でる決意けついをした。穹子もまた浩二こうじと行くだりを共ともにすることを望のぞんだ。しかし病院びょういんに帰かえった穹子はそこで進すすむの眼めが恢復かいふくの余地よちのないことを知しった。穹子は、捨すてないでくれと、必死ひっしで哀願あいがんする進すすむを見みすてることは出来できなかった。穹子は進すすむを一緒いっしょに車くるまに乗のせ、浩二こうじの待まつ崖がけの上うえを走はしり抜ぬけると、そのまま、車くるまもろとも海うみへ沈しずんでいった。夏なつも終おわり兄弟きょうだいは各々おのおのに別わかれて、海鳴うみなりが追おいかけるようなこの町まちを後のちにするのだった。