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MONSTERZ モンスターズ インタビュー: 中田秀夫監督×藤原竜也「MONSTERZ」で構築した共犯関係 - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2014ねん5がつ30にち

  • 予告編よこくへん

MONSTERZ モンスターズ : インタビュー

2014ねん5がつ29にち更新こうしん
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中田なかた秀夫ひでお監督かんとく×藤原ふじわら竜也たつや「MONSTERZ」で構築こうちくした共犯きょうはん関係かんけい

みずかえらんでいるわけではない。“わるそうな”顔立かおだちをしているわけでもない。だが藤原ふじわら竜也たつやもとには“道徳どうとく”“はん社会しゃかい”といったキーワードでかたられる役柄やくがらのオファーが次々つぎつぎとどく。時代じだい要請ようせいなのか、たか演技えんぎりょくゆえの必然ひつぜんなのか。「理由りゆうぼくかないで」と藤原ふじわら苦笑くしょうする。「MONSTERZ」でえんじた「おとこ」という役柄やくがらも、そんな“アウトローの系譜けいふ”にくわわることになりそうだ。ただ中田なかた秀夫ひでお監督かんとくはこのやくについて「けっして単純たんじゅんな“悪役あくやく”ではない」と強調きょうちょう。そしてしずかなみをかべこうくわえる。「たった一人ひとり世界せかい背負せおってたたかうのがこんなに似合にあ俳優はいゆうさんもにいないでしょう?」。(取材しゅざいぶん写真しゃしん黒豆くろまめ直樹なおき

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視界しかいうつすべての人間にんげんのままにあやつ能力のうりょくったおとこと、その能力のうりょくをもってしても唯一ゆいいつあやつることができないおとこ2人ふたり運命うんめい交錯こうさくし、のこりをかけたたたかいがひろげられる。「デスノート」で死神しにがみのノートを武器ぶき世界せかいかみ君臨くんりんしようとしたつき(ライト)、「わらだて」で10おくえん賞金しょうきんをかけられた残虐ざんぎゃく殺人さつじんしゃ清丸きよまる、そしてほんさく藤原ふじわら社会しゃかいてきわくえ、ルールのそときるおとこ見事みごと体現たいげんし、ものきつける。

「ひとつひとつちが作品さくひんですし、それぞれ監督かんとくにいただいた役柄やくがらであり、えんじるうえまった(やくへの)アプローチがあるわけでもないですよ。ただ俳優はいゆうとして、えんじていてたのしいですね。今回こんかいひとあやつるというちからも、むずかしい部分ぶぶんもありましたけど、気持きもちよかったです(笑)。このおとこ孤独こどくつみ過去かこ背負せおい、唯一ゆいいつ空間くうかんめてしずかな世界せかいひたっているときだけ、やすらぎときをかんじるというところもすごくきでした」。

この「おとこ」は能力のうりょく使つかい、他人たにんかねうばって生活せいかつする犯罪はんざいしゃであることは事実じじつだが、一方いっぽうでその能力のうりょく途方とほうもないことをしようともしない。むしろ、自身じしん存在そんざいすらだれにもづかれないようにひっそりとらしている。だからこそ、能力のうりょくあやつれない“例外れいがい”と遭遇そうぐうしたとき、せいひつな世界せかいこわ存在そんざいとして嫌悪けんおし、しつようなまでにかれ抹殺まっさつしようとする。中田なかた監督かんとくう。

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「『ぬまできる。それがおれ人生じんせいだ』というセリフがあって、それはたりまえのことで、フランスで上映じょうえいしたさいおなじセリフを山田やまだくんがったときにわらいがきたんですが、藤原ふじわらくんのほう徹底てっていしたニヒリストとしてう。でも“あく”という言葉ことばではくくれない。どものころからものあつかいされ、『なにのためにおれまれてきたんだ?』と自分じぶん宿命しゅくめい内面ないめんてきにはくるおしくさけんでいる。自己じこ破滅はめつしたいけど、それさえもできずに矛盾むじゅんかかえ、世界せかいにくみながらきている。現実げんじつ世界せかいにそういう疎外そがいかんかんじているひとはいるだろうし、映画えいがはそういう人物じんぶつえがくものだとおもう」。

藤原ふじわらは、撮影さつえいを「監督かんとくきずにつづけてくれました。でしたね。世界せかい中田なかた秀夫ひでおにここまでらせた俳優はいゆうもいないとおもいます(笑)」とかえる。うまでもなく、ひとあやつるという能力のうりょく以上いじょう描写びょうしゃかすことができないし、おおくなるのは当然とうぜんだ。だがそれだけでなく、中田なかた監督かんとくはそこに前作ぜんさく「インシテミル 7日間にちかんのデス・ゲーム」とのちがいを見出みいだしていた。

「『インシテミル』では竜也たつやくんがさけぶシーンがおおかったでしょう? だから『今回こんかいさけばずにちからで』ということを撮影さつえいまえからっていました。やくかんしても、前回ぜんかい心情しんじょう背景はいけいについてすごくこまかく説明せつめいしたんですが、今回こんかいはミステリアスな存在そんざいだからこそ、このおとこかんしてもほとんど説明せつめいしていないんです。わずとも竜也たつやくんがってくれました。おとこがホテルで、うごきをめた物言ものいわぬ刑事けいじたちをまえに『おれはものじゃない』とかたるシーンはぼくもグッときましたが、ここは3テイクっていて2かいで『もうすこしだけ感情かんじょうして』、3かいで『さけんじゃおうか』とエスカレートさせてやってもらったんですが結局けっきょく使つかったのは切々せつせつしずかにかたった最初さいしょのテイク。やはり竜也たつやくんは感覚かんかくてきかっていたんです」。

そしてもうひとつ「インシテミル」とおおきくことなるのが、どうさく密室みっしつでの群像ぐんぞうげきだったのにたいし、ほんさく2人ふたりおとこ対決たいけつえがいているというてん藤原ふじわらえんじるおとこ能力のうりょく唯一ゆいいつかない田中たなかおわりいちやくのピースとしてくわわったのは、山田やまだ孝之たかゆき藤原ふじわら同年代どうねんだい実力じつりょくだが、意外いがいにも2人ふたり共演きょうえんはじめて。藤原ふじわらは、やくつうじて対峙たいじした山田やまだ印象いんしょうをこうかたる。

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「ものすごくストイックで、本番ほんばんへの感情かんじょうっていきほうはすごかったですね。いろんなやくをやって、いろんな監督かんとくあいされる理由りゆうがよくかりました。このタイミング、ガッチリとむことができるこの作品さくひん出合であえてよかったなとおもいます」。さらに中田なかた監督かんとくは、ここまでべてきた「このおとこという存在そんざいたんなるあくとしてとらえることはできない」もうひとつの理由りゆうとして、山田やまだえんじたおわりいち存在そんざい2人ふたり関係かんけいせいげる。

最初さいしょからぼくあたまなかにあったのはロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演きょうえんしたマイケル・マン監督かんとくの『ヒート』。デ・ニーロはだれころさない知的ちてき強盗ごうとうはんなんだけど、新参しんざんしゃ仲間なかまころしをしてしまい、そこから運命うんめいわっていく。パチーノはかれ刑事けいじ敏腕びんわんだけど、家庭かていをないがしろにしてやさぐれている。どっちがぜんでどっちがあくかというのをえたおとこ色気いろけ魅力みりょくがあって、それを竜也たつやくんと山田やまだくんでえがけたらとおもっていた。それから、これは完成かんせいした作品さくひんあらたにかんじたんだけど、おとこおわりいち様々さまざま方法ほうほうためしているんだよね。“出会であうべきではなかった2人ふたり”といういいかたもされるけど、おとこおわりいちに『なんでおまえだけおもどおりにならない!』とさけぶのをくと、2人ふたり純愛じゅんあい物語ものがたりさええてくる(笑)」。

ちなみに藤原ふじわら中田なかた監督かんとく撮影さつえいちゅう現実げんじつから逃避とうひするかのように「つぎなにこらないしずかな作品さくひんろう」(中田なかた監督かんとく)とかたっていたとか。「竜也たつやくんがあさきて、あさはんべて、会社かいしゃって、かえってきて、お風呂ふろはいって――今回こんかいもシャワーシーンはてくるけど、ここはしっかりとにして(笑)――あとはるだけという映画えいがりたいですね」(中田なかた監督かんとく)。「よろこんでやります。でも監督かんとく作品さくひんだと結局けっきょく湯船ゆぶねにつかっているとだんだん水面すいめん波立なみだってきて、排水溝はいすいこうくろかみからまって…ってなるんでしょ(笑)」(藤原ふじわら)。

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