攻殻機動隊こうかくきどうたい　新しん劇場げきじょう版ばん : 映画えいが評論ひょうろん・批評ひひょう

2015年ねん6月がつ16日にち更新こうしん

2015年ねん6月がつ20日はつかよりTOHOシネマズ新宿しんじゅくほかにてロードショー

電子でんしや光ひかりが駆かけ巡めぐる未来みらいは現実げんじつとなり、改あらためて人ひととは何なにかを問とう

原作げんさく発表はっぴょうから25年ねん、初はじめて映像えいぞう化かされ世界せかいを驚おどろかせてから20年ねん、攻殻機動隊こうかくきどうたいの示しめした斬新ざんしんな未来みらい像ぞうに世界せかいは大おおきく近ちかづき、かの有名ゆうめいなフレーズ「企業きぎょうのネットが星ほしを被おおい、電子でんしや光ひかりが駆かけ巡めぐっても国家こっかや民族みんぞくがなくなるほど情報じょうほう化かされてない近きん未来みらい」とはもはや現代げんだいのことと言いって差さし支つかえないかもしれない。

巨大きょだい企業きぎょうの決定けっていに右往左往うおうさおうし、サイバー犯罪はんざいのニュースは日常にちじょう茶飯事さはんじとなった2015年ねんは、攻おさむ殻からの世界せかいのように混沌こんとんとしている。

シリーズ最新さいしん作さくとなる本ほん作さくの物語ものがたりは国家こっかVS企業きぎょうの戦争せんそうの中なかで起おこる、総理そうり大臣だいじん爆殺ばくさつ事件じけんの真相しんそうを追おいかける草薙くさなぎたちの活躍かつやくを描えがく。背景はいけいには、軍事ぐんじ技術ぎじゅつとして発展はってんした義よし体からだと電脳でんのうの技術ぎじゅつの民営みんえい化かにより国家こっかの役割やくわりが縮小しゅくしょうしていき、企業きぎょうの力ちからが肥大ひだい化かしている状況じょうきょうがある。技術ぎじゅつ革新かくしんにより民間みんかん企業きぎょうは国家こっかと争あらそえるほどの力ちからをつけている。国家こっかと企業きぎょうどちらが将来しょうらい有望ゆうぼうか、草薙くさなぎの育そだての親おやともいうべきクルツはそんな問といを草薙くさなぎに投なげかけるが、AppleやGoogleの影響えいきょう力りょくが国境こっきょうを超こえて増大ぞうだいしている現代げんだいには重おもたい問といかけとして観客かんきゃくの耳みみには響ひびくだろう。

ソニーによって生うみ出だされた電子でんしペット「アイボ」がサポート終了しゅうりょうによる死しを迎むかえ、悲かなしむ飼かい主ぬしのニュースが話題わだいになったが、今日きょうでも企業きぎょうのサポートがペットの生死せいしを決きめてしまう。義ぎ体たいも企業きぎょうの定さだめる規格きかくによって、寿命じゅみょうが決きまる。義ぎ体たいと電脳でんのうの世界せかいではその規格きかくを握にぎることが覇権はけんとなるのだ。

人間にんげんとは何なにか、モノとの違ちがいは何なにかを問とうのが本ほんシリーズの魅力みりょく。「お前まえたちは私わたしのパーツだ」と部下ぶかにい放いはなつ草薙くさなぎは、そのパーツたちに「自分じぶんのゴーストに従したがえ」とも言いう。生身なまみの人間にんげんだろうが、自みずから思考しこうしなければモノと同おなじだ。ゴーストを持もち、考かんがえ、自立じりつして行動こうどうできるものをこそ人間にんげんと呼よぶにふさわしい。ならば、物理ぶつり的てき束縛そくばくのないデータの世界せかいでは、人間にんげんは人間にんげんとして存在そんざい可能かのうかをも本ほん作さくは問とう。それはそのまま原作げんさくや初代しょだい映画えいが版ばんの問といにもつながる。

現実げんじつに人工じんこう知能ちのうの時代じだいはすぐそこまで来きている。我々われわれはまもなく、草薙くさなぎたちのように、人間にんげんとは何なにかを真剣しんけんに考かんがえねばならなくなる。

25年ねん前まえはそんな問といをすること自体じたいが未来みらいへの憧憬どうけいだった。2015年ねん、それは今いまそこにある危機ききとなった。原作げんさくから引用いんようされる草薙くさなぎの台詞せりふ「未来みらいを創つくれ」は25年ねん前まえよりも更さらに切実せつじつに響ひびく。

（杉本すぎもと穂みのる高だか）