クリード　チャンプを継つぐ男おとこ

学がくもあり、モデルばりのスマートな主人公しゅじんこう。
ロッキーが書かいてくれたメニューをスマホで撮影さつえいして紙かみはロッキーに返かえす。。デジタルテクノロジーを駆使くしする現代げんだいっ子こ。
親父おやじのアポロとは違ちがうキャラクター設定せっていが「〇〇の子供こどもではなく、独立どくりつした個人こじん」を感かんじさせて良よかった。

他ほかにも
・ロッキーのテーマは1度どだけここぞの場面ばめんで！
・アポロがチラッとサブリミナル風ふうに映うつされたシーンでは(ここ一番いちばんのシーン)不覚ふかくにも泣なきそう！
・心しんを波立なみだたせるような悪者わるもの登場とうじょうしない。穏おだやかに見みていられる。あくまでスポーツ！

意外いがいにも良作りょうさくでした。
先入観せんにゅうかん持もたずにみなさんもどうぞ。

ポール・ダノ
イドリス・エルバ
マーク・ライランス
マイケル・シャノン
シルヴェスター・スタローン

第だい73回かいゴールデングローブ賞しょう助演じょえん男優だんゆう賞しょうノミネートの面々めんめんである。

もちろん、他たの作品さくひんを観みたわけでもないし、まして他たの役者やくしゃを蔑さげすむつもりもない。

だが、世間せけんが、そしてオレが、こう言いっている。

「今年ことしはシルヴェスター・スタローンが、ゴールデングローブ、そしてオスカーを手てにする」

「クリード　チャンプを継つぐ男おとこ」

本ほん作さくは、自分じぶんの抱かかえる「大おおきなモノ」に立たち向むかう若者わかものを手助てだすけをしながらも、その姿すがたに触発しょくはつされ、再度さいど自分じぶんとの戦たたかいに奮ふるい立たつかつての伝説でんせつの男おとこであり、かつ「隣となり近所きんじょにいるレストラン「エイドリアンズ」の気きのいい、ただの店長てんちょう」、その２人ふたりの男おとこの物語ものがたりだ。

本ほん作さくのロッキーの初はつ登場とうじょうシーンが印象深いんしょうぶかい。なにげなく普通ふつうに、営業えいぎょう終了しゅうりょうのホールにすっと顔かおを出だす。そう、何気なにげないことがとても印象深いんしょうぶかいのだ。あたかも、アドニスが父ちちの勇姿ゆうし、その本当ほんとうの姿すがたを初はじめて知しったときにおぼえた、自分じぶんの中なかにある大おおきな心しんのように。

アドニスは父ちちを否定ひていしているわけでもなく、血ちは争あらそえないことを良よく知しっている。そしてロッキーは、アポロを良よく知しっている。

それ故こ、ロッキーは、血ちを受うけ入いれ、超こえることが、アドニスの最もっとも険けわしい己おのれとの戦たたかいということを、「ボクシング」を通つうじて教おしえるのだ。七光ななひかりを揶揄やゆされていること自体じたいはアドニスには些細ささいなことだ。

自分じぶんを愛あいしてくれた人ひと。生うまれる前まえに死しんでしまったため、自分じぶんを愛あいすることが出来できなった父親ちちおや。彼かれらに、血ちを敬うやまい、己おのれを鍛きたえ上あげることで、愛あいを示しめす。それこそが、アドニスの戦たたかいなのだ。

それを分わかっているロッキーは技術ぎじゅつを教おしえるのではない、己おのれを超こえることを教おしえるのだ。

別べつにバカにしているわけではないが、「ロッキー３」でアポロは、虎とらの目めだ、とかしか言いわない。だが、あの映画えいがでは、それでよかったのだ。本ほん作さくについても、ロッキーはロッキーなりの、「アポロからの、己おのれを超こえること（Eye　of the Tiger)」の継承けいしょうなのだ。

俺おれたちはいつでも、いつになってもくじける。そんなとき、ロッキーに居いてほしい。でもロッキーはいつもそばにいる。俺おれたちが望のぞめば。そして、ロッキーもまた、くじける。そんなとき、まぶしいまでの生命せいめいの輝かがやきを感かんじたい。そんなとき、俺おれたちは輝かがやくことが出来できるか？

本ほん作さくで、ロッキーとアドニス、そしてアポロは、本当ほんとうの「血ちを超こえた」家族かぞくとなる。「贖罪しょくざい」という個人こじんの話はなしではない。

「家族かぞくになること　力ちからになること」

本ほん作さくは「ロッキー７」でもなければ、「ロッキー新しん章あきら」でもない。
もはやロッキーの物語ものがたりではない。俺おれたちの、若者わかものの、年老としおいた男おとこたちの「物語ものがたり」となったのだ。

監督かんとくライアン・クーグラーは、この企画きかくをスタローンに、とっくにロッキーを終おわらせたスタローンに提案ていあんしたという。スタローンはこの若わかき才能さいのうに、「ロッキー」を、彼かれの成長せいちょうのため、その「財産ざいさん」を与あたえた。

ライアン・クーグラーは、それにこたえるため、実験じっけん的てきな画がづくりや情熱じょうねつ的てきな演出えんしゅつを繰くり広ひろげる。

主演しゅえんのマイケル・Ｂ・ジョーダンは、１年間ねんかんのトレーニングを行おこない、あのファイトシーンを完成かんせいさせた。１試合しあいは２ラウンド丸々まるまる長ちょう回まわし。もう１試合しあいは入場にゅうじょうまでの長ちょう回まわし。すさまじいまでの興奮こうふんを覚おぼえる。そしてそばには、あの男おとこがいる。

これこそまさに、本ほん作さくが言いわんとしていることである。

これほどまでに、作つくり手しゅの思おもいが投影とうえいされ、具現ぐげん化かされた作品さくひんはそうお目めにかかることはない。

追記ついき
ここまでベタ褒ほめでいうのも野暮やぼなんだが、音楽おんがくだけは、バッタもの風ふうに聞きこえるあのスコアだけは止とめたほうがよかったと思おもう。

追記ついき２

「ロッキー４」「ランボー怒いかりの脱出だっしゅつ」あってこその、スタローンの大おおいなる「愛あいすべき」歴史れきしだ。

「ロッキー４」を黒くろ歴史れきしなんて思おもっている、第だい１作さく妄信もうしんで、ロッキーだけでスタローンを語かたろうなんざ、片腹痛かたはらいたいぜ。