リトル・ボーイ　小ちいさなボクと戦争せんそう

始はじまりは、おとぎ話ばなしチックで、どこかのどかな成長せいちょう物語ものがたりを思おもわせる展開てんかいです。

そもそも、少年しょうねんが生うまれつき発育はついくの悪わるいハンデの持もち主ぬしで、「リトル・ボーイ」と言いってからかわれることから物語ものがたりが始はじまっているので、どうしたってその逆転ぎゃくてんを期待きたいするじゃないですか。

なんとなく全体ぜんたいの色調しきちょうもクレヨン画がみたいに強つよめの発色はっしょくで、記念きねん撮影さつえいのシーンなんかモノクロで残のこっている写真しゃしんに比くらべ、みんな鮮あざやかな発色はっしょくの服ふくをまとっているというコントラストが意識いしき的てきに対比たいひされます。その時ときうつむいてしまう主人公しゅじんこうの男おとこの子この行動こうどうも含ふくめ、まるで歴史れきし上じょうの事実じじつであるかのような錯覚さっかくにおちいります。この演出えんしゅつは実じつに巧妙こうみょうに仕掛しかけられたトリックで、この全体ぜんたい写真しゃしんのシーンがあると無ないとでは、まったく違ちがったテイストの映画えいがになったことでしょう。

コミック・ブックの魔術まじゅつ師しにあこがれて、子供こども心しんに念力ねんりきで奇跡きせきを起おこそうと考かんがえるあたりは、この子こが成長せいちょうして、すごい人物じんぶつになるんだろうな。という成長せいちょう物語ものがたりを想像そうぞうしていました。

物語ものがたりが展開てんかいしだすのは、小ちいさな町まちに日系にっけい人じんの男おとこが越こしてきたあたりから。あからさまな差別さべつどころか、直接ちょくせつに銃口じゅうこうを向むけられて「この町まちを出でていけ」まで言いわれる扱あつかいです。少年しょうねんは神父しんぷの言いいつけを守まもってこの男おとこと親交しんこうを深ふかめていきますが、極きわめて冷静れいせいなこの日系にっけい人じんの行動こうどうに比くらべて、町まちの人ひとの態度たいどはやがて暴力ぼうりょくにまで発展はってんしていきます。よくこんな状況じょうきょうで生いきていけるなと、感心かんしんし、同情どうじょうしてしまいました。

歴史れきし上じょうの出来事できごとにのっとり、物語ものがたりは進すすむので、とうとう原爆げんばくが投下とうかされ、「リトル・ボーイ」というあだ名なにちなんで、町まちの人ひとから奇跡きせきの男おとこの子こみたいに扱あつかわれるのにはあきれましたけど、まあ、ていねいに伏線ふくせんを回収かいしゅうしているなと思おもいました。

この映画えいがが優すぐれているのは、それぞれの視点してんから物事ものごとを考かんがえられるように、どちらかのサイドに考かんがえが偏かたよっていないこと。とくに、日系にっけい人じんのシニカルな態度たいどは、ストレートに悲かなしみや喜よろこびを表現ひょうげんする少年しょうねんと対比たいひして、戦争せんそうのもたらす悲劇ひげき的てきな側面そくめんを浮うかび上あがらせています。特とくに、日本人にっぽんじんにとって、原爆げんばくが当時とうじのアメリカ人じんたちにどう評価ひょうかされたのかを知しるにはいいきっかけかも知しれません。

もちろん、物語ものがたりの核心かくしんはそこではなく、親子おやこ、家族かぞく、友人ゆうじん、コミュニティが、戦争せんそうを通つうじて変化へんかしていく様子ようすを上手じょうずに描えがき、少年しょうねんの視点してんを通つうじて語かたられたことです。同おなじ時期じきに日本にっぽんのアニメーション映画えいがで『この世界せかいの片隅かたすみに』が製作せいさくされたのは運命うんめい的てきな偶然ぐうぜんですね。

2作品さくひんとも、小ちいさな町まちの生活せいかつを通つうじて、戦争せんそうで変かわっていく街まちを描えがき、何なにかを失うしない、何なにかを手てに入いれる映画えいがです。そして、間接かんせつ的てきに原爆げんばくがかかわっています。日本にっぽん側がわから見みた『この世界せかいの片隅かたすみに』アメリカ側がわから描えがいた『リトル・ボーイ』。面白おもしろい対比たいひになっていると思おもいました。

小ちいさな少年しょうねんの心温こころあたたまるストーリー。日本人にっぽんじんである私わたしには、心中しんちゅうの複雑ふくざつな思おもいをするシーンもあったが、終おわりよければ全すべて良いしという事ことで

この、映画えいがの素晴すばらしさは、父ちちと子この両方りょうほう通行つうこうの揺ゆるぎない愛あい。子こを愛あいするとはこういうことだと嫌味いやみなしに直球ちょっきゅうに訴うったえてくる。プロローグでしっかりと伝つたわるからこその、戦争せんそうによる別わかれは、何なによりも戦争せんそうを無慈悲むじひなものと憎にくみたくなる。子役こやくの演技えんぎが圧倒的あっとうてきに素晴すばらしい。原爆げんばくとか日本人にっぽんじんが蔑さげすみを受うけるとか（でも、なぜあそこに日本人にっぽんじんが？とは思おもった）戦争せんそうには避さけて通とおれないお決きまり的てきな辛つらい展開てんかいもあったけど、ペッパーの揺ゆるぎない信念しんねん、表情ひょうじょうに圧倒あっとうされ、ひたすら彼かれの側がわに立たって応援おうえんしたい気持きもちでいっぱいだった。

まあ、原爆げんばく投下とうかを正当せいとう化かするような表現ひょうげんも多々たたあるけど、子供こどもと日系にっけい人じんの友情ゆうじょうはとても良よかった。いじめっ子こへの仕返しかえしや超ちょう能力のうりょくを信しんじる子供こどもならではの可愛かわいさも相あいまって、信しんじることの大切たいせつさや友情ゆうじょうの大切たいせつさを伝つたえるいい映画えいがだ