サバイバルファミリー : インタビュー

小日向おびなた文ぶん世よ＆葵あおいわかな、過酷かこくだった撮影さつえいを通つうじて深ふかめた“親子おやこの絆きずな”

「ウォーターボーイズ」「ハッピーフライト」の矢口やぐち史ふみ靖やすし監督かんとくの最新さいしん作さく「サバイバルファミリー」は、「もしも地球ちきゅうから電気でんきがなくなったら」をテーマに、都市とし機能きのうが麻痺まひした東京とうきょうから脱出だっしゅつした一家いっかの奮闘ふんとうをコミカルに描えがき出だすサバイバルドラマだ。本ほん作さくの主人公しゅじんこうでもある父親ちちおや・鈴木すずき義之よしゆきは、口先くちさきばかりで何なにもできないくせに態度たいどが偉えらそうなダメ男おとこ。そんな父親ちちおやを矢口やぐち監督かんとくは「サバイバルに向むいていない、日本一にっぽんいちダメなお父とうさんにしたかった」と語かたっていたが、その思おもいを「スウィングガールズ」「ハッピーフライト」などでタッグを組くんでいる小日向おびなたが絶妙ぜつみょうな演技えんぎで応こたえている。

「監督かんとくの中なかには、父親ちちおやはこういう人ひと、母親ははおやはこういう人ひとという、ハッキリとしたイメージがあるんです。だから、ある意味いみ楽らくでしたね。監督かんとくと話はなしをしていくうちに、絶対ぜったいにサバイバルに向むいていない人ひとなんだろうなと思おもいました。おまけにカツラですもん。本来ほんらい、カツラなんて第だい一いち稿こうにはなかったんですから。第だい二に稿こうを見みたら、カツラをパチンと外はずして置おいてからご飯はんを食たべると書かいてあって。あれはきっと人ひとの顔かおを見みて決きめたんでしょうね」と、小日向おびなたは笑わらいながら振ふり返かえる。

一方いっぽう、長女ちょうじょ役やくの葵あおいはオーディションで役やくを勝かち取とった。子こどもたちの配役はいやくについて矢口やぐち監督かんとくは「（長男ちょうなん役やくの泉澤いずみさわ祐希ゆきも葵あおいも）とてものびのびしていて。まだ癖くせもカラーもついていない。真まっ白しろな画用紙がようしのようだったのが決きめ手て」と語かたっている。今回こんかい、矢口やぐち作品さくひん初はつ参加さんかとなった葵あおいは、スマホを手放てばなせない、つけまつげ命いのちの女子高じょしこう生せい・鈴木すずき結衣ゆいを演えんじている

「もちろんすごい映画えいがに参加さんかさせてもらえたとは思おもっているんですが、とにかく本当ほんとうに過酷かこくな撮影さつえいだったので、そういったことよりもとにかく目めの前まえの撮影さつえいをこなすことで精せいいっぱいでした。撮影さつえいが終おわったのはおととしのことだったんですけど、あれから日ひにちが経たって。ようやく矢口やぐち監督かんとくの作品さくひんに出でられて良よかったなと実感じっかんするようになりました」。

水みずもない、食料しょくりょうもない極限きょくげんの生活せいかつ。そこに突如とつじょ現あらわれた100キロを超こえる豚ぶたを家族かぞく全員ぜんいんで追おいかけるカットは、豚ぶたの動うごきが予想よそうできないため朝あさから夕ゆうまで何なん度どもリテイクを重かさねた。しまいには豚ぶたに振ふり落おとされ、小日向おびなたがあばらを強打きょうだするひと幕まくも。しかしそれゆえに迫力はくりょくとコミカルさが同居どうきょした印象深いんしょうぶかいシーンとなった。そんな矢口やぐち監督かんとくの演出えんしゅつを「イメージがしっかりしているから妥協だきょうがないんですよ」と小日向おびなたは証言しょうげんする。

「本当ほんとうにしつこく撮とるからヘトヘトになりましたよ。でも監督かんとくがよろこんで、オッケーを出だしてくれるということは、きっと面白おもしろい絵えになっているんだろうなということが想像そうぞうできたんで。そういう信頼しんらい感かんはありました」

そしてその矢口やぐち監督かんとくのこだわりは葵あおいも感かんじていたという。

「トイレに入にゅうろうとしたら、水みずが流ながれていなくてゲーッとなるシーンがあったんですが、監督かんとくは『そうじゃない』『そうじゃない』と何なん度ども繰くり返かえしました。あそこは本当ほんとうにつらかったですね。監督かんとくのイメージがハッキリしているので、そこにハマるのは本当ほんとうに難むずかしかった」。

しかしその甲斐かいあって、小日向おびなたが「あそこすごかったよね。あの表情ひょうじょうでこの世界せかいが大変たいへんなことになっている、ということが想像そうぞうできるもんね」と感心かんしんするほどのシーンとなった。葵あおいも「監督かんとくはいっぱいしゃべる方ほうではないので、監督かんとくが発はっした言葉ことばから、監督かんとくが思おもう結衣ゆいちゃんと、わたしが思おもう結衣ゆいちゃんとをつなげるのがやっとという感かんじでした」と振ふり返かえる。

そして母親ははおや役やくは深津ふかづ絵里えり。小ちいさい頃ころからテレビや映画えいがで彼女かのじょを観みてきた葵あおいにとっては、小日向おびなた同様どうよう、尊敬そんけいすべき先輩せんぱいである。実際じっさいに会あうまで「どんな方ほうなんだろう」と非常ひじょうに緊張きんちょうしていたという。

「でも実際じっさいにお会あいしたら、小日向おびなたさんも深津ふかづさんもお二に人にんともすごく優やさしくて。わたしたちなんてまだ子こどもなのに、対等たいとうに話はなしを聞きいてくれた。わたしは高校生こうこうせいなので、テストの話はなしや課題かだいの話はなしとか。そんな他愛たあいもない話はなしや、好すきな食たべ物ものの話はなしとかもしましたね」。

もし突如とつじょ、電気でんきや水道すいどう、ガスの供給きょうきゅうがストップしたら？　単たんなる停電ていでんだと思おもっていたのに、ライフラインが復旧ふっきゅうする気配けはいが見みえない……。ロレックスやマセラティよりも、たった一本いっぽんの水みずの方ほうが価値かちがある世界せかい。そんな世界せかいについて葵あおいは「わたしは携帯けいたいがないとダメかもしれませんね」とポツリ。小日向おびなたも「携帯けいたいがなくなったら家族かぞくとも連絡れんらくがとれなくなるし。これは大変たいへんだろうね」。スイッチをひねるだけで、当あたり前まえのように快適かいてきな暮くらしを享受きょうじゅしている現代げんだい人じんには想像そうぞうを絶ぜっする世界せかいである。

豚ぶたを追おいかけ泥どろまみれになる、極寒ごっかんの川かわの中なかに入はいるなど、映画えいがの内容ないようのみならず、撮影さつえい現場げんばそのものもサバイバル体験たいけんだった。しかしそんな大変たいへんな時間じかんを共有きょうゆうすることで、家族かぞく4人にんの結束けっそくはどんどんと固かたくなっていった。

小日向おびなたが「やはり、サバイバルが大変たいへんになればなるほど、息子むすこ、娘むすめたちが迫真はくしんの演技えんぎを見みせた。本当ほんとうにリアリティが出でてきたんで、あれはすごく良よかったですね。お腹なかをすかせた時ときに肉にくにかぶりつくシーンがあったんですけど、あそこもすごく良よかった。身体しんたいを張はって演えんじさせられたのはしんどかったけど、それがいい具合ぐあいに表情ひょうじょうに出でてたし、家族かぞくもお互たがいにつらい思おもいをしているから、どんどんきずなが深ふかまったよね」と振ふり返かえれば、葵あおいも「ひとりでやるより、4人にんでやったほうが、みんなで頑張がんばってやろうという気持きもちになれた。豚ぶたをいっぱい追おいかけてヘトヘトになったときも4人にんなら笑わらえましたもんね」と力強ちからづよく付つけ加くわえた。