ろくでなしのレビュー・感想かんそう・評価ひょうか

馬鹿ばかで、無様ぶざまで、愛あいおしい。渋谷しぶやの街まちを舞台ぶたいに描えがく、ろくでなしたちの純愛じゅんあいドラマ。

人ひとを信しんじる事ことが出来できない現代げんだいの孤独こどくな女おんなと、生いきる目的もくてきも希望きぼうもなく、どうしようもなく日々ひびを過すごして、ただ死しぬのを待まつ主人公しゅじんこうのラブストーリー。

主人公しゅじんこうのキャラクターは、いまの人間にんげんが忘わすれかけた大切たいせつな何なにかを感かんじさせる人物じんぶつ像ぞうになっていて、渋川しぶかわ清彦きよひこ演えんじるヤクザも、孤独こどくな都会とかいの女おんなも、主人公しゅじんこうの不器用ぶきようだけど真まっ直すぐな生いき様ざまに影響えいきょうを受うける。

この人ひととならこの世界せかいから抜ぬけ出だせるかもしれない。何処どこか遠とおくに行いけるかもしれない。こんな自分じぶんでも、別べつの世界せかいで生いきていけるかもしれない。

結局けっきょく最後さいごは夢ゆめから覚さめたみたいになっていて、欲ほしかった棚たなも使つかわないまま、あたしって一体いったい何なにが欲ほしかったんだろう、みたいな。

あの世界せかいだからこそ、本当ほんとうに心しんの底そこから何なにかを求もとめていたのかも。ある意味いみファンタジーの世界せかいから覚さめたところでストーリーが終おわる。

人ひとがそれぞれに抱かかえている想おもいが昇華しょうかされるには、リアルな現実げんじつではなく、自分じぶんが求もとめている虚構きょこうの世界せかいにこそ、答こたえがあるのかもしれないと思おもわせるような話はなしかなと思おもいました。

映画えいがやドラマではいつも、ろくでなしな人間にんげんがお話はなしの筋すじを面白おもしろく描えがく役割やくわりを担になっていて、それを普通ふつうに生いきていける人ひとたちが観みて、色々いろいろと感かんじてドラマは完成かんせいするのかなあと。

こういう映画えいがをこれからも観みたいです。

全すべての登場とうじょう人物じんぶつの設定せっていがどこかから借かりてきたようなチープさ。
冒頭ぼうとうの主人公しゅじんこうのキャラや行動こうどうの方向ほうこう性せいを描えがくチャンスを無駄むだな歩あるきや食物しょくもつを貪むさぼる描写びょうしゃで浪費ろうひし、開始かいし1分ふんで雰囲気ふんいきだけ映画えいがということが予感よかんできる。
主人公しゅじんこうであるはずの男おとこの描写びょうしゃをおざなりに、ヒロインや別べつのヤクザの描写びょうしゃが長々ながながと続つづき、何なにを描えがきたい映画えいがなのかもわからず、もやもや。

主人公しゅじんこうがヒロインにひとめぼれする描写びょうしゃも、むだなクロスカッティング。表現ひょうげんが古ふるい、上うえに安やすい。
しかも、言葉ことばもろくに話はなさず、すぐ手てが出でる荒あらくれ者ものキャラが、ヒロインと出会であって豹変ひょうへん。急きゅうに童貞どうていかと思おもうほどシャイなキャラになる。
かと思おもいきや、ヤクザ同士どうしではキザなセリフを吐はく。極きわめつけは、ヒロインに「思おもったことは心しんに溜ため込こまない方ほうがいい」的てきなセンチメンタルなセリフをのたまう。キャラがブレすぎて、もはやギャグ。

最大さいだいの芝居しばい場じょうなんだろうが、主人公しゅじんこうとヒロインがケンカになるところでは、金かねのために体からだを売うろうとしたヒロインに対たいして、主人公しゅじんこうがずっと鼻はなをすすって泣なきながら説得せっとくするのだが、気持きもち悪わるくて見みていられない。

準じゅん主役しゅやく的てきなヤクザも、なぜ女子高じょしこう生せいと付つき合あっているのかも説得せっとく力りょくがまるでない上うえに、同級生どうきゅうせいから告白こくはくされた女子高じょしこう生せいに対たいして嫉妬しっとしたりする描写びょうしゃも考かんがえられない。大だいのヤクザが女子高じょしこう生せいにマジでキレる意味いみがわからない。この話はなしに出でてくる男おとこは幼稚ようちな面めんしか見みえない人間にんげんばかり。ろくでない人間にんげんを描えがくなら、ろくな面めんを描えがかずしてどうする。
終盤しゅうばん、準じゅん主役しゅやくヤクザが、女子高じょしこう生せいの顔かおを掴つかんで、しばらく無言むごんの後のち、
「お前まえってこんな顔がおしてたんだな」というセリフは爆笑ばくしょうもの。

ラストの主人公しゅじんこうが警官けいかんに囲かこまれる描写びょうしゃももはやため息いきしかでない。

物ものからPANして人物じんぶつになるカメラワーク、次つぎのシーンの音おとのズリあげ、いちいちがダサい。二に時じ間あいだサスペンスである。

演技えんぎ力りょくのある俳優はいゆうを全まったくいかしきれていない最悪さいあくの見本みほん。
お金かねと時間じかんを返かえしてほしい。

今こん作品さくひん監督かんとくの前作ぜんさくを観みていたので、あれ位いのハードコアさを期待きたいしていたのだが、一寸ちょっと温あたための燗かんといった感かんじだったような。
但ただし、注目ちゅうもくされている監督かんとくなのだろうか、今いま作さくは配役はいやくに有名ゆうめい俳優はいゆうをピックアップしてきている。それがモロ刃はの剣けんだというのは、有名ゆうめいすぎると、そのキャラで認識にんしきしてしまうのがかなりキツイ。例たとえば大和田獏おおわだばく。勿論もちろんベテラン俳優はいゆうなのだが、どうしてもゲスさはマイルド・・・　かなりの危あぶない性格せいかくのヤクザ組長くみちょうだが、多分たぶん、ダークナイトのところのジョーカー的てきなものをベースとしているのだがろうが、その狂気きょうきはどうしても大和田獏おおわだばくのキャラには合あわないような・・・　なんか演技えんぎさせられている感かんが否いなめなく、バラエティやクイズ番組ばんぐみの時ときのハシャギ様さまが頭あたまから離はなれない。『ろくでなし』感かんの演出えんしゅつが不足ふそくだったような気きがするのは、自分じぶんだけだろうか？
それ以外いがいにも、勿体もったいないと思おもったのは、チョイ役やくというか、カメオ出演しゅつえん的てきな谷原たにはら章介しょうすけ。折角せっかくなのだからもっと重要じゅうような役やくでもよかったのではないか？実際じっさい、チラシにはクレジットされていたが、同姓どうせい同名どうめいの役者やくしゃかと思おもってて、後あとでググったらやはり出演しゅつえんしていたみたい。サッパリ覚おぼえていない。画像がぞうもあったが、そんなシーンすら憶おぼえていない。
ストーリー内容ないようは、まぁまぁだとは思おもうが、ラストの金かねを奪うばいに行いく先さきに、パチンコの景品けいひん交換こうかん所しょというオチが解ほぐせない。折角せっかくキャッチコピーが、『今度こんどこそホントに、共犯きょうはんだな。』となっているのだから、その共犯きょうはんである相手あいてが持もっている残のこりの金かねを奪うばうということを考かんがえられなかったのだろうか？それ位い、主役しゅやくの二人ふたりはあまりバディを感かんじない距離きょり感かんをずっと保たもっている展開てんかいだったのだから、殺ころすことも躊躇ちゅうちょしないという雰囲気ふんいきというか伏線ふくせんであると感かんじたのでそう思おもった次第しだい。
多分たぶん、今こん作品さくひんでの見みどころは、渋川しぶかわ清彦きよひこだろう。あのチャラさをきちんと作品さくひんとして成立せいりつさせている演技えんぎはホントに貴重きちょうだ。決けっして替かえが利きかない唯一ゆいいつ無二むにの映画えいが俳優はいゆうだと思おもう。顔かおだけでいったらラティーノ&チカーノの芸人げいにんがいるが、演技えんぎ迄までは・・・あの濃こさをもっと作品さくひんに抽出ちゅうしゅつさせて欲ほしかったが、うーん、もう一人ひとりの主役しゅやくの方ほうも又また、配役はいやく的てきにどうだったかなぁと・・・
そういえば、新海しんかい監督かんとくの娘むすめさんも子役こやくででているようで、なんだかんだ言いってこの作品さくひん、有名人ゆうめいじんでているんだね。必要ひつようだったかどうかは別べつにして。