ハード・コア
劇場公開日:2018年11月23日
解説
山田孝之と佐藤健が兄弟役を演じ、作・狩撫麻礼、画・いましろたかしによる伝説的コミック「ハード・コア 平成地獄ブラザーズ」を実写映画化。山田が主演のほかに自らプロデュースも務め、「映画 山田孝之3D」などでも組んだ山下敦弘監督がメガホンをとる。あまりにも純粋で不器用なために世間になじめずに生きてきた男・権藤右近。群馬の山奥で怪しい活動家の埋蔵金堀りを手伝って日銭を稼ぐ彼にとって、心優しい仕事仲間・牛山だけが心を許せる相手だった。右近の弟でエリート商社マンの左近は、そんな2人の無為で自由な日々を歯がゆい気持ちで見守っている。ある日、右近と牛山は、牛山が暮らす廃工場で、古びた1体のロボットを見つける。その分野に詳しい左近が調べると、実は現代科学すらも凌駕する高性能なロボットであることが判明。彼らはロボットと不思議な友情を築いていく一方で、その能力を使って巨額の埋蔵金を密かに発見してしまう。個性派俳優・荒川良々が牛山役を演じる。
2018年製作/124分/R15+/日本
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2018年11月23日
スタッフ・キャスト
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2018年12月31日
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古い原作を現代に映画化したことで、ずいぶんと新たな意味合いが生まれたように感じる。極右団体に所属するその日暮らしの若者の鬱屈が社会全体に向けられていることで、右とか左とかに相手を分けて騒いでいる人たちすべてに対して「まがいものめ!」と唾棄しているかのような。もちろん山下監督がそういう政治性を押し出しているわけではないのだが、マイノリティの憂鬱みたいなものに怒りのエネルギーを加えることで、脱力しながら進む映画でありつつ、なにか突き刺さるようなメッセージ性が宿ったように思う。『トゥルー・ロマンス』でトニー・スコットが脚本を変更したラストにも似た、原作とは違うラストの展開には賛否があるだろうが、それもこのキャラクターたちへの愛情がほとばしった故ではなかったか。佐藤健のニヒルな演技もとてもいい。
2018年11月28日
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鑑賞方法:映画館
平成の奇書とはよく言ったものだ。そんな原作が平成の終わりにまさかの映画化を迎えるのも宿命と言うべきか。この特殊すぎる味わいを損なうことなく、社会の底辺でこだわりと生きにくさを持って堂々と這いつくばる男たちの相貌を色濃く浮き彫りにする。その点、さすが山下監督。深刻になりすぎず、かといってカルトな方向に行き過ぎることもなく、我々は淡々と積み重ねられていくシュールな展開に終始ニヤニヤ笑いを浮かべながら、この不可思議で切ない男たちとロボットの友情にじっくり心を寄せることができるのだ。本作の中では誰もが一笑に付してしまう嘘のような現実が思いがけない展開を見せる。しかもその背後に隠された逸話や理由についてはほぼ黙殺された(というより知る由も無い)状態。果たして話が前進しているのか後退しているのかわかったものでは無いが、その宙ぶらりんな状況できりもみする山田と荒川の妙演がクセになる。とことん珍味である。
2023年12月17日
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鑑賞方法:DVD/BD
山田孝之、佐藤健、荒川良々。好きな俳優が3人も出ていたら、そりゃあ観るでしょ!右翼の活動家が山奥で埋蔵金探し、見た目はポンコツな高性能ロボット、と設定もブッ飛んでいて、何が出てくるのか予想もつかないお楽しみ福袋感ある。
実際観ていて、これは愛の物語なのか?成長の物語なのか?SFなのか?サスペンスなのか?果たして自分は同じ映画を観ているのか?期待以上のブッ飛び加減はスリリングで、最後まで楽しめた。
で、考えるのである。「ハード・コア」というタイトルに込められた意味、いや意義を。
まずはフツーに「核心」かな?登場人物がそれぞれ持ち合わせている、譲れないもの。
特に右近は顕著で、欺瞞に満ちた世間に全く合わせられない。左近なんかは薄々感じてはいても、なんとか折り合いを見つけて上手くやろうとしていて、それなりに世間からはみ出ない範囲に収められる。でも右近はムリ。
もう一つ、「ハード・コア」とは「貧困層」でもある。最近流行りの「自己責任論」的には、右近は自業自得だが、牛山なんかはむしろ世間から強制的に「ハード・コア」であることを強いられる存在だ。
二つの「ハード・コア」が絡み合い、世間という不確かで気味の悪いものを拒み、拒まれ、なんとか世界のなかで居場所を掴み取ろうとする。
上手く世渡りしていた左近もまた、その違和感に後押しされるように、脱出への道を進むのだ。
それぞれがそれぞれのやり方で、現在構築されている「世間」というエクリチュールにNO!を突きつけ、各人が持ちうる最良の構成を求める哲学的な話である。
社会幻想としての「家族」を拒んだ右近が、ラストシーンで見せる笑顔が素晴らしい。
原作にはないラストだそうだが、脱構築主義の視点で観るとある意味完成されたラスト。
右近のしがらみをブッ壊す手伝いを、最先端テクノロジー搭載のロボオがしている構図も面白い。
そんなに難しく考えなくても、ブッ飛びSFコメディとしても楽しめる。荒川良々の演技を観ているだけでも充分満足の良作だ。
2022年5月1日
PCから投稿
キャストも知ってる人ばかりで話も面白かった。原作の漫画、映画化に至った経緯も気になる。