ハンターキラー　潜航せんこうせよ

今いまとなっては申もうし訳わけなく思おもうばかりだが、最初さいしょ私わたしはDVDになる前まえにちょっとばかし劇場げきじょう公開こうかいして箔はく付づけするタイプの映画えいがなのかと思おもっていた。が、完全かんぜんに間違まちがっていた。単刀直入たんとうちょくにゅうに面白おもしろかった。グイグイと引ひき込こまれた。「ロシアでクーデター」という題材だいざいと、エキスパートたちがそれぞれの場所ばしょで命いのちをスパークさせるという展開てんかいには、それこそトム・クランシー小説しょうせつのような懐なつかしさを覚おぼえる。が、それは決けっして悪わるい意味いみではない。

ゲイリー・オールドマンの出番でばんはごくわずかだが、ジェラルド・バトラーの艦長かんちょうぶりや、期きせずして乗艦じょうかんするロシア側がわの艦長かんちょうの矜持きょうじも際立きわだっていてこれまた良よい。また水面すいめん下かがどちらかというと「静せい」に陥おちいりやすいのに対たいし、地上ちじょう部隊ぶたいの「動どう」なる激戦げきせんぶりもなかなか魅みせる。さらに主演しゅえんクラスの俳優はいゆうの後うしろでうごめく、一いち兵卒へいそつらの演技えんぎも統率とうそつがとれていて見みていて頼たのもしい。ともあれ思おもいがけずこんな快かい作さくと出会であえたことに感謝かんしゃしたくなる一いち作さくだ。

ロシアでクーデターが勃発ぼっぱつし、拘束こうそくされた大統領だいとうりょうを、米べい海軍かいぐんが原潜げんせんとネイビーシールズの少数しょうすう部隊ぶたいの連携れんけいミッションで救出きゅうしゅつへ…というストーリー。核かく戦争せんそうの危機ききが高たかまったとはいえ、ロシア側がわから要請ようせいもないのに領内りょうないへ原潜げんせんと上陸じょうりく部隊ぶたいが勝手かってに侵入しんにゅうするのは無茶むちゃだが、まあ大目おおめに見みよう。それにしても、クーデターの首謀しゅぼう者しゃや兵士へいしらがボンクラなこと。米兵べいへいの上陸じょうりくを察知さっちしてからの捜索そうさくが超ちょう適当てきとうだし、大統領だいとうりょうを監禁かんきんした部屋へやに建物たてものの窓まどから侵入しんにゅうされたら、その窓側まどがわに兵へいを回まわして退路たいろをふさぐのが合理ごうり的てきな対処たいしょでは？

とはいえ、細こまかなところを気きにしなければ、潜水せんすい艦かんでの作戦さくせん行動こうどうをサスペンスフルに描えがいた骨太ほねぶとアクションとして十じゅう分ふん楽たのしめる。軍ぐんの協力きょうりょくにより船内せんないなども忠実ちゅうじつに再現さいげんされたとか。ジェラルド・バトラー主演しゅえんのアクション映画えいがは、なぜかド派手はでで大味おおあじでリアリティには少々しょうしょうかけるエンタメが多おおい。「オペラ座ざの怪人かいじん」の頃ころは、こんな方向ほうこうに進すすむとは思おもいもよらなかったが。