(Translated by https://www.hiragana.jp/)
人間失格 太宰治と3人の女たち インタビュー: 蜷川実花がこだわり小栗旬が体現した、愛に全力注いだ男女の生きざま - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2019ねん9がつ13にち

  • 予告編よこくへん

人間にんげん失格しっかく 太宰だざいおさむと3にんおんなたち : インタビュー

2019ねん9がつ9にち更新こうしん

蜷川にながわ実花みかがこだわり小栗ささぐりしゅん体現たいげんした、あい全力ぜんりょくそそいだ男女だんじょきざま

画像1

太宰だざいおさむ本人ほんにん物語ものがたりつくりたい」と7ねん歳月さいげつをかけてオリジナル脚本きゃくほんいどんだ蜷川にながわ実花みか監督かんとく。そして「このやく出来できるのはこのひとしかいない」という監督かんとくあついラブコールに、いちなやみながらも「ワクワクした」と完璧かんぺきなハマりやくとして太宰だざいおさむえんじた小栗おぐりしゅん日本人にっぽんじんならだれもが文豪ぶんごう太宰だざい代表だいひょうさくにして遺作いさくとなった「人間にんげん失格しっかく」は自伝じでんてき作品さくひんわれているが、じつ本人ほんにん人生じんせいのほうがよりドラマチックだった!? という着眼ちゃくがんてんからまれた映画えいが人間にんげん失格しっかく 太宰だざいおさむと3にんおんなたち」を、蜷川にながわ実花みか監督かんとく小栗おぐりしゅんかたる。(取材しゅざいぶん新谷しんたにさとうつ写真しゃしん間庭まにわひろしもと

蜷川にながわ監督かんとく小栗おぐりしゅんじつはガッツリとタッグをむのは今回こんかいはつとなる。企画きかく開発かいはつちゅう比較的ひかくてきはや段階だんかいで、蜷川にながわ監督かんとく脳裏のうりには“太宰だざいおさむ小栗おぐりしゅん”という構図こうず自然しぜんかび、づけば「小栗おぐりくん以外いがいおもいつかなくて、小栗おぐりくんじゃなきゃ無理むりだなって、ことわられたらどうしようっておもいながら脚本きゃくほん開発かいはつしていました」とかえる。なぜ、小栗ささぐりだったのか──。

かげかたとかでえば、小栗おぐりくんじゃないひとにおねがいしてもおかしくないやくだとおもいますが、太宰だざいおさむって、絶大ぜつだい人気にんきほこるスター作家さっかでありながら、文壇ぶんだんからは正当せいとう評価ひょうかされなかったひと。スター=トップをはしっているひとにしかえない景色けしきがあるはずだとおもっていて……、これまで写真しゃしんとして節目ふしめ節目ふしめ小栗おぐりくんを撮影さつえいしてきたこともありますが、かれがものすごいきおいでトップへとがっていく姿すがた映像えいぞうちち芝居しばいていて。そういう意味いみでも、これはもう小栗おぐりくんしかいないとおもったんです」

画像2

実際じっさい撮影さつえい現場げんば小栗ささぐり圧倒的あっとうてき魅力みりょくかんじたとかす。

おとことして格好かっこういいのは周知しゅうちのことですが、ひととしての包容ほうようりょくやリーダーシップ、座長ざちょうとしてそこにいるたたずまいに、わたしふくめてみんながたすけてもらいました。女性じょせいはもちろん、現場げんばわか役者やくしゃたちが小栗ささぐりしゅん崇拝すうはいする、その仕方しかた尋常じんじょうじゃないというか。スタッフからの評判ひょうばんもいいし、とにかく人間にんげんりょく素晴すばらしかった。まるで昭和しょうわのスターみたいで、これはみんな夢中むちゅうになるわ! っておもいましたね。圧倒的あっとうてき存在そんざいかんでした」

蜷川にながわ監督かんとく言葉ことばに「ありがたいですね」とれながらも、太宰だざいおさむえんじることは役者やくしゃとして「たのしい半分はんぶん、しんどい半分はんぶんでした」という言葉ことばえらぶ。一筋縄ひとすじなわではかないやくだった。

実在じつざいした人物じんぶつですし、しかも近代きんだいなので(情死じょうししてから71ねん)、役者やくしゃとしてはすごくなや部分ぶぶんではあるんです。でも、実花みかさんからほぼほぼ決定けってい稿こう脚本きゃくほんませてもらったら、ものすご面白おもしろくて。これはまよわずやるべきだとおもいつつも、えんじるのは大変たいへんだよなあというのが正直しょうじき気持きもちで……」

画像3

最終さいしゅうてき小栗ささぐりしんうごかしたのは、蜷川にながわ監督かんとくが7ねんかけてつくげた脚本きゃくほん面白おもしろさだった。

自分じぶんとおしてこの文豪ぶんごうを(映画えいがのなかに)すことが出来できるのだろうか、自分じぶんがこの人生じんせいきることは出来できるのだろうかとなやみましたが、こんな面白おもしろ脚本きゃくほんない役者やくしゃってどうなんだっておもいましたし、どうしてこの内容ないようがこんなにもエンタテインメントになるんだろうって、本当ほんとう面白おもしろ脚本きゃくほんでワクワクしたんです。ダメなんだけどきらいになれないキャラクターがそこにいて、そのひときた時間じかん想像そうぞうしながらんでいくと、よくこんなふうにまとめたなあって感心かんしんしてしまった。ほんと、めちゃくちゃ(な人生じんせい)ですけどね」

「めちゃくちゃ」という言葉ことばには愛情あいじょうめられている。えんじるぜん太宰だざいおさむたいする印象いんしょうはどうわったのだろうか。

じつは、えんじるまえまでは太宰だざいおさむたいするイメージをそもそもっていなくて、でも共感きょうかんできることはたくさんありました。世間せけん一般いっぱんてきには、自殺じさつ未遂みすいかえした文豪ぶんごうというイメージですよね、きっと。けれど実際じっさいは、のうとしているけれど、きることに執着しゅうちゃくしていたひとだった。そのえがかたがすごく面白おもしろいとおもった」。蜷川にながわ監督かんとく付言ふげんする。「いまよりもちか時代じだいで、“きる”をこうとしたひとであることは調しらべてかったことです。トラブルをこしたいわけではなく、欲望よくぼうのままにきたらトラブルがきてしまうひとで、そのことに関心かんしんでいられたらいいけれど、かんじてしまうから余計よけいにややこしくなる、自分じぶんくことすらせばめてしまう……、そんな人間にんげんらしいところも太宰だざいおさむ魅力みりょくです」

画像4

その“トラブル”というのはうまでもない、太宰だざい女性じょせいたちとの恋愛れんあいだ。身重みおもつまどもがいながらもこいうわさえず、おおくの女性じょせいあいい、自殺じさつ未遂みすいかえす。この映画えいがでは、「ヴィヨンのつま」のモデルとされる正妻せいさい美知子みちこ太宰だざい愛人あいじんにして弟子でし、「斜陽しゃよう」のモデルとされる静子しずこ愛人あいじん最後さいごおんな富栄とみえ――。太宰だざいかかわる3にんおんなたちのがわから太宰だざい人生じんせいえがいているのだが、それこそが蜷川にながわ監督かんとく独自どくじのアプローチ。3にんかぎとなる女性じょせい宮沢みやざわりえ、沢尻さわじりエリカ、二階堂にかいどうふみという豪華ごうか女優じょゆうじんえんじている。

太宰だざいがダメであるほど女性じょせいがたくましくかがやいてえる、その対比たいひ面白おもしろく、クスクスわらえるようなコメディ要素ようそがあるのもこの映画えいが魅力みりょくだ。しかしながら、もともとおもいテーマをいかにしてエンタテインメントにするのかが、蜷川にながわ監督かんとくにとって「さくらん」「ヘルタースケルター」「Diner ダイナー」につづく4ほん課題かだいとなった。大切たいせつにしたのは「いまきるわたしたちからても共感きょうかんできること」を物語ものがたりしのばせること。

「たとえば、太宰だざい静子しずこあさいちゃいちゃするシーンは、こちらがていられないほどのいちゃいちゃですが(笑)、だれ人生じんせいにもいちはああいう調子ちょうしのいいときはあるとおもうんですよね。ほかにもラブシーンでうと、太宰だざいっかっているとき美知子みちこさんのめたかおとか、富栄とみえい自分じぶん下着したぎいでまたくシーンとか、男女だんじょひとおも気持きもちって時代じだいわってもわることはなくて、いまきるわたしたちと地続じつづきだとおもうんです。映画えいがでは極端きょくたんなキャラクターになっていますが、だれにもおもたるような感情かんじょうこまかくつくっています。ひとにとっての自分じぶんたちの物語ものがたりになっていったらいいですね」

画像5

俳優はいゆうとして3にん女優じょゆうたちと、太宰だざいとして3にん女性じょせいたちときあった小栗ささぐりはどんな感情かんじょうったのか。それを「てきわない」という言葉ことば表現ひょうげんする。

えんじながらさんしゃさんようにすごい瞬間しゅんかんはたくさんありました。ただ、てきわないという意味いみでは、太宰だざいにとって(正妻せいさいの)美知子みちこさんにはひとつもてきわないので、宮沢みやざわりえさんからもいいものをいただいているなあとかんじていました。富栄とみえいやくの(二階堂にかいどう)ふみちゃんは愛情あいじょうをもって修治しゅうじさん(太宰だざいおさむ本名ほんみょう)とてくれたし、せい子役こやく沢尻さわじりエリカさんは撮影さつえい、ほんとにたのしかったー! とって現場げんばからかえっていったので、たのしんでもらえたというのはうれしかった。そしてなによりも、出来上できあがった映画えいがかんじたのは、太宰だざいのいないところでの女性じょせいじんつよさでした」

小栗ささぐり圧倒あっとうされたという「女性じょせいつよさ」は、蜷川にながわ監督かんとくがこだわったひとつだ。3にんおんなたちが太宰だざいるときとそれ以外いがいのときと、あまりにキャラがわることにたいして演出えんしゅつ(スタッフ)から「そんなにキャラをえていいんですか? ってかれたりもしましたが、いやいや、きじゃないおとこまえでは女性じょせいおおかれすくなかれこうだからって(笑)」。そのギャップもたのしんでほしいとう。そんなふうに蜷川にながわ監督かんとく演出えんしゅつが、感情かんじょう丁寧ていねいにリアルにつむぐものだったからこそ太宰だざいおさむがたまらなく魅力みりょくてきうつるのだろう。

こんなにもひとあいすることに全力ぜんりょくおとこおんなきざまをうらやましいとさえおもってしまう──「人間にんげん失格しっかく 太宰だざいおさむと3にんおんなたち」は、あいせい真正面ましょうめんからえがいたエンタテインメントだ。

人間にんげん失格しっかく 太宰だざいおさむと3にんおんなたち」の作品さくひんトップへ