決算けっさん！忠臣蔵ちゅうしんぐら

中村なかむら義洋よしひろ監督かんとくが脚本きゃくほんも兼かねているが、綿密めんみつに取材しゅざいを重かさね、原作げんさくを紐解ひもとき、理論りろん武装ぶそうも出来できている興味深きょうみぶかい作品さくひん。中村なかむら監督かんとくは“脚本きゃくほん力りょく”を併あわせ持もつベテランだが、プロデュースの池田いけだ史ふみ嗣とともに、「こう来きたか！」と膝ひざを打うちたくなる構成こうせいを練ねってきた。ビックリするほどの豪華ごうかキャストの力ちからも合あわさり、討うち入いりをしない忠臣蔵ちゅうしんぐら映画えいがではあるが非常ひじょうに有意義ゆういぎな時間じかんが過すごせる逸品いっぴん。

年としの瀬せに第だい九きゅうと忠臣蔵ちゅうしんぐら、という日本にっぽんの風物詩ふうぶつしは昭和しょうわの時代じだいに確立かくりつしたのだろうか。ともあれ、お茶ちゃの間あいだのテレビで流ながれる時代じだい劇げきのドラマや映画えいがを中心ちゅうしんに、赤穂あこう浪士ろうしらによる雪ゆきの中なかの吉良きら邸てい討うち入いりを眺ながめては、押おし迫せまった暮くれをしみじみ思おもうのが定番ていばんの過すごし方かたではなかったか。

本ほん作さくの大胆だいたんな挑戦ちょうせんは、大抵たいていの人ひとが忠臣蔵ちゅうしんぐらに期待きたいする二に大だいハイライト、浅野内匠頭あさのたくみのかみの刃傷にんじょう事件じけんと赤穂あこう浪士ろうしの討うち入いりをほぼ割愛かつあいしたこと。大石おおいし内蔵助くらのすけが遺のこした勘定かんじょう書しょを分析ぶんせきした新書しんしょを原作げんさくに、脚本きゃくほんも兼かねた中村なかむら義洋よしひろ監督かんとくは往年おうねんの時代じだい劇げきファンが物足ものたりなく思おもうのを承知しょうちの上うえで、元もと藩士はんしたちの仇かたき討うちまでの日々ひびを費用ひようのやり繰くりという切きり口くちで描えがく喜劇きげき映画えいがを目指めざしたのだろう。吉本興業よしもとこうぎょうが制作せいさくに参画さんかくし、お笑わらい芸人げいにんが大挙たいきょ出演しゅつえんしているのも集客しゅうきゃくに貢献こうけんしそうだ。松竹しょうちくが先導せんどうする新しん感覚かんかくの時代じだい劇映画げきえいがの流ながれに沿そう一本いっぽんだが、個人こじん的てきには同おなじ中村なかむら監督かんとく作さくの「殿しんがり、利息りそくでござる！」のほうが楽たのしめた。