エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ
劇場公開日:2019年9月20日
解説
生まれたときからウェブサイトやSNSが存在する“ジェネレーションZ世代”のティーンたちのリアルな葛藤や恋、家族との関係を描き、全米で評判を集めた青春ドラマ。中学校生活最後の1週間を迎えたケイラは、“クラスで最も無口な子”に選ばれてしまう。待ち受ける高校生活に不安を抱える彼女は、SNSを駆使して不器用な自分を変えようとするが、なかなか上手くいかない。高校生活が始まる前に、憧れの男の子や人気者の女の子たちに近付こうと奮闘するケイラだったが……。「怪盗グルーのミニオン危機一発」で主要キャラクター・アグネスの声を務めたエルシー・フィッシャーが主演を務め、第76回ゴールデングローブ賞の主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)にノミネートされた。YouTuber出身という異色の経歴を持つ人気コメディアンで、「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」などで俳優としても活躍するボー・バーナムが自身の経験をもとに脚本を執筆し、メガホンをとった。
2018年製作/93分/G/アメリカ
原題:Eighth Grade
配給:トランスフォーマー
劇場公開日:2019年9月20日
スタッフ・キャスト
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受賞歴
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2019年9月30日
PCから投稿
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インタビュー記事で、本作の監督がジョン・ヒューズの青春映画がピンとこないと言っているのを読んだ。目からうろこが落ちた気がした。というのも、ジョン・ヒューズが生んだ青春学園映画を、すっかりタイムレスなジャンルのスタンダードだと思い込んでいたからだ。
この映画の主人公も、周りに溶け込めず、他人と関わる勇気がない思春期の女の子という、青春映画で繰り返し描かれてきた主人公像を描いているが、明らかに違うのは、自分自身の価値を見つける物語ではない、ということだと思う。
多くの青春映画だと、あれやこれやがありまして、主人公が自分の夢や本当にやりたいことを見つける、というのが大半のパターン。しかしこの娘には何もない。少なくとも今のところは。ユーチューバー活動も、クリエイティブな欲求からではなく、単に似たことをやっているユーチューバーの受け売りで、知性はあっても、独創性があるわけではない。
しかしそれがなんだというのだ。映画の主人公に選ばれるのは、光る才能を持った人間でないといけないのか? いや、そんなアンチテーゼというより、本作は、本当にフラットに、現代の青春の現実を描いているだけではないのか。年配者の凝り固まった先入観を、ガツンガツンとぶち壊してくれるような映画だ。
2019年9月29日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
生まれたときからWEBやSNSが存在する世代を"ジェネレーションZ"と呼ぶらしい。実態を隠したままの自分を広く発信できる彼らだから、現実と虚構の間で悩むこともないのかと思いきや、人はそう簡単でもないことがよく分かる。この映画は、中学最後の年をそんな風に悩みながら暮らすヒロイン、ケイラが、少しだけ自己を肯定し、一歩前進するまでを描いて、内面の成長がどれだけ価値があるかを伝えてくれる。人からどう見えるではなく、自分は自分をどう見ているのか?これは、別にケイラに限った問題ではない。誰にとっても、永遠の命題なのだ。そんな劇的には描きづらい些細な成長のプロセスをカメラが掬い取った本作は、青春映画というジャンルを大胆にアップデートした野心作。身も氷るようなスクールカーストの恐怖、不器用だが温かいシングルファーザーの眼差し、等々、細部の描写にも並外れたセンスを感じる。
2019年9月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
今やリアルな日常生活を描こうとすれば、ネットやSNSのやり取りを盛り込むことを避けては通れない。その点、本作は現代社会の最先端をゆく意欲作と見ることができるが、一方で、昔も今も変わらぬ思春期特有の心の揺れ動きをヴィヴィッドに活写し、清々しいほど青春映画の文法にのっとった作品とも言えるだろう。
YouTubeを使って動画配信するも、視聴者はわずか一桁。それはもはや「誰かが見ている」というよりは「自分に向けて語りかけている」と表現した方が適切だろう。まだ何者でもない彼女の中では「理想」と「現実」が激しく乖離している。その状況に焦り、絶望的になる場面もあるだろう。だがこの映画が伝えるのは、リアルな視聴者数ではなく、ふと顔を上げたところにあるもっと大事な視線であり、想いであり、温もりだったする。それはあまりに当たり前の”気づき”ではあるものの、なぜだかこみ上げてくる涙を抑えることができなかった。
2024年5月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD