おいしい家族
劇場公開日:2019年9月20日
解説
映画監督のほか小説家としても活躍する新鋭ふくだももこ監督が、かつて自身が手がけた短編映画「父の結婚」を長編化。妻を亡くした父親が再婚するまでの親子の日々を描いた原作短編映画から、舞台を離島に移し、エピソードやキャラクターを追加して家族の絆とそれに向き合う主人公の心境をより深く描き出した。銀座のコスメショップで働く橙花は、母の三回忌に実家のある離島へ帰るが、そこでなぜか父・青治が母の服を着て生活している姿を目撃する。驚く娘を意に介さず、青治は「この人と家族になる」と居候の男性・和生を紹介する。テレビドラマ版「この世界の片隅に」やauのCMなどで注目を集める松本穂香が主人公の橙花に扮し、長編映画で初主演を飾った。父・青治役は原作短編映画でも同じ役どころを演じた板尾創路、青治のパートナーでお調子者の居候・和生を「在日ファンク」のボーカルで個性派俳優としても活躍する浜野謙太が演じる。
2019年製作/95分/G/日本
配給:日活
劇場公開日:2019年9月20日
スタッフ・キャスト
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2019年9月23日
iPhoneアプリから投稿
どこまでも続く海や空のように、どこまでも気持ちのよい映画。
たまたま見た予告編に、とにかくびっくりした。ワンピースをさらりと着こなした松尾創路さん。お父さんがお母さんになる?!一体どんなバタバタが繰り広げられるのか…と思いながら本編を観た。
ところが。慌てふためくのは主人公・橙花だけで、本人はもちろん、家族も職場(父・青治は学校の校長先生)も、うるさ方の定番・親戚さえも、お母さんになった彼をあっさりと受け入れている。スカート姿で校門に立って爽やかに生徒にあいさつし、法事も黒のワンピース。周りの受け止めようで、どんなことも至極当たり前になるのだなあ…と、こちらもじわじわと解き放たれ、橙花と一緒に、島の生活に浸っていく。
そんな中、日々の生活に居心地悪さを抱えている存在が明らかになる。青治宅の居候・和生の連れ子ダリアのクラスメート、瀧。瀧の葛藤は、青治や和生、ダリアのものとは違うし、橙花のとも少し違う。けれども、それぞれに色々あるよね…ということを、本作は、鮮やかに、かわいく、さりげなく伝えてくれる。どこまでも、黒い感情はなく、やさしさやあたたかさがいっぱい。それが少しも嘘くさくない。そこがすごい、と今改めて思う。(ちなみに、一緒に観た3歳は途中で眠りこけ、8歳は「お腹すいたー」とつぶやいた。映画の世界をごく当たり前のものと受け入れられる子どもでよかったなーと思い、これからもそうあってほしいと願った。)
と、あれこれ、設定や筋書きについて書き連ねたが、映画の持ち味を生かした表現の豊かさにもふれておきたい。テレビドラマでは、ここまで説得力ある物語にはならなかっただろう。唯一無二の世界に引き込む、カラフルでリズミカルな画面切替と分割、音楽と一体化した物語の運び。私と上の子のお気に入りは、画面を横いっぱいに使った、真夜中のでんぐり返し。至福のラスト、結婚式に重なるところがニクい。もう一つ、ニヤリとさせられた「おまけ」のチョイスは、子には?だったらしく…コーヒーが飲める歳までお預けか。
悩める十代になった頃、2人にまたこの映画を観てほしいと思う。
2019年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
20代のふくだももこ監督はとても才能豊かな人だと思う。この映画の豊かな詩情とユーモアがそれを証明している。人間関係に対する感性が自由で新しい。父は母が亡くなった後、女装をするようになる。しかし、父にトランスジェンダー願望はない。男性と再婚するが、同性者というわけでもない。異性愛、同性愛、女装癖、トランスジェンダー、どこにも属さないような浮遊感のある存在として父が描かれている。そんな父は役割のとしての妻を引き受けている。妻や主婦という概念をジェンダーでなく役割と捉え直しているのが面白い。LGBTという言葉が定着したが、定着したことによってそこには新しい固定観念が生まれた。クィアは元々性的少数者を指す言葉だが、概念的には「規範から外れる」という意味合いだったのではないか。その意味で本作は新しい規範からもクィア的に立ち振舞い、自由であろうとしているように感じられた。これからが楽しみな監督だ。
2019年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
板尾創路が同じ父親役を演じたふくだももこ監督の短編「父の結婚」が、商業映画の製作体制を得て日活配給で実現したのが本作。元の短編も配信サイトで視聴したが、板尾は本作と変わらぬ役作りで中性感を醸し出し、ソニンのふてくされた雰囲気もいい。冨永昌敬監督作で撮影を多数務めた月永雄太が、流れるようなカメラワークで作品の洗練に貢献している。
さて、長編化にあたり大筋は変わらないが、舞台を離島に変更したのが大きなポイント。現実の常識や偏見とはかけ離れた、多様性を優しく受け入れる理想のコミュニティーにぴったりの、美しい海に囲まれたロケーションが活きた。モトーラ世理奈と三河悠冴が演じる若者2人のエピソードも新たに追加され、2人に関わることで主人公の心情の変化に説得力が増した。原作の魅力の肝をきちんと残しつつ、追加した要素でテーマをより効果的に伝える。長編化の理想的な成功例だと感じた。
2023年4月11日
iPhoneアプリから投稿
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主人公の女性は、結婚生活が上手くいかないで悩んでいた。
夫婦というのは、これであるという理想の中で自分が現実というものに向き合ってみるとお互いに違うという事が明確に現れるからそれに対して避けていたのかなと感じた。
そんな中、母の3回忌という事でそれまでほとんど帰る事の無かった実家に帰省する事になる。
そこでは、なぜか父親が母親の格好をしていて、しかも連れ子の男性と結婚をすると言いだす。
そんなカオス的な状況に飲み込めないでいる。
板尾創路さんが演じる母親(父親)がシュールであり、なんとも言えない温かさをかんじました。
なぜ、そんな格好をして母親になると決めたのか?
なぜ、子連れの男性と結婚する事になったのか?
物語が進むにつれてそういう事か分かってスッキリした気持ちになれました。
誰かのなりたいものに憧れを抱いて苦しんでいてもつらいとけども、
この物語の中で描かれているような人達の中でいる事が出来れば、幸せかもしれない。
現実は、そんな簡単ものでは無いけど、
どこにもない。どこかそんな家族が実際にいたら面白いなと思いました。
どの役者さんの演技もとても素晴らしく良かったです。