エンテベ空港の7日間
劇場公開日:2019年10月4日
解説
「エンテベの勝利」「特攻サンダーボルト作戦」「サンダーボルト救出作戦」とこれまでに3度映画化されたハイジャック事件を、「エリート・スクワッド」でベルリン映画祭金熊賞を受賞したジョゼ・パジーリャ監督がハイジャック犯目線の要素や新事実などを盛り込んで描いた政治群像劇。1976年、イスラエル・テルアビブ発パリ行きのエールフランス機が乗っ取られるハイジャック事件が発生した。500万ドルと50人以上の親パレスチナ過激派の解放を要求する犯人に、多数の国民を人質にとられたイスラエル首相は交渉の道を探りながらも態度を保留する。犯人との交渉に反対の意向を示す国防大臣は、士官らとともに秘密裏に人質奪還計画を進めていくが……。「ラッシュ プライドと友情」のダニエル・ブリュール、「ゴーン・ガール」のロザムンド・パイクのほか、エディ・マーサン、リオル・アシュケナージらが脇を固める。
2018年製作/107分/G/イギリス・アメリカ合作
原題:7 Days in Entebbe
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2019年10月4日
スタッフ・キャスト
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2019年9月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
序盤から天井を突き破るようなボルテージに度肝を抜かれた。まずもって作品の随所にイスラエルの現代舞踏を効果的に盛り込んでみせたところが面白い。一見、ミスマッチにも思える技だが、徐々にその抽象的な表現性が、世界の中で孤立する国家、そして集団の中における個人を様々な形で投影していることに気づかされる。
なおかつ、このハイジャック事件を、犯行メンバー、機内乗務員、イスラエル政府、特殊部隊といった様々な視点から多角的に描き、それぞれの抱える葛藤を「これでもか」というほど炙り出してみせたところがなんとも圧巻。主演のダニエル・ブリュールとロザムンド・パイクの心の揺れ具合も見せ場がたっぷりだ。
監督のジョゼ・パジーリャは、『エリート・スクワッド』を始め、臨場感みなぎるアクションやサスペンスにおいて事件の最前線にいるようなダイナミズムを感じさせる逸材。やはり彼の作品にハズレなし。見て損はない秀作である。
2024年5月5日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD
本作のハイジャック犯のような確信犯の多くは、同じ方向を見ていたとしても個人の理想や熱量に違いが生じるものだ。行動が行き過ぎればい過ぎるほど個人の間のわずかだった差は広がり始める。
つまり、同じ出来事に遭遇しても考えていることが同じにはならないということだ。
そして本作は、同じことを考えないということを広げ、ハイジャック犯、イスラエル政府、現地に赴く兵士、の三つの視点で描いた。
同じ「ハイジャック事件」に関わった人々であるが、見ているところは全く違うのだ。
ハイジャック犯は、自分たちの思想、理想、そればかり考えて、自分を含めた目の前の人間を見ていなかった。
イスラエル政府は、国際政治的なイスラエルの立場しか考えていない。その政府の中にあっても個人の政治闘争に利用することしか考えていない。彼らも結局、人間は見ていないのだ。
最後に作戦に参加する兵士は、自分と恋人のことだけだ。彼はある意味で単なる仕事であるともいえるわけで、恋人のことしか考えないことは普通といえば普通だ。しかし、彼は本当に彼女のことを見ていたのだろうか。
多くの登場人物たちが自分の都合しか考えていない中で、舞台に上がる兵士の恋人に観客全てが注目するエンディングは印象的だ。
彼女が最も見てほしいと思っている兵士はその場にいない。
実在の事件を元にしたこの物語で、本当に見なければいけなかったところはどこなのだろうか。しっかり見定めないといけない。
これは、どんな事柄についても同じだろう。本質を冷静に見つけ出すことが大事なんだ。
2022年2月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD
個人評価:4.0
成功を収めたというサンダーボルト救出作戦を犯人側から描く。どちらの側にもい分と正義があり、葛藤しながら物語は進む。この物語に雄一ないのは対話。最後にポツリと呟く台詞が心に残る。
コンテンポラリーの舞台と、このハイジャック事件を比喩した演出。これが素晴らしく秀逸で、作戦開始と舞台の開演を同時に描く。これは鳥肌ものだった。
イスラエル建国まで、ユダヤ人が祖国を失い約2000年。終わらない争いの一つのエピーソード。
この世界にもアルミンがいれば、、。
2021年7月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
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悲劇的な史実と映画というエンタテイメント性の融合を試みた作品。サブストーリーで進む女性ダンサーの葛藤とダンスの躍動感を、本筋の物語の主要人物の心の動きに合わせて表現しようとしているのはすごく考えられていてわかるのだけれど、その2つのバランスが完全に合わさっていないような(個人的な見解です)。ほのピンクなベージュではなくて、マーブル的な感じで赤と白が残っているオーロラソースのような、完全に混ざり切っていない感じ。表現としてすごい難しいところにチャレンジしている感じ。