エンテベ空港えんてべくうこうの7日間にちかんのレビュー・感想かんそう・評価ひょうか

悲劇ひげき的てきな史実しじつと映画えいがというエンタテイメント性せいの融合ゆうごうを試こころみた作品さくひん。サブストーリーで進すすむ女性じょせいダンサーの葛藤かっとうとダンスの躍動やくどう感かんを、本筋ほんすじの物語ものがたりの主要しゅよう人物じんぶつの心しんの動うごきに合あわせて表現ひょうげんしようとしているのはすごく考かんがえられていてわかるのだけれど、その２ふたつのバランスが完全かんぜんに合あわさっていないような（個人こじん的てきな見解けんかいです）。ほのピンクなベージュではなくて、マーブル的てきな感かんじで赤あかと白しろが残のこっているオーロラソースのような、完全かんぜんに混まざり切きっていない感かんじ。表現ひょうげんとしてすごい難むずかしいところにチャレンジしている感かんじ。

パレスチナ、イスラエル和平わへい交渉こうしょうは行おこなわれていないというのが監督かんとくの意図いと。ハイジャク犯はんをモンスターとして描えがいておらず、人質ひとじちの命いのちは守まもる、恋人こいびとを想おもうなど、普通ふつうの人間にんげんとして描えがいているのも意図いとするところ。しかし、あまりにもこの史実しじつに残のこる人質ひとじち救出きゅうしゅつ作戦さくせんを淡々たんたんと描えがいているため、淡白たんぱくだった。

映画えいが「エンテベ空港えんてべくうこうの7日間にちかん」(ジョゼ・パジーリャ監督かんとく)から。
何なん度ども映画えいが化かされたハイジャック事件じけんなのだろうが、
私わたしにはどうもピンととこないまま、事件じけんが解決かいけつしてしまった。
どうして「イスラエル」がこうも標的ひょうてきにされるのか、
その理由りゆうが知しりたくて、ヒントを探さがしているのだが、
ちょっとだけ、見みつかった気きがする。
「(イスラエルは)ナチズムを受うけ継つぐ国くにだ」
こう洗脳せんのうされた革命かくめい家かたちの、イスラエル憎にくしが増長ぞうちょうされ、
戦闘せんとうモードに入はいるのかもしれない。
それにしても、毎回まいかい感かんじるのは、ハイジャックをしてまで、
達成たっせいしたいことなのか、ということ。
こればかりは、平和へいわな日本人にっぽんじんの私わたしたちには、
たぶん理解りかいできないし、上うわっ面つらだけかじったところで、
その精神せいしん的てきなことまでは、腑ふに落おちないに違ちがいない。
今いまも現実げんじつに世界せかいのあちこちで紛争ふんそうが起おきているけれど、
申もうし訳わけない・・やっばり理解りかいできない。
ただ「3度ど映画えいが化かされたハイジャック事件じけん」って、
世界せかいの人々ひとびとを魅了みりょうする何なにかがあるんだろうなぁ。

バットシェバ舞踊団ぶようだん「エハッド・ミ・ヨデア」というダンスで始はじまる本ほん篇へん。「俺おれ、間違まちがったシアターに入はいっちゃった？」なんて、一瞬いっしゅん不安ふあんになりましたが、「あぁ、この訳わけわからん具合ぐあいがイスラエル映画えいがだわ」なんて一人ひとりで納得なっとく。でも、これ、アメリカと英国えいこくの合作がっさくですからw
このコンテンポラリー・ダンスは「イスラエルとパレスチナが互たがいに傷きずつけ合あっていること」の比喩ひゆ的てき表現ひょうげんであるそうな。ごめんなさい、解説かいせつされても、やっぱりよく判わからない....

1970年代ねんだいはマルクス・レーニン主義しゅぎの中なかの、極左きょくさ過激かげき派はによるテロやハイジャック「も」繰くり返かえされた時代じだい。この1976年ねんのハイジャック犯はんが要求ようきゅうした解放かいほう者しゃリストの中なかには、1972年ねんにテルアビブ空港くうこうでチェコスロバキアのチェスカー・ズブロヨフカ国営こくえい会社かいしゃで開発かいはつされたアサルトライフル、Vz 58を乱射らんしゃし26人にんを殺害さつがいした「日本にっぽん赤軍せきぐん」の岡本おかもと公こう三さんの名前なまえをあったとされています。つまりは、私わたしたち日本人にっぽんじんにとっても、全まったく縁えんの無ない話はなしでは無ないってこと。

1972年ねん5月がつ、ベルギーのブリュッセル発はつ、テルアビブ行いきのボーイング707を4人にんのテロリストがハイジャック。イスラエル政府せいふに逮捕たいほされている仲間なかま317人にんの解放かいほうを要求ようきゅうしましたが、イスラエルはこれを拒否きょひ。ハイジャック犯はんを制圧せいあつし93人にんの人質ひとじちの解放かいほう（乗客じょうきゃく1人にんが銃撃じゅうげき戦せんで死亡しぼう）に成功せいこうした履歴りれきが、「エンテベ」の背景はいけいにあります。

奇襲きしゅう作戦さくせんの代名詞だいめいしとも言いえる「サンダーボルト作戦さくせん」の場面ばめんには、コンテンポラリー・ダンスの公演こうえんが重かさねられます。が、ダンスを称たたえる観衆かんしゅうの拍手はくしゅとサンダーボルト作戦さくせんの成功せいこうが重かさなる所ところで、ちょっと気分きぶん複雑ふくざつ。

リアルなサンダーボルト作戦さくせんでは、102人にんの乗員じょういん・乗客じょうきゃくが救出きゅうしゅつされ、3人にんの人質ひとじちが、突入とつにゅう部隊ぶたいの誤あやま射しゃによって命いのちを落おとしています。かなり後のちに、突入とつにゅう部隊ぶたいが叫さけんだ「伏ふせろ」の言葉ことばがヘブライ語ごであったため、これを理解りかいできなかった者ものの行動こうどうが遅おくれ、誤あやま射さされたとの証言しょうげんがありましたが、映画えいがの中なかでは描写びょうしゃされていません。映画えいがの中なかでは、ドイツの過激かげき派は組織そしきRZのメンバーが「伏ふせろ」と叫さけんでいました。また、テロリスト制圧せいあつ後ごも、イスラエルの部隊ぶたいはウガンダ軍ぐんと交戦こうせんを続つづけていますが、そこも描えがかれていませんでした。

言いって良よいかなぁ。

確たしかに、一般人いっぱんじんを巻まき込こんだテロはダメです。悪あくです。いかなる理由りゆうがあろうとも。でもね。パレスチナ問題もんだいはパレスチナ問題もんだいなのであって。このサンダーボルト作戦さくせんが、さもイスラエルの勝利しょうり、正義せいぎの勝利しょうりと言いわんばかりの演出えんしゅつには、ちょっとだけ違和感いわかんを感かんじました。あ。RZメンバーには同情どうじょう無用むようですけどね。

この日ひは、プライベート・ウォーとエンテベのハシゴ。ロザムンド・パイクの連れん荘そう。今年ことし、パイク5本ほん目めです。「社会しゃかい性せいのあるテーマでアクティブな女性じょせい役やくのパイク」のイメージが固定こてい化かしてしまいそうでｗ

ちなみに、どうでも良よいけど一応いちおう突つっ込こんどくと、アミン大統領だいとうりょう車しゃはメルセデス・ベンツ600のリムジン。Eクラスじゃないから....

史実しじつに基もとづいた作品さくひんのため、面白おもしろい面白おもしろくないというより、知識ちしきを養やしなうような作品さくひんとして鑑賞かんしょう。

作品さくひんを通とおして総そうじて思おもったのはテロリスト側がわにも迷まよいがあったのかな。テロリストとして徹てっし切きれてなかったところが彼かれらの描えがいていた通とおりにはいかなかったのではないか。

まぁどんな理由りゆうであれテロリスト、テロ行為こういを許ゆるすことはできないため、作品さくひん内ないでは罪つみなきものの死しを最小限さいしょうげんで描えがかれていたところは気分きぶんは悪わるくない。史実しじつである以上いじょう罪つみなきものの死しはあまりみたくないものだ。

ただ上記じょうきにも書かいた通とおりテロリストがテロリストとして徹てっしてきれてないが故こ、人質ひとじちに絶対ぜったい的てきな恐怖きょうふを与あたえ切きれてないため作品さくひん内ないでもあまり緊張きんちょう感かんがなくみえた。
人質ひとじちに騙だまされるわ、反論はんろんされるわ、子供こどもたちは普通ふつうに遊あそんでたりとあまり死しの恐怖きょうふが作品さくひんから感かんじられなかった。
そのため鑑賞かんしょうする側がわとしても良よくも悪わるくも、死者ししゃは出でないのかなという安心あんしん感かんが途中とちゅうから芽生めばえて観みてしまった。

それから作品さくひん絡がらみで一ひとつ理解りかいができなかったのがダンスシーン。あれはなにを意味いみして表現ひょうげんしてるのか、僕ぼくの未熟みじゅくな創造そうぞう力りょくでは創造そうぞうが追おいつかなかった。あのシーンを深ふかく考かんがえてしまうと本編ほんぺんへの集中しゅうちゅうが若干じゃっかん切きれてしまった。

　-Don't try and break the undercarriage.
　-If you do, we'll die together.
　Don't worry.
　I'll do a kiss landing.

はっきり言いって、意味いみが分わからない。単純たんじゅんな映画えいがなのだが、ところどころに散見さんけんする。まず第だい一いちに、オープニングロールが終おわるや否いなや何なにかを表あらわしているのだろけれど、一体全体いったいぜんたいこの踊おどりは何なにだ？神かみ智学ちがく(スピリチュアリティ)を唱となえる日本にっぽんでも同おなじような人間にんげんがいるが、エドガーケイシーの言葉ことば"あらゆる物事ものごとは理由りゆうがあって起おこる"からするとこれも何なにかの意味いみがあるのか？　人ひととして意味いみを分わからないほうがこの映画えいがにはいいかもしれない。ユダヤ人じんの幻想げんそう的てき踊おどり.........
第だい二にに、乗客じょうきゃくのフランス人じんは、フランス語ふらんすごをアメリカ人じんはアメリカ語ごをそして、ユダヤ人じんはヘブライ語ごをパレスチナ人じんはアラビア語ごを話はなしているのにイスラエルの首相しゅしょうを含ふくめ軍人ぐんじん、政府せいふ関係かんけい者しゃ、すべてがヘブライ語ごでなく、変へんな発音はつおんの英語えいご(ユダヤ人じんが話はなすとしたら？)を話はなしている。
この映画えいがが中途半端ちゅうとはんぱな作つくり方かたがわかるもので、冒頭ぼうとうに“この映画えいがは、事実じじつから発想はっそうを得えているが、会話かいわや出来事できごとなどは、ドラマ性せいを持もたせるために虚構きょこうがある”なんだこれは、い訳いわけか？だから中途半端ちゅうとはんぱなエセドキュメンタリー風ふうな作つくりで時折ときおり、実写じっしゃの映像えいぞうもブッコンでいるのか？

　I'm not a Nazi ‼

イスラエル政府せいふ内ないでも強硬きょうこう派は・国防こくぼう相しょうで後のちの首相しゅしょうのシモン・ペレスと首相しゅしょうで後のちに暗殺あんさつされる穏健おんけん派はというか優柔不断ゆうじゅうふだんというか、イツハク・ラビンの対立たいりつとかドイツの過激かげき派はの男女だんじょの間あいだでも理想りそうが食くい違ちがう部分ぶぶんは見みるものがあるが......

　Thunderbolt is a go.

この映画えいが、批評ひひょう家かからも視聴しちょう者しゃからも支持しじを得えていないということは、自おのずとわかるもので、アメリカの日刊にっかん紙しSan Francisco Chronicleのコメント「映画えいが製作せいさく者しゃに自信じしんを与あたえなさい。だって彼かれらは、今いままで誰だれもしなかったことをやり遂とげたのだから、だだ彼かれらがわからないでいるのは、事実じじつにはある理由りゆうがあるということを......つまりそれを知しらないことのほうが恐おそろしい。」世界せかい規模きぼで買かえる週刊しゅうかん誌し、またウェブサイトのLittle White Liesは、「ハイジャックそのもののようなものだけれども、すべて何なににもなかったように感かんじるのは仕方しかたがない。」
ところで、重箱じゅうばこの隅すみをつつくようだが、茶色ちゃいろのベンツを黒くろく塗ぬり替かえるのに刷毛はけでは、必かならずムラが出来できるのにピッカピカに仕上しあがっている。この美術びじゅつ担当たんとうは何なにをしている？
ドイツ人じんテロリストの一人ひとり、ロザムンド・パイクは流暢りゅうちょうにドイツ語どいつごを話はなしているのは、彼女かのじょの幼おさない時ときの経験けいけんからきていて、そのたぐいまれな才能さいのうが、活いかされている。

　-Congratulations on your success.Prime Minister.
　...................
　-And we should be proud of that.
　But if we cannot negotiate, Shimon,
　this war will never end.

ユダヤ人じんの身代金みのしろきんが約やく5億おく円えん、この映画えいがは“Congratulations”とはいかず、身代金みのしろきんの額がくにも届とどかないある意味いみ、A box-office bombとなっている。