ナイブズ・アウト　名めい探偵たんていと刃はの館かんの秘密ひみつ

Knives Out is a falsetto apology from Johnson for Star Wars 8. It’s an elaborate demonstration of how Johnson operates in the grey zone of acceptability in big wig production check signings. Rian likes to put an elephant in the room and spank it when everybody is pretending it’s not there. It ends up being more heavy as satire than quality, but really, modern directors have been too focused the latter.

ライアン・ジョンソンは、ハードボイルドミステリーを学園がくえんものに持もち込こんだ『ブリック』という名作めいさくを撮とった人ひとなので、どんなジョンソンの近作きんさくよりも楽たのしみにしていたが、いい意味いみで想像そうぞうを裏切うらぎる内容ないようだった。監督かんとく本人ほんにんも公言こうげんしているが、あからさまにアガサ・クリスティーのミステリーを、もっと言いうならアガサ・クリスティー映画えいがへのリスペクトが前面ぜんめんに押おし出だされている。平ひらたく言いうなら、豪華ごうかキャストで、人ひとは死しぬけれど悲壮ひそう感かんはあまりなく、推理すいりで難事件なんじけんを解決かいけつするというより、ドタバタ芝居しばいのアンサンブルを楽たのしむ、ライトなエンターテインメントである。「ジャンル映画えいが」というものは時代じだいとともに変化へんか変貌へんぼうしていくものだが、あまり遠とおくに行いってしまうと、原点げんてん回帰かいき的てきな揺ゆり戻もどしが起おきる。久ひさしくこういうタッチのミステリーを観みていなかった（ケネス・ブラナーの『オリエント急行きゅうこう殺人さつじん事件じけん』はあったが）気きがするので、懐なつかしさと新鮮しんせんさが入はいり混まじった楽たのしさがあった。これくらいのシリアス加減かげんの映画えいがはたまに観みたい。いや、ちょくちょく観みたい。

世よの中なかにはデビュー時じからすでに天賦てんぷの才能さいのうを備そなえた人ひとがいる。ライアン・ジョンソンに代表だいひょうされるその語かたり手てたちは、映画えいがのスケールの大小だいしょうを問とわず、その土俵どひょうサイズにあったジャストな語かたり口くちを観客かんきゃくに提示ていじすることが可能かのうだ。そこが巧たくみい。その点てん、今回こんかいのクリスティ風ふうの推理すいり劇げきはデビュー作さく『brick』を彷彿ほうふつする世界せかい観かんの作つくり込こみと、名優めいゆう陣じんを贅沢ぜいたくに配はいした采配さいはいが絶妙ぜつみょうな黒光くろびかりを放はなつ。そして相変あいかわらずの語かたり口くちやビジュアルが堂々どうどうとしていて、観客かんきゃくをとことん翻弄ほんろうさせつつも、ジョンソン自身じしんの軸じくやプロットは一貫いっかんして全まったくぶれていない。

恐おそらく本人ほんにんも、どうすればこのジャンルに新あらたな一手いってで切きり込こめるのか隙すきなく研究けんきゅうしてから臨のぞんだはずだ。クレイグ演えんじるキレ者しゃかそれともただのポンコツなのかわからぬ迷探偵たんていなどそのまさに賜物たまものだろう。セリフの多おおさ、展開てんかいのてんこ盛もり感かんもあり、一度いちど見みただけでは見落みおとす描写びょうしゃも多おおい。二に度ど、三さん度どと繰くり返かえして味あじわいたい逸品いっぴんだ。