花束はなたばみたいな恋こいをした

別わかれるために出逢であうという、そんなよくある恋愛れんあい模様もようを見みたような気きがしました。凄すごい映画えいがをガッツリ見みてやる、というより気軽きがるによくあるドラマを見みながら、のんびり過すごすには良よいかと思おもいます。ただ、あの閉店へいてんした老ろう夫婦ふうふのパン屋やさんがどうなったのか。それとも、閉店へいてんしなければどうなっていたか。その行ゆく末すえが判わからないままにしておくことで、二人ふたりに結末けつまつを決きめさせたような、そんな気きがします。下手へたに、パン屋やさんの老ろう夫婦ふうふと再開さいかいして励はげまされるというような、そんなエピソードがあったりしたら、そのエピソードに縛しばられてしまう、二人ふたりの自由じゆう意志いしが損そこなわれてしまったのでは、と思おもうのですが、如何いかでしょうか。（追記ついき）後ごから思おもい付ついたのですが、生花せいかの花束はなたばって華はなやかだけど、いずれは枯かれてしまうんですよね。そういう意味いみを示唆しさしていたのでしょうか。だとすると、少すこしシビアな映画えいがだったのですね。

　学生がくせいから社会しゃかい人じんになる環境かんきょうの変化へんかの中なかで、ありがちな恋こいがありがちな経緯けいいで色褪いろあせてゆくさまを描写びょうしゃした映画えいが。
　自分じぶん自身じしんも身みに覚おぼえのある浮うき足立あしだった純情じゅんじょうを俯瞰ふかんで見みているようで、みぞみぞする場面ばめんもあったものの…

　坂元さかもと裕二ゆうじ脚本きゃくほんのドラマは「東京とうきょうラブストーリー」「カルテット」くらいしか見みていない。会話かいわ劇げきが秀逸しゅういつな作家さっかという評判ひょうばんだが、正直しょうじきその会話かいわがあまり刺ささったことがない。評判ひょうばんがよいので性懲しょうこりもなく足あしを運はこんでみたが、やはりどうもはまり切きれなかった。ファンの方ほうには本当ほんとうに申もうし訳わけないが以下いかは個人こじん的てき嗜好しこうに基もとづく率直そっちょくな感想かんそうです。
　麦むぎと絹きぬの状況じょうきょうやら感かんじたことやらが終始しゅうし怒涛どとうのモノローグで事細ことこまかに説明せつめいされてゆくので、こちらが映像えいぞうから想像そうぞうを巡めぐらせるような余白よはくが少すくなく、身動みうごきを許ゆるされないような息苦いきぐるしさを感かんじた。
　びっしり詰つめ込こまれたサブカルアイテムも情報じょうほうとしては多おお過すぎるように思おもえた。音楽おんがく、舞台ぶたい、映画えいが、舐なめるように映うつされる本棚ほんだな、彼かれらの人ひととなりの描写びょうしゃにあれだけ全部ぜんぶ必要ひつようだろうか。映画えいがなのだから必要ひつよう以上いじょうの設定せっていは縁えんの下したに置おいて説明せつめいし過すぎず、演者えんじゃの表情ひょうじょうや映像えいぞうの工夫くふうによって醸かもし出だすに留とめて、見みる側がわが自分じぶんと重かさね合あわせて受うけ止とめるための余白よはくを作つくってほしかった。
　多分たぶんあのサブカル&トレンド装飾そうしょくは、「この漫画まんが読よんだ」「そのテレビ番組ばんぐみ見みてた懐なつかしい」といった観客かんきゃくの共感きょうかんを呼よぶための安直あんちょくな装置そうちでもあるのだろう。そういった装置そうちが全まったく不要ふようとは言いわないが、アイテムに視線しせんを奪うばわれることがあまり多おおいと、心しんがせわしなくなってしまう。もうちょっと決きめ打うちしてほしい。
　映像えいぞうで語かたる自信じしんがないのか？そんな印象いんしょうを受うけた。特別とくべつなレトリックで彩いろどり、マニアックに背景はいけいを語かたりたいなら小説しょうせつの方ほうが向むいている。
　複数ふくすうのモブが必然ひつぜん性せいなく死しに、そのエピソードが主人公しゅじんこうたちの気持きもちを測はかるただの道具どうぐとして使つかわれたこと、麦むぎの変化へんかや彼かれの職場しょくばトラブルの描写びょうしゃからエッセンシャルワーカーがそこはかとなく敗者はいしゃ扱あつかいされているように見みえたこと、せっかくのオダギリジョーがただの目めくらまし扱あつかいだったことも残念ざんねんだった。

　平凡へいぼんな恋こいバナと「共感きょうかん度ど100％のラブストーリー」（映画えいがサイトより）は表裏一体ひょうりいったい。実じつは難むずかしい普通ふつうの人ひとをキラキラと、痴話喧嘩ちわげんかさえ清潔せいけつ感かんを失うしなわず演えんじる主役しゅやく二に人にんの力量りきりょうは十分じゅうぶん感かんじた。