ロニートとエスティ　彼女かのじょたちの選択せんたく

ロニートの父親ちちおやはラビ。このコミュニティで最もっとも影響えいきょう力りょくのある人物じんぶつだ。
その彼かれが亡なくなり娘むすめであるロニートが数すう年ねんぶりにコミュニティに戻もどってくるのだが、コミュニティの人々ひとびとのロニートに対たいする反応はんのうが面白おもしろい。

ロニートは同性愛どうせいあい者しゃである。ユダヤのおきてでは許ゆるされない。許ゆるされない人物じんぶつが最もっとも影響えいきょう力りょくのあるラビの娘むすめというのは都合つごうが悪わるいのだろう。だから、娘むすめではない単たんなる顔見知かおみしり程度ていどの扱あつかいをするのだ。
誰だれも、お父とうさんが亡なくなって残念ざんねんね。などとは言いわない。一般いっぱんの弔問ちょうもん客きゃくに対たいするようなよそよそしさだ。
かと言いって、あんたなんかここへ来くるな。なんてことも言いわない。過剰かじょうに排斥はいせきするようなこともしないのだ。
このなんとも言いえない微妙びみょうな距離きょり感かんが面白おもしろいのだ。

そして、もう一ひとつ面白おもしろいと思おもったこととして、ロニートとエスティの過去かこの関係かんけいをコミュニティの人々ひとびとが知しっていたことだ。
夜よる、暗くらがりでエスティと二人ふたりでいるところを目撃もくげきされ、さっきのはエスティ？と尋たずねられる。ロニートとエスティは幼おさななじみなのだから仮かりに二人ふたりが一緒いっしょにいたとしも大たいした問題もんだいではないはずだ。しかしそれが問題もんだいになる。
つまり、過去かこにロニートとエスティが恋人こいびと同士どうしであったことが知しれ渡わたっていたことを意味いみする。

コミュニティの人々ひとびとは、ロニートの父ちちであったラビも含ふくめて、コミュニティのおきては守まもらせたい。しかし守まもれない人間にんげんをどうしたらいいのか分わからないのだ。
ユダヤ教徒きょうとであることのハードルはなかなか高たかい。まずユダヤ人じんでなければならない。だからこそ異教徒いきょうとという考かんがえ方かたがない。つまりユダヤ教徒きょうとではない者ものを排斥はいせきしようとしない。布教ふきょうもしない。
逆ぎゃくに言いえば、ユダヤ人じんならば敬虔けいけんなユダヤ教徒きょうとだと考かんがえるのだ。

昔むかしからある宗教しゅうきょうはどれも、現代げんだい的てき価値かち観かんに沿そったアップデートが必要ひつような時期じきにきていると思おもう。
しかし、ただの人ひとが神かみのおしえを変かえられるわけがない信仰しんこうのもどかしさがある。

刺激しげき的てきな物語ものがたりではなかったけれど、絶妙ぜつみょうに噛かみ合あわない温度おんど差さが興味深きょうみぶかい良作りょうさくだった。
典型てんけい的てきなカースト最さい上位じょういのチアリーダー、役やくのほとんどがイケてる女おんなだったレイチェル・マクアダムスが、おとなし目めのユダヤ人じん役やくだったというのも興味深きょうみぶかい。

なんと閉とざされた世界せかいである事ことか。差別さべつされた人々ひとびとは差別さべつしない世界せかいを作つくるのかと思おもいきや、そうではないのかしら。映像えいぞう感かんもプラスして暗くらい世界せかいを感かんじてしまった。
ロニートがいつ、NYに一緒いっしょに行いって子供こどもを育そだてましょう！と言いうかと思おもっていたが意外いがいと言いわない。何故なぜだ？あの世界せかいに居いてはエスティは辛つらいだけと思おもうのだが。出でて行いく人ひとより残のこされる人ひとのほうがどう考かんがえてもこの場合ばあいキツイ筈はずだが。

ドヴィッドのスピーチが感動かんどう的てきだった。
あと、懐なつメロ聴きいて二に人にんの恋こいが再燃さいねんするみたいな場面ばめんも超ちょういい。自分じぶんが高校生こうこうせいだった時ときにプライマルスクリームとかハッピーマンデーズとかラーズとかよく聴きいてたので、うわ、キュアだって一瞬いっしゅんで記憶きおく蘇よみがえった。
ノマドランドやショーンオブデッドでスミスが使つかわれてたし（ノマドは歌詞かしのタトゥー、ショーンがチャンネル変かえる場面ばめんでスミスのpanicが映うつる）これから起おこることを示唆しさするのに積極せっきょく的てきに使つかっているなと思おもった。二人ふたりの為ためのラブソングという感かんじでエンディングもこれしかない感かんじ。
父ちちに対たいしてのわだかまりが消きえたかのように墓場はかばでシャッターをきるというのも良よかった。

　ユダヤ教きょうの指導しどう者しゃである父親ちちおやの死しを聞きいて、故郷こきょうに帰かえったロニート。何故なぜか身内みうちも街まちの人ひとも歓迎かんげいしてない様子ようす。だんだんとその理由りゆうはわかってくる。
　ユダヤ教きょうをよく理解りかいしていないので、この映画えいがをどう捉とらえていいのか、、、親戚しんせきの人達ひとたちとの夕食ゆうしょくのシーンで、ロニートに結婚けっこんを進すすめたり、子供こどもを産うむつもりは無ないというロニートに対たいして避難ひなんするのは、宗教しゅうきょう的てき見解けんかいなのか、ただ世代せだい的てきな価値かち観かんなのかよくわからない。エスティがカツラを被こうむっているのは何故なぜだろう？
　エスティの「自由じゆうになりたい」という言葉ことばを聞きいた夫おっとドヴィットはユダヤコミュニティの新あらたな後継こうけい者しゃの座ざを捨すてて、妻つまの自由じゆうを認みとめる。NYに帰かえるロニート、おそらくいずれロニートの元もとに行いくであろうエスティはいいが、コミュニティに居い続つづけるドヴィットの、今後こんごを考かんがえると気きの毒どくである。
　2人ふたりの濃厚のうこうなラブシーンがあるけれど、これからの映画えいがはこういう場面ばめんは撮とれないんだろうな🧐