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ゾッキ インタビュー: 竹中直人×山田孝之×齊藤工、それぞれの瞳に映った“監督としての姿”「同じチームという点が頼もしい」 - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2021ねん4がつ2にち

  • 予告編よこくへん

ゾッキ : インタビュー

2021ねん4がつ5にち更新こうしん

竹中たけなか直人なおと×山田やまだ孝之たかゆき×齊藤さいとうたくみ、それぞれのひとみうつった“監督かんとくとしての姿すがた”「おなじチームというてんたのもしい」

竹中直人監督(中央)、山田孝之監督(左)、齊藤工監督(右)
竹中たけなか直人なおと監督かんとく中央ちゅうおう)、山田やまだ孝之たかゆき監督かんとくひだり)、齊藤さいとうこう監督かんとくみぎ

今日きょう地球ちきゅうは「秘密ひみつうそ」でまわっている――漫画まんが大橋おおはし裕之ひろゆきした“ただいち無二むに世界せかい”が、スクリーンへとはなたれようとしている。初期しょき作品さくひんしゅう「ゾッキA」「ゾッキB」をもとにした映画えいがゾッキ」は、3つの“のう”の化学かがく反応はんのうによって完成かんせいした。竹中たけなか直人なおと山田やまだ孝之たかゆき齊藤さいとうたくみによる“監督かんとく3にん体制たいせい”で誕生たんじょうしたほんさくでは、カテゴライズ不能ふのう映画えいが体験たいけんゆだねることになるだろう。

「ゾッキA」「ゾッキB」に収録しゅうろくされた珠玉しゅぎょく作品さくひんぐんからピックアップし、1ほん長編ちょうへん映画えいがとしてまとめげた監督かんとくじん。そうして完成かんせいした作品さくひんは……たしかにジャンルけは不可能ふかのうだ。至上しじょうあい面白おもしろみにあふれた人間にんげん模様もようときにシュールで、ときにリリカル。不可思議ふかしぎわらいと多幸たこうかんにじみだす。よくわからないけど、なんかいい――という言葉ことば最適さいてきかいなのである。

吉岡よしおかさと鈴木すずきぶく満島みつしま真之まさゆきかいやなぎゆりさいみなみ沙良さら安藤あんどう政信まさのぶピエールたきもり優作ゆうさく九条くじょうジョー(コウテイ)、りゅう麻生あさみ倖田こうだらいひつじ竹原たけはらピストルじゅんひろし松井まつい玲奈れいな渡辺わたなべたすく太朗たろう石坂いしざか浩二こうじ松田まつだ龍平りゅうへいくにむらはやぶさといった豪華ごうかキャストがつどい、ついに実現じつげんした「大橋おおはし裕之ひろゆきワールドの実写じっしゃ映画えいが」。映画えいが.comでは、2020ねん2がつ撮影さつえい現場げんば密着みっちゃく。そこからやく1ねん月日つきひて、ふたた監督かんとくじんはなしくことができた。完成かんせいした作品さくひんまえに、3にんなにかんじているのだろうか。(取材しゅざいぶん編集へんしゅう写真しゃしんしゅひさしあきら


――あらためて、今回こんかいの「ゾッキ」は、どのような現場げんばになりましたか?

竹中たけなか これはお世辞せじではなく、かばのぐんという場所ばしょをロケとしてえらべたのが本当ほんとうかったです。まちひとたちも協力きょうりょくてきで、天候てんこうにもめぐまれて撮影さつえいおだやかにすすんでいきました。撮影さつえいかばのぐんるのが、とてもせつなかったです。

齊藤さいとう ぼく自身じしん役割やくわりとしては“中継なかつぎ”てきなところがあるなとおもっていたんです。でも、大橋おおはしさんの作品さくひん自体じたい中継なかつぎ”の連続れんぞくのような――よんばん打者だしゃ不在ふざいのようなかんじがいなとおもっていたんです。バトンをしっかりとって……というよりは、世界せかいかん共有きょうゆうたのしみながらつくっていました。九条くじょうジョーさんともり優作ゆうさくさんがつくられたとも牧田まきた姿すがたは、レンズしじゃなくても、ずっとていたいなとおもえるほど。2人ふたり出会であうきっかけになれたのであれば、ぼくただしい現場げんばつくれたんじゃないか――2人ふたりのクランクアップにったさい、そうおもいましたね。

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――東京とうきょう国際こくさい映画えいがさい上映じょうえいさいには、もりさんのことを「あしがついていて、そこに日常にちじょうせる役者やくしゃ」とひょうされてましたよね。

齊藤さいとう (「ばんくん」では)もりさんがかぎとなるキャッチャーなんです。一緒いっしょ現場げんばになることがよくあったんですが、スタッフさんにたまに存在そんざいわすれられるんです。それがもう最高さいこうだなと。現場げんば役者やくしゃとして参加さんかしていると、わりと背伸せのびをしてしまいがちなんです。でも、もりさんはきちんとあしのついた状態じょうたいでいる。“馴染なじむ”という究極きゅうきょく奥義おうぎにつけたおとこなんです。

竹中たけなか山田やまだ わらい

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――山田やまだ監督かんとくはどうでしたか? ほんさくは、はじめて映画えいが監督かんとくとして参加さんかされた作品さくひんになりました。

山田やまだ いつも「しあわせだなぁ」とおもっていましたね。みなさんがお芝居しばいをしている様子ようすを、さい前列ぜんれつることができる。とにかく、それがしあわせでした。松田まつだ龍平りゅうへいかんしては「ずっとていたい」とおもったほど。こちらがNGをせば、なんかいでもやってくれるんですけど……芝居しばいいからほとんどOKしかなかった(笑)。

――プロデューサーという立場たちば視点してんうつすと「現場げんばまもる」という姿勢しせいつらぬいていたとおもいます。たとえば、睡眠すいみん時間じかんまもるために「予定よていのシーンの撮影さつえいわれば、つぎ撮影さつえいまで8あいだ間隔かんかくける」。齊藤さいとう監督かんとく提案ていあんけ、託児たくじしょもうけられました。

山田やまだ それがどんどんたりまえになっていくとおもっていますけどね。まだ“なっていない”という事実じじつが、ぼくはマズイとかんがえています。

――ポスプロ作業さぎょうはいかがでしたか?

山田やまだ それぞれ、自分じぶんのパートにのぞんだかたちですね。編集へんしゅう担当たんとうされるのは、おなかたでしたから。

竹中たけなか 自分じぶんは、むかしから「このアングルでる」とめたら、余分よぶんなカットはらないです。その一瞬いっしゅんりたいから。編集へんしゅうよう素材そざいりは一切いっさいしないのでそのままつないでいきます。でも、もうデジタルの世界せかい手作業てさぎょうじゃないんですよね。ぼくはフィルムの時代じだいきてきたからパソコンでさっさっと出来できてしまうことに、まだおどろいてます。35ミリフィルムをってわせていましたからね。「ある時代じだいへんわったんだな」としみじみおもいました。やっぱり編集へんしゅう作業さぎょう面白おもしろい。カットをほんのすこえただけで印象いんしょうわりますからね。

山田やまだ それぞれのあいだ(ま)があるなとおもいました。竹中たけなかさんのパートをていても、つぎのカットにうつるタイミングに注目ちゅうもくしていたんですが、予想よそうはずれる。そして「おー、ここでいくのか」となるんです。「この一瞬いっしゅんあいだ(ま)をせたかったのかな?」とか、勝手かって想像そうぞうしてました。

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――では、それぞれのパートについてのご感想かんそうもおかせください。

竹中たけなか いやぁ、面白おもしろかったです。それぞれが全然ぜんぜんちがいますしね。もちろん、映画えいがとして1ほんつながってしまえば、はじめてひとには、だれがどのパートを監督かんとくしたのかはわからないとおもいます。それぞれの“眼差まなざしのちがい”というてんが、なんてもたのしいのではないかなっておもいます。山田やまだぐみでは俳優はいゆう孝之たかゆき信頼しんらいしているのがつたわってきます。だれもがちからけた素敵すてき演技えんぎでした。しかし龍平りゅうへいてくると「うわ、映画えいがだな」とおもっちゃう。龍平りゅうへいのあの空気くうきかん……たまらなかったです。龍平りゅうへい確固かっこたる映画えいが俳優はいゆう……ってつよさかな。

齊藤さいとう たしかに。

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竹中たけなか そんなつよさが、つねにスクリーンからはなたれていますね。藤村ふじむら自転車じてんしゃっているシーンですが、龍平りゅうへいがただ自転車じてんしゃはしっているだけなのにちょうまわしでがっつりせるあのすごさ……。孝之たかゆきは、よく龍平りゅうへいをキャスティングしたなとおもいました。あと、ピエール(たき)の登場とうじょうシーンの素晴すばらしさ!

山田やまだ (笑)。あ、おもしました! ぼく、あそこでNGしたんですよ。「ここはさっと登場とうじょうしてください」とつたえたんですけど、たきさん、ちょっと欲張よくばったんです。「そこは欲張よくばらないでください」といました(笑)。

一同いちどう 爆笑ばくしょう

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竹中たけなか ピエールが本当ほんとう素晴すばらしいです。ものくちはこぶだけなのにとてもドラマティックでした。嫉妬しっとしてしまいました。でも、おな映画えいがつくっている仲間なかまだからね。これが孝之たかゆき単独たんどくつくった映画えいがだったら「ふざけんなよ」とおもっちゃいます(笑)。

――齊藤さいとう監督かんとくのパートについてはどうでしょうか?

竹中たけなか 「ばんくん」をると、丁寧ていねいというか……演出えんしゅつささやかさが際立きわだちますよね。見事みごとなんです。いろんな意味いみおどろいちゃいました。ひとつひとつのフレームのつくかたも「うわー、こまかいなぁ」って。でも、こう仲間なかまなので……嫉妬しっとはしません。「ゾッキ」は、ぼく映画えいがでもあるからね。でもこう単独たんどく監督かんとく作品さくひんだったらやっぱり「ふざけんなよ」っておもっちゃう(笑)。

齊藤さいとう いま竹中たけなかさんがおっしゃったように「嫉妬しっとする対象たいしょうではない“おなじチーム”の作品さくひん」というてんたのもしかったですね。竹中たけなかぐみ山田組やまだぐみのキャストは、ぼくには演出えんしゅつできなかったであろう方々かたがたなんですよ。ぼくには、九条くじょうさんくらいがちょうどいい。

一同いちどう 爆笑ばくしょう

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齊藤さいとう ぼくのキャパをえてしまうので、背負せおいきれないんです。ぼくにとって、竹原たけはら(ピストル)さん、松田まつだ龍平りゅうへい)さんは、ながめてしまう対象たいしょうですから。衣装いしょうちがいも面白おもしろかったですね。ぼくのパートは、どちらかとえば「Winter Love」にちかい。ふくしわ配色はいしょくふくめて、リアルな方面ほうめんっている。でも「ちち」における竹中たけなかぐみ配色はいしょくというのは、竹中たけなかさんだからこそ辿たどき、たものなんです。「ばんくん」の世界せかいには、倖田こうだらいひつじさんは存在そんざいできない。でも、竹中たけなかさんのフィールドであれば、成立せいりつして“きる”。竹中たけなかぐみのレンジのひろさ、そして的確てきかくさは見事みごとでした。ぽうとも、本当ほんとう明確めいかくなビジョンがあったとおもいます。“しんコンテ”が明瞭めいりょうで「これがしい」というものがきちんとえている。だからこそ、スタッフも、キャストも(完成かんせいへと)かいやすい。ぼく場合ばあい、そのビジョンがおなかくだしているときのようなかんじです。

竹中たけなか山田やまだ わらい

齊藤さいとう ぼくは、現場げんばでもなやつづけて、ポスプロでもウジウジしているんです。山田やまだ監督かんとく現場げんば注目ちゅうもくしたのは「これがしい」という意識いしきにおけるてんかた原作げんさくにはないのに、山田やまだ監督かんとくなかにある“大橋おおはし裕之ひろゆきてきなもの”がまれる瞬間しゅんかんることできたんです。たとえば、カップラーメン。これは実際じっさい陳列ちんれつされ、日焼ひやけしているものを使用しようされています。実際じっさいに、そこにあったものであじをつけていったんです。みちさき案内あんないじんのビジョンが明確めいかくだと、そのふねはきちんとすすんでいきます。

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――原作げんさく漫画まんがおよび、大橋おおはし作品さくひん最少さいしょうせん構成こうせいされているてん特徴とくちょうてきです。そこから明確めいかくなビジョンをつくげるのは、なかなかむずかしいことのようにおもえます。

齊藤さいとう (原作げんさくを)コンテにしてしまうか、概念がいねんとするか――その線引せんひきはさんしゃさんようでしたね。ぽう原作げんさくたよらず、みずからの世界せかいというものがあった。そこがすごいなとおもいました。

――山田やまだ監督かんとくは、竹中たけなかぐみ齊藤さいとうぐみたりにしていかがだったでしょうか?

山田やまだ つねまなびでした。スタッフ、キャストとのコミュニケーションのかたはもちろんですが、えがかたというてんについてもです。この脚本きゃくほんからこんなふうにくみっていくのかと。編集へんしゅうも、キャスティングにかんしても同様どうようです。ぼく原作げんさくんでストレートにのぞんだつもりなんです。だからこそ、それぞれの作品さくひんづくりをて「こんなにもひろげる余白よはくというものがあるのか」とかんじました。

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――撮影さつえい現場げんばでは「(作品さくひんを)アジアまでもっていきたい」とおおせられていました。“世界せかい進出しんしゅつ”という観点かんてんではどうおかんがえでしょうか?

山田やまだ 「ONE PIECE」「ドラゴンボール」「NARUTO」は世界せかいにいっていますよね。「ゾッキ」については、日本にっぽんでも原作げんさくしゃ出身しゅっしんかばのぐんらないひとがいます。多分たぶんくにっていったら、認知にんちはゼロだとおもうんです。我々われわれいだく『大橋おおはし裕之ひろゆきは、天才てんさいだ』という感覚かんかくを、他国たこく方々かたがたたらどうなるのか――それがとてもになりますよね。

――齊藤さいとう監督かんとくは「フードロア Life in a Box」(HBOアジア制作せいさく)にも参加さんかされていました。アジアにも活動かつどう領域りょういきひろげていくてんかんしては意識いしきされていますか?

齊藤さいとう 最近さいきん、WOWOW開局かいきょく30周年しゅうねん番組ばんぐみのMCをやらせてもらったんですが、そこで映画えいが特集とくしゅうをプレゼンするというコーナーがありました。紹介しょうかいしたのは、世界せかいへの切符きっぷとなった巨匠きょしょうたちの代表だいひょうさくというもの。ホップ・ステップ・ジャンプにおける「ホップ」の作品さくひんをまとめたんです。「そのおとこ凶暴きょうぼうにつき」(北野きたのたけし監督かんとく)、「鉄男てつお」(塚本つかもとすすむ監督かんとく)、「もえ朱雀すじゃく」(河瀬かわせ直美なおみ監督かんとく)。こういう作品さくひんならべてみると「世界せかいはこれで注目ちゅうもくした」というものの輪郭りんかくえるんじゃないかとおもったんです。共通きょうつうしていたのは、どの作品さくひん工夫くふうらして、自分じぶん半径はんけい映画えいがつくっていたということでした。日本にっぽんはいってくる映画えいがにもえることかもしれません。たとえば、「別離べつり」のアスガー・ファルハディぼくらのらないこと、日常にちじょう半径はんけいにおける物事ものごとが、映画えいがというフィルターをつうじてうみえる。もとめられているのは、そういうものなのではないかというのがえてきたんです。

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齊藤さいとう そういう前提ぜんていがあるとすれば、「ゾッキ」はもちろんアジアというフィールドにはフィットするとおもいます。でも、いまはウィズコロナの時代じだい他国たこく文化ぶんかれづらくなってきていますよね。かばのぐんというローカルな地域ちいきえがいているので、ある意味いみ観光かんこう気分きぶんにもなれる作品さくひんなんです。むしろヨーロッパ、アメリカでも……もしかしたら北欧ほくおう評価ひょうかされるかもしれない。

竹中たけなか アキ・カウリスマキみたいね。

齊藤さいとう そういうトーンじゃないですか。デンマーク、ノルウェーもありですね。間違まちがって評価ひょうかされる可能かのうせいが……。

山田やまだ え? 間違まちがって(笑)?

齊藤さいとう (笑)。最近さいきん翻訳ほんやくサイトを利用りようして、以前いぜんつくった短編たんぺん字幕じまくける作業さぎょうをしているです。最終さいしゅうてきには調整ちょうせいしてもらいますが、英語えいごだけじゃなく、色々いろいろ言語げんごをつけてるんです。「ゾッキ」にかんしては、さまざまなくにでの可能かのうせいめているようながしています。

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――竹中たけなか監督かんとくはどうおかんがえでしょうか?

竹中たけなか そのあたりのことは、孝之たかゆきこうにおまかせです(笑)。ぼくはとにかく大橋おおはし裕之ひろゆきさんのだいファンなんです。大橋おおはしさんの世界せかい映画えいがにすることができたというだけでうれしい。それがつぎつながっていけばいいなっておもっています。「ゾッキ2」ができたらうれしいですね!

――たしかに、原作げんさくとなった「ゾッキA」「ゾッキB」には、まだまだ映像えいぞうのエピソードがたくさんありますよね。

山田やまだ “のこっている”どころじゃないです(笑)。

竹中たけなか 「ゾッキC」も発売はつばいされたし! ドキドキしています。

齊藤さいとう 大橋おおはしさんがさらにまえすすまれたということは、映画えいが仕上しあがりが「こんなのじゃない!」とはおもっていないということなのかな。

山田やまだ 大橋おおはしさんは基本きほんてきに「面白おもしろい」ってってくれるんですよ。「いやだ」とはじめてったのは、「ゾッキ」の特報とくほう映像えいぞう完成かんせいしたときだけ。そういうのじゃないって(笑)。

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竹中たけなか でも、映像えいぞうだったとおもったけれど……。つぎ発表はっぴょうされた予告編よこくへんは、龍平りゅうへい手元てもとかみているときかお素敵すてきだった。あの龍平りゅうへいかお、ガツンときちゃったな。

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齊藤さいとう 松田まつだ龍平りゅうへいって、全部ぜんぶいいんですよね。

山田やまだ:とてもわかりやすい秘密ひみつ兵器へいき使つかったかんじなんですよ。たんにファンなんです。10代のころからってますけど、ずっと「松田まつだ龍平りゅうへい本当ほんとうにいいな」とおもっていて。原作げんさくんだ瞬間しゅんかんに「(藤村ふじむらやくは)龍平りゅうへいくんじゃん!」となりました。

齊藤さいとう たとえば“うなずく”という演技えんぎかれむと、竹中たけなかさんがおおせるように「映画えいがになる」んですよ。

――藤村ふじむら牧田まきた交錯こうさくするコンビニのシーンですね。

齊藤さいとう あそこは、山田組やまだぐみ素材そざいりているんです。ぼく演出えんしゅつをするとしたら“うなずかない”という選択肢せんたくしをとっていたはず。

山田やまだぼくもそうおもってました。

齊藤さいとう なに理解りかいしたのかはわからないけど、なにかを理解りかいしたようなかんじがする。あの“うなずき”には、あささとふかさが同居どうきょしているんですよ。

一同いちどう 爆笑ばくしょう

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齊藤さいとう でも、牧田まきた心情しんじょうかんがえると、あそこで“うなずかれる”ことでみせしていく。仕上しあがりの時点じてんで「なるほど……これは“うなずく”のが正解せいかいだ」とおもいました。

山田やまだ 脚本きゃくほん仕上しあがったときぼくも「藤村ふじむらはここで“うなずく”のかな?」とおもっていたんです。そのおもいは、現場げんばはいってもわらなかった。でも、龍平りゅうへいくんえんじたのをたら「絶対ぜったいにあったほうがいい」とかんがなおしました。これを成立せいりつさせてしまうのかと。さすが、松田まつだ龍平りゅうへいだなと(笑)。俳優はいゆうとしてオファーがきたとき、あの“うなずき”をする自信じしんってあります?

齊藤さいとう いや、まったくない。あれは成立せいりつさせられない。ああいう経緯けいいで、あそこに辿たどいて“うなずく”って……。

山田やまだ ぼくだったら、絶対ぜったい監督かんとく、ここって、なんでニヤッとわらってうなずくんですか?」っていちゃうとおもうんですよ。あのひとなにかずにやってきましたからね(笑)。脚本きゃくほん倉持くらもちひろし)さんは、あの表情ひょうじょうえていたっていうことですよね。

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