【警告】この男の視界に入ったら人・生・崩・壊
《怪物》古田新太に狙われた《小市民》松坂桃李は…
入り口は衝撃、だが出口は感動の人間ドラマだった!?
自分のアンテナにビビッと来る、「他と違う」映画を求めている方々へ――。“感度の高い”映画ファンがいま、全力待機中の作品はもうチェック済みだろうか。
それは「空白」(9月23日公開)。「新聞記者」で日本アカデミー賞を席巻した映画会社スターサンズ、「ヒメアノ~ル」「愛しのアイリーン」の吉田恵輔監督・脚本(しかもオリジナル作品!)、古田新太、松坂桃李ら最強メンバーがそろった話題作だ。
ある少女の死が、かかわった人々の人生を変容させていく――。娘を失い、モンスターと化した父になりきった古田の戦慄すぎる怪演、追い詰められる松坂のひりつくような力演が収められた特報にKOされた方もいることだろう。
しかしこの作品、ぶっ飛ばされるような過激性“だけ”ではない。全てを見終えた暁には、全く違う景色が広がっているはずだ。本特集では、衝撃と感動が融合したこの傑作の魅力を、いち早く解説する!
【予告編】
一人の少女の死が、田舎町の住民の人生を激変させる!
「この物語は“普通”じゃない…」
実は、映画.com編集部の耳にも早い段階から本作の“凄さ”は届いていた。まだマスコミ向けの試写会が始まる前から業界内がざわつく話題作「空白」、その勢いは日増しに強まり、様々な映画人が猛烈に薦めてくる……。
こうしたムーブメントは極めて稀で、特異な“作品力”をひしひしと感じていたが、実際に中身を目にしたいまは「完全同意」の一言。「見てほしい!」と推さずにはいられない1本となった。まずは、本作の概要についてかみ砕いて紹介する。
【どんな話なの?】万引き容疑の少女が事故死…残された人々の“争い”が勃発!本作の舞台は、地方の田舎町。どこにでもありそうな地元のスーパーで、女子中学生の万引き未遂事件が発生。店長に見とがめられた彼女は、逃走中に車にひかれて死亡してしまう。
娘を失った父は無実を証明するために立ち上がるが、その行動は次第にエスカレートし、店長や教師、車の運転手といった周囲の人間をむしばんでいく……。私たちが生きる現実と地続きの「いまこの瞬間もあり得る」物語であり、秀逸な設定に冒頭から一気にのめり込んで見てしまうことだろう。
【見たらどうなる?】えぐられる、だが…言語化できない感動に包まれる!予備知識なく入り込める物語ながら、そこに付随する感情は強烈。「怪物」と称される女子中学生の父親も、彼に人生を蹂躙される人々も、全員に理解・共感・納得できる人間臭さとリアリティがみなぎっており、他人事とは思えない。
恐怖や不安、絶望に壮絶な哀しみ……感情をかき乱され、予想を超えるラストに無二の感慨が押し寄せる。正直、我々もまだ一言でい表せないほどの余韻が胸の中に広がっているのだ……。ぜひあなたも、この一大事を目撃していただきたい。
【頭から離れない】古田新太・松坂桃李の狂演に震撼!
ヤバいのに「現実にいそう」な強烈キャラがそろい踏み
「空白」を“傑作”へと押し上げている要因のひとつは、「物語」と「人物」の完璧なリンク。リアリスティックな設定に、強烈だが嘘くさくない“血の通った”キャラクターが加わることで、見る者を作品世界に引き込むのだ。
そしてそこには、役者陣のハイレベルな演技が不可欠。古田新太、松坂桃李、寺島しのぶ、藤原季節、田畑智子といった豪華な演技派キャストが集結し、それぞれが限界突破した「本作でしか見られない表情」を披露。観客の感情を、これでもかと揺さぶってくる!
〇古田新太/事故死した少女の父親…触るな危険!傍若無人なモンスター漁師古田が扮するのは、荒くれものの漁師。その性格から周囲に距離を置かれ、娘のケータイを投げ捨てるなど傍若無人な振る舞いが目立つ人物だったが、事件後は一層過激に。
スーパーの店長に付きまとって恫喝し、学校に乗り込み、取材に来たマスコミに怒鳴り散らす。正直、絶対に関わりたくない人物だが、その奥には娘を亡くした深い悲しみが渦巻いていて……。クレイジーと哀れさを併せ持つ奥深い難役を、古田が全身全霊で体現した。
〇松坂桃李/万引き被害に遭ったスーパー店長…他者が苦手。内向的な気弱青年一見すると気弱で内向的だが、他者を寄せ付けないミステリアスな雰囲気もたたえ、「この人には何かある」と思わせる青年……。そんな複雑なキャラクターを演じられるのは、松坂桃李しかいないだろう。
古田演じる漁師やマスコミの偏向報道、誹謗中傷に生活を滅茶苦茶にされながらも、本音が見えない“怖さ”があるスーパー店長を説得力ある演技でものにしている。“攻め”の古田、“受け”の松坂のハイレベルなコラボレーションに唸らされる!
〇寺島しのぶ・藤原季節・田畑智子/ふたりの周囲でもがく、重要人物たちふたりを取り巻く人物たちも、くせ者ばかり。寺島しのぶ演じるスーパーのパート店員は、ボランティア活動にのめり込みすぎて、他者に自分の正義を押し付ける危険な側面も。
若手注目株の筆頭・藤原季節はチャラついた若者に見えて、孤立しがちな主人公・添田(古田)を支える人情味あふれる人物。吉田監督と「さんかく」以来のコラボレーションとなる田畑智子は、壮絶な過去を背負った添田の元妻を的確に表現。
それぞれが歩んだ人生を感じさせる、噛み応えのある演技がキャラクターと融合し、作品の完成度を一層高めている。
日本映画を改革する風雲児スターサンズ、その最新作!
傑作連発監督・吉田恵輔との再タッグでさらなる高みへ
既成概念にとらわれない本作を生み出したのは、「愛しのアイリーン」で観客を圧倒したスターサンズ×吉田恵輔監督の黄金コンビ。互いにフィーリングが合い、相乗効果を見せつけてきた彼らが、今度はオリジナル映画を引っ提げて帰ってくる。
その目撃者となれるのは、映画ファンにとって無上の喜びといえるのではないか。監督・俳優・配給……全てに置いて死角がない唯一無二の作品が誕生した!
○「ヒメアノ~ル」「愛しのアイリーン」監督! 鬼才・吉田恵輔の新境地森田剛の怪演が話題を呼んだ「ヒメアノ~ル」や安田顕の変身っぷりが凄まじい「愛しのアイリーン」、映画ファンの推し映画「さんかく」「犬猿」など、新作を発表するたびに観客を沸かせてきた吉田監督。中でも本作「空白」は、頭一つ抜けた作品といえるだろう。
元来得意とする攻めた作品作りに、柔らかな肌触りの感動ドラマの要素が加わり、“入り口”と“出口”で全く違う感想を抱かせる。端的に言えば、映画としての“厚み”が際立っているのだ。当代きっての鬼才による渾身の一作を、劇場で体感していただきたい。
○次は何する!? いま最も新作が望まれる映画会社、スターサンズ「新聞記者」「ヤクザと家族 The Family」「宮本から君へ」「MOTHER マザー」「あゝ、荒野」など、一貫して現代社会を鋭く捉えた意欲作を叩きつけ、業界も観客も驚かせ続けてきた映画会社スターサンズ。映画好きや業界関係者からの信頼も厚いレーベルが、満を持して放つのがこの「空白」だ。
不寛容がはびこる現代に、この映画は何をもたらすのか――。見る者の価値観を変える「映画の力」にあふれた本作は、スターサンズだからこそ生み出せたものでもあろう。期待値を十二分に上げ、彼らのメッセージを全身で受け止めてほしい。