女子高じょしこう生せいに殺ころされたい : インタビュー

2022年ねん4月がつ8日にち更新こうしん

【ネタバレあり】田中たなか圭けい＆南みなみ沙良さら、禁断きんだんの欲望よくぼうに取とり憑つかれた教師きょうしの“自分じぶん”殺害さつがい計画けいかくを読よみ解とく

田中圭＆南沙良、公開後のいまだから話せる本作の魅力を語り合う — 田中たなか圭けい＆南みなみ沙良さら、公開こうかい後ごのいまだから話はなせる本ほん作さくの魅力みりょくを語かたり合あう

「女子高じょしこう生せいに殺ころされたい」――衝撃しょうげき的てきであると同時どうじに、心しんの奥底おくそこにあるほの暗ぐらい好奇心こうきしんを刺激しげきされ、ついその欲望よくぼうの中身なかみをのぞきたくなるようなタイトル。映画えいが「女子高じょしこう生せいに殺ころされたい」（公開こうかい中ちゅう）で描えがかれるのは、禁断きんだんの願望がんぼうに取とり憑つかれた高校こうこう教師きょうし・東山ひがしやま春はる人じんの9年間ねんかんに及およぶ、前代未聞ぜんだいみもんの“自分じぶん”殺害さつがい計画けいかくだ。

話題わだい作さくへの主演しゅえんが途切とぎれない田中たなか圭けいは本ほん作さくで、オートアサシノフィリア（自己じこ暗殺あんさつ性愛せいあい＝自身じしんが殺ころされる状況じょうきょうに興奮こうふんを覚おぼえるという性的せいてき嗜好しこう）を抱かかえ、“理想りそうの殺ころされ方かた”のために完全かんぜん犯罪はんざいを遂行すいこうしようとする春はる人じんを体現たいげん。そして、映画えいが初はつ主演しゅえん作さく「志乃しのちゃんは自分じぶんの名前なまえが言いえない」で新人しんじん賞しょうを多数たすう受賞じゅしょうし、快かい進撃しんげきを続つづける若手わかて実力じつりょく派はの南みなみ沙良さらが、優等生ゆうとうせいだが、ある秘密ひみつを抱かかえる生徒せいと・佐々木ささき真帆まほを演えんじた。劇げき中ちゅうでは、緻密ちみつな心理しんり描写びょうしゃと、先さきの読よめないサスペンスが複雑ふくざつに絡からみ合あい、春はる人じんの常軌じょうきを逸いっした計画けいかくがノンストップで進すすんでいく。誰だれもがのぞき見みたくなる、禍々まがまがしく妖あやしい魅力みりょくに満みちた物語ものがたりに身みを委ゆだねた田中たなかと南みなみに、公開こうかい後ごのいまだから話はなせる本ほん作さくの魅力みりょくについて、語かたってもらった。（取材しゅざい・文ぶん／編集へんしゅう部ぶ、写真しゃしん／高野たかの広美ひろみ）

※本ほん記事きじには、原作げんさくと映画えいがのネタバレとなる箇所かしょがあります。未見みけんの方ほうは、十分じゅうぶんにご注意ちゅういください。

桜さくら舞まい散ちる新しん学期がっき、34歳さいの日本にっぽん史し教師きょうし・東山ひがしやま春はる人じんは、進学校しんがくこうの二に鷹たか高校こうこうに赴任ふにんする。端正たんせいなルックス、実直じっちょくで気きさくな人柄ひとがらをあわせ持もつ春はる人じんは、たちまち校内こうないの人気にんき者しゃとなり、恋こいを夢見ゆめみる女子じょし生徒せいとたちの熱あつい眼差まなざしを一心いっしんに浴あびることに。しかし、春はる人じんにはある秘密ひみつがあった。「殺ころされたい……僕ぼくは殺ころされるために、この学校がっこうに赴任ふにんしてきた」。春はる人じんはやがて、完全かんぜん犯罪はんざいのシナリオの“登場とうじょう人物じんぶつ”となる、4人にんの女子じょし生徒せいとに近付ちかづいていく。

原作げんさくは、「ライチ☆光ひかりクラブ」「帝みかど一いちの國くに」などで知しられる鬼才きさい・古屋こや兎うさぎ丸まる氏しによる、画業がぎょう20周年しゅうねん記念きねん作品さくひん。ともすれば物議ぶつぎを醸かもしそうな、挑戦ちょうせん的てきな題材だいざいの脚本きゃくほんに、田中たなかと南みなみは、どのような感想かんそうを抱だいたのだろうか。

田中たなか「出演しゅつえんオファーが来きたとき、先さきに原作げんさく漫画まんがから読よませて頂いただいて『面白おもしろいな』と思おもって、脚本きゃくほんを読よんだら『想像そうぞうの範囲はんいが広ひろがって、もっと面白おもしろくなっているな』と思おもいました。『女子高じょしこう生せいに殺ころされたい』というタイトルから、『どんな作品さくひんなのか、問題もんだい作さくなのか』と思おもう方ほうもいらっしゃるかもしれませんが、僕ぼくはシンプルに『面白おもしろそうな役やくだな』『これ、自分じぶんがやるのか』とワクワクする気持きもちが強つよかったです」

田中たなか「僕ぼく自身じしん、東山ひがしやまという人間にんげんも難むずかしくてワクワクするけど、沙良さらちゃんが演えんじた真帆まほという役やくも同おなじくらい難むずかしいと思おもいました。『生徒せいとの皆みながどんなふうになっていくのかな』と思おもって脚本きゃくほんを読よんでいたので、現場げんばに入はいるのが楽たのしみでした。城じょう定じょう（秀夫ひでお）監督かんとくとも初はじめてだったので、どんな方ほうなのかなという楽たのしみもあり、ビビっている気持きもち2割わり、ワクワク8割わりくらいでした（笑）」

南みなみ「私わたしはもともと本ほんが好すきでよく読よんでいるので、オファーが来くる前まえから原作げんさくを読よませて頂いただいていました。好すきなジャンルだったので、楽たのしく読よむことができました。お話はなしを頂いただいたときは『あ、この作品さくひんか。私わたしが真帆まほちゃんを演えんじるのか』と。脚本きゃくほんを読よんで、『私わたしはどうやってお芝居しばいするんだろうな』『皆みなさんとどうお芝居しばいができるんだろう』と期待きたいが高たかまりました」

ふたりの言葉ことば通どおり、映画えいが版ばんは、原作げんさくの核かくとなる部分ぶぶんを大切たいせつにしながらも、いくつか変更へんこうポイントも存在そんざいする。まずは、原作げんさくにはいない映画えいがオリジナルのキャラクター、演劇えんげき部ぶの君島きみしま京子きょうこ（莉子りこ）と、柔道じゅうどう部ぶの沢木さわき愛あい佳けい（茅かや島とうみずき）が登場とうじょうすること。この変更へんこうにより、春はる人じんが狙ねらう「自分じぶんを殺ころしてくれる女子高じょしこう生せい」とは誰だれなのか、という緊張きんちょう感かんが生うまれている。さらには、原作げんさくではクライマックスで語かたられる春はる人じんの計画けいかくの全貌ぜんぼうが、中盤ちゅうばんで明あかされること。映画えいが版ばんではクライマックスの舞台ぶたいとして、文化ぶんか祭さいでのクラス演劇えんげきが用意よういされている。

田中たなかは、表向おもてむきは好感こうかん度ど抜群ばつぐんの爽さわやかな人気にんき教師きょうしでありながら、内うちに潜ひそむ衝動しょうどうを抑おさえられない男おとこという難役なんやくを、色気いろけと狂気きょうきを織おり交まぜ、不気味ぶきみに演えんじ上あげた。女子高じょしこう生せいたちに近付ちかづき、自身じしんへの好意こういを利用りようすることで、途方とほうもない願望がんぼうを叶かなえようとする。そうした点てんで、原作げんさくよりも色気いろけや残酷ざんこくさが数すう段だん増ましたキャラクターになっていると言いえるだろう。共感きょうかんできない「分わからなさ」もあるなかで、この新しん境地きょうちともいえる役やくと、どのように向むき合あったのだろうか。

田中たなか「（頭あたまを抱かかえて）自分じぶんに『女子高じょしこう生せいに殺ころされたい』という願望がんぼうがあれば楽らくでしたが、結局けっきょく分わからないし、想像そうぞうすることしかできないので、すごく難むずかしかったですね……。あとは、キラキラした生徒せいとの皆みなさんとどうしたら対等たいとうにお芝居しばいできるか考かんがえて、悩なやんで、撮影さつえい中ちゅうは毎日まいにち走はしっていました。『絶対ぜったい今日きょうも走はしるぞ』って。本当ほんとうに現場げんばで皆みな、キラキラしているんです。もちろん主演しゅえんという立場たちばでキャリアもあって、皆みなを引ひっ張ぱっていかなきゃいけないことは重々じゅうじゅう分わかっていましたが、あまりにも皆みながキラキラしていたので、『俺おれ、ここにいちゃいけない』という気持きもちになって。本当ほんとうに（笑）。どうしたら皆みなと対等たいとうに、胸むね張はって渡わたり合あえるかと考かんがえて、たどり着ついた答こたえが、『毎日まいにち走はしる』でした（笑）」

南みなみ（笑顔えがお）

田中たなか「ハードな撮影さつえいスケジュールで、朝あさ早はやかろうが夜よる遅おそかろうが『絶対ぜったい走はしる』と決きめて毎日まいにち走はしって、『俺おれだってキラキラしてる、若わかい者ものには負まけないからな』という意識いしきを自分じぶんに植うえつけて、対等たいとうに芝居しばいをするところまで何なにとかもっていったという感かんじでしょうか（笑）」

劇げき中ちゅうで春はる人じんは、9年間ねんかんも思おもい焦こがれた「自分じぶんを殺ころしてくれる女子高じょしこう生せい」として、真帆まほに迫せまっていく。春はる人じんの妄想もうそうやフラッシュバックやモノローグなど、多彩たさいな語かたり口くちのなかで、春はる人じんの思惑おもわくと、真帆まほの知しられざる過去かこが浮うかび上あがってくる。田中たなかが「難むずかしい役やく」だと語かたる通とおり、南みなみ扮ふんする真帆まほは、解離かいり性せい同一どういつ性せい障害しょうがいを抱かかえる役やくどころ。大人おとなしく引ひっ込こみ思案じあんな真帆まほのなかに、真帆まほが心しんのバランスを崩くずした際さいに現あらわれる気きの強つよいカオリ、凶暴きょうぼうなキャサリンという複数ふくすうの人格じんかくが同居どうきょしている。南みなみは、声こえの出だし方かたやふとした眼差まなざしで、3つの人格じんかくを自在じざいに演えんじてみせた。

南みなみ「私わたしも脚本きゃくほんを読よんで、『これ、どういうふうに演えんじようか』というのは、ずっと頭あたまのなかにありました。原作げんさくに戻もどって、自分じぶんのなかでイメージを作つくって現場げんばに行いきました。とりあえず演えんじてみて、『あ、これで良よいんだ』という気き付つきを積つみ重かさねながら、お芝居しばいをしていました」

田中たなか「最初さいしょに体育館たいいくかんのシーンで、どんどん切きり替かわっていく演技えんぎを見みたときは、鳥肌とりはだものでした。モニターでプロデューサーと一緒いっしょに見みていたのですが、『すごいな、南みなみ沙良さら』と思おもいました。本当ほんとうに素晴すばらしかったです」

本ほん作さくの大おおきな見みどころのひとつは、春はる人じんと真帆まほの直接ちょくせつ対決たいけつのシーン。ある事件じけんをきっかけに、真帆まほのなかに眠ねむるキャサリンという人格じんかくを知しった春はる人じんは、罠わなとトリックを張はりめぐらせ、真帆まほを逃にげられない状況じょうきょうにまで徹底的てっていてきに追おいこんでいく。クライマックスのクラス演劇えんげきと重かさなるように、春はる人じんが操あやつり、配置はいちした生徒せいとたちが、完全かんぜん犯罪はんざいのシナリオのそれぞれのピースとなって、ひとつの大おおきな物語ものがたりを形作かたちづくる。「女子高じょしこう生せいに殺ころされたいんだ！」と絶叫ぜっきょうする春はる人じん、鬼気きき迫せまる表情ひょうじょうでその狂気きょうきを見みつめる真帆まほ。ふたりの熱量ねつりょうの高たかい芝居しばい合戦かっせんが繰くり広ひろげられる。

田中たなか「絶叫ぜっきょうシーンは、笑わらいながら、面白おもしろく見みて頂いただいて良よいですよ（笑）。春はる人じんは、真帆まほでもカオリでもないキャサリンに殺ころされたがっている。カオリは真帆まほのことを守まもろうとしているけれど、真帆まほはその存在そんざいを知しらない。すごくややこしい関係かんけいのふたりが探さぐり合あう駆かけ引ひきになっています。真帆まほは春はる人じんにとって脅威きょういでもあり、キーパーソンでもある。狂気きょうき的てきな欲望よくぼうを抱かかえているけれど、カオリに『真帆まほのことを頼たのむよ』と言いっている優やさしさも本心ほんしんなので……アンバランスな感情かんじょうですよね。オートアサシノフィリアの春はる人じんと、解離かいり性せい同一どういつ性せい障害しょうがいを持もつ真帆まほの間あいだのコミュニケーションは、やっぱりある種しゅ不思議ふしぎで、でも奥おくが深ふかくて、滑稽こっけいであるべきだと思おもいます」

南みなみ「カオリは、1番ばんお芝居しばいがしやすかったです。カオリとキャサリンは、自分じぶんとしては区別くべつの仕方しかたが少すこし難むずかしかったですね。カオリとして、春はる人じん先生せんせいと直接ちょくせつお芝居しばいをするときは、自分じぶんのなかで強つよいところをもって演技えんぎができたので、楽たのしかったです。作品さくひんのなかでも好すきで、注目ちゅうもくしてもらいたいシーンになっています」

最後さいごに、映画えいが版ばんならではの魅力みりょくを教おしえてもらった。

南みなみ「映画えいが版ばんは原作げんさくよりも、設定せっていが増ふえています。私わたし自身じしんも、漫画まんがで読よんでいるときより、お芝居しばいを通とおすことで高揚こうよう感かんもありましたし、春はる人じん先生せんせいの狂気きょうきを直じかに感かんじられました。素敵すてきな作品さくひんに仕上しあがっていると思おもいます」

田中たなか「映画えいがのつくりとして、先さきを読よませるようで読よませないつくりになっているし、とにかく脚本きゃくほんが練ねられています。あとは、映像えいぞうがすごくかっこいいです。『まだ見みたい』というカットが続つづくので、濃こい映画えいがになったなと思おもいます。城じょう定じょう監督かんとくは、ご自身じしんで脚本きゃくほんも書かかれていて、イメージをしっかり持もっていらっしゃいます。こだわりが強つよく、センスがある城しろ定てい監督かんとくの手腕しゅわんで、原作げんさくファンの方ほうにも楽たのしんでもらえる、映画えいがならではの魅力みりょくがたくさん生うまれました」

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