レジェンド＆バタフライ

織田おだ信長のぶなが（木村きむら拓哉たくや）の映画えいがというより、濃姫のうひめ（綾瀬あやせはるか）の映画えいがだった。戦国せんごくの怪物かいぶつ、織田おだ信長のぶながをあえて強つよい人物じんぶつとして描えがかず、彼かれの傑出けっしゅつした戦績せんせきの裏うらには濃姫のうひめの助力じょりょくがあったという形かたちで描えがいている。こういう信長のぶながの描えがき方かたは新鮮しんせんだし、それを木村きむら拓哉たくやがやるのも新鮮しんせん。大おおきな子こどもみたいなイメージのキムタク版ばん信長のぶながはなかなかハマってた。
大型おおがた時代じだい劇げきではあるが、合戦かっせんシーンをほとんど見みせないという方針ほうしんをとっていて、これは賛否さんぴ分わかれるのだろう。意図いととしては、2人ふたりのロマンスを描えがくことが主軸しゅじくだし、そこに雄々おおしい合戦かっせんシーンはない方ほうがいいと考かんがえたのだと思おもう。結果けっかとして、濃姫のうひめの力強ちからづよさが際立きわだつ内容ないようになり、戦国せんごく時代じだいを題材だいざいにした作品さくひんとして異色いしょくな、猛々たけだけしさよりフェミニンな雰囲気ふんいきをまとう作品さくひんとなった。個人こじん的てきには、後半こうはんに濃姫のうひめが病やまいに伏ふせてしまうので活躍かつやくの場ばが減へってしまうことが残念ざんねん。綾瀬あやせはるかの芝居しばいが素晴すばらしかったので、もっと活躍かつやくが観みたいなと思おもっていた。

2時じ間あいだ48分ふんがあっという間あいだと感かんじるほどに、一寸ちょっとの隙すきもない大友おおとも啓史ひろし監督かんとく作さく。
クランクイン直前ちょくぜんの一昨年いっさくねん9月がつから事ことあるごとに話はなしを聞きいてきたが、これぞ“勝かち戦いくさ”といえるのではないだろうか。
タクトをふるった大友おおとも啓史ひろし監督かんとくと座長ざちょうとして現場げんばを牽引けんいんした木村きむら拓哉たくやが、今いま作さくに関かかわるスタッフ、キャスト、関係かんけい者しゃの誰だれをも勝かちに導みちびいた。そう表現ひょうげんするのが適切てきせつだと感かんずる。
過去かこを再現さいげんしたかのような街まちの賑にぎわいは目めに楽たのしく、国宝こくほう・重要じゅうよう文化財ぶんかざいの寺社じしゃ仏閣ぶっかくも数多かずおおく登場とうじょうする。
若わかい方ほうは時代じだい劇げきと聞きくとハードルが上あがるかもしれないが、今いま作さくは心配しんぱいご無用むよう。
信長のぶながと濃姫のうひめが政略せいりゃく結婚けっこんで一緒いっしょになり、そこから段々だんだんと愛いとしさを感かんじていくラブストーリーとしても描えがかれている。そして、現代げんだい的てきでもあるので受うけ入いれることが出来できるはず。
これはとにかく劇場げきじょうの大だい画面がめんでぜひ鑑賞かんしょうしてもらいたい作品さくひんである。

本ほん作さくは「織田おだ信長のぶながを木村きむら拓哉たくや」、「濃姫のうひめを綾瀬あやせはるか」というベストと思おもわれる組くみ合あわせで「魔王まおう」と呼よばれるなど数々かずかずの伝説でんせつを作つくった織田おだ信長のぶながが、「蝶ちょう」のように自由じゆうを求もとめた濃姫のうひめとの出会であいから、その生涯しょうがいに幕まくを閉とじる激動げきどうの33年間ねんかんが描えがかれています。
さらには時代じだい劇げきという枠組わくぐみを進化しんかさせるため、「るろうに剣けん心しん」シリーズや大河たいがドラマ「龍馬りょうま伝でん」を手掛てがけた大友おおとも啓史ひろし監督かんとく×「コンフィデンスマンJP」シリーズや「リーガルハイ」シリーズを手掛てがけてきた古沢ふるさわ良太りょうたの脚本きゃくほんのコラボ。
従来じゅうらいの「織田おだ信長のぶながと濃姫のうひめ」の物語ものがたりを“誰だれも見みたことのない切きり口くち”で描えがき出だし、全国ぜんこく30カ所かしょ以上いじょうという邦画ほうが最大さいだい規模きぼでのロケ地ちで撮影さつえいが行おこなわれ、国宝こくほうや重要じゅうよう文化財ぶんかざいなどがそこかしこに映うつし出だされている豪華ごうかな作つくりとなっています。
当初とうしょは違和感いわかんのあった「横文字よこもじタイトル」ですが、実際じっさいに映画えいがを見みてみると従来じゅうらいの「日本にっぽん国内こくないだけをターゲットにした時代じだい劇映画げきえいが」とは違ちがい、「世界せかいをターゲットにした映画えいが」という意思いし表明ひょうめいなのだと納得なっとくできました。
冒頭ぼうとうにおける「当時とうじ16歳さいの織田おだ信長のぶながのヤンチャぶり」の表現ひょうげんによって、緩急かんきゅうが生うまれ、結果けっか的てきには、「木村きむら拓哉たくや×綾瀬あやせはるか」の化学かがく反応はんのうが炸裂さくれつする序盤じょばんとなっています。「織田おだ信長のぶながと濃姫のうひめの物語ものがたり」なのだと理解りかいできる上手うまい構成こうせいとも言いえます。
そして、主役しゅやくの2人ふたり以外いがいでも役者やくしゃが適材適所てきざいてきしょで上手うまくハマっています。
例たとえば伊藤いとう英明ひであきは「陰かげの立役者たてやくしゃ」として引ひいた演技えんぎが存在そんざい感かんを増ましていたり、登場とうじょうシーンが多おおくはないものの斎藤さいとう工こうが徳川とくがわ家康いえやすとして特赦とくしゃメイクにより登場とうじょうしますが大おおきな爪痕つめあとを残のこす上手じょうずさがあります。
おそらくこれ以上いじょうはなかなか考かんがえにくい歴史れきし超ちょう大作たいさく映画えいがになっています。
史実しじつを描えがいている映画えいがなのですが、特とくにラストシーンには驚おどろきのある「唯ただ一いち無二むにの作品さくひん」となっていました。