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「不安に呑まれた人々」福田村事件 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価) - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2023ねん9がつ1にち

  • 予告編よこくへん

不安ふあんまれた人々ひとびと福田ふくだむら事件じけん 杉本すぎもと穂高ほだかさんの映画えいがレビュー(感想かんそう評価ひょうか

4.0不安ふあんまれた人々ひとびと

2023ねん9がつ30にち
PCから投稿とうこう
鑑賞かんしょう方法ほうほう映画えいがかん

関東大震災かんとうだいしんさいおり朝鮮半島ちょうせんはんとう出身しゅっしんひとたちがデマによってころされたというのは有名ゆうめいはなしだが、ころされたのは朝鮮ちょうせんじんだけではなかった。日本人にっぽんじん差別さべつしゃたちや思想家しそうかたちもまたころされていたのだ。その事実じじつ脚色きゃくしょくまじえて丁寧ていねい映像えいぞうしたのがほんさく疑心暗鬼ぎしんあんきおちいったひとなにをするのか、その醜悪しゅうあくさが強烈きょうれつりになっている。
前半ぜんはんは、福田ふくだむら人間にんげん関係かんけい描写びょうしゃいている。不倫ふりんなどで村八分むらはちぶにされかけているものが、虐殺ぎゃくさつにはむしろ加担かたんしないという構図こうずになっているのだが、群集心理ぐんしゅうしんりあやうさはむしろアウトサイダーにならないとえてこないもの。虐殺ぎゃくさつ加担かたんした村人むらびとにもまともな感性かんせいひとはいただろう、しかし、群集心理ぐんしゅうしんりまれるとそういうひとでも歯止はどめがかないことがあるのだ。そういうものにまれないために大事だいじなのは、ポジションだったりする。
虐殺ぎゃくさつ不安ふあんられた村人むらびと自分じぶんたちのコミュニティをまもるためにはじめてしまう。虐殺ぎゃくさつなにかをまもるためにはじまるということをこの映画えいがはきちんととらえている。あらゆる戦争せんそうがそうであるように、「まもる」という「正義まさよし」をめることはむずかしい。大正たいしょう時代じだい物語ものがたりだが、心根こころね部分ぶぶんではまった現代げんだいじんにもわらない部分ぶぶんがある。虐殺ぎゃくさつしないために、いかに不安ふあんにかられずきるかをかんがえねばならない。
こうした歴史れきし暗部あんぶをきちんとつめることは、社会しゃかいとして成熟せいじゅくするために必要ひつようなことだ。この企画きかく成立せいりつさせたことはたか評価ひょうかされるべきだ。

杉本穂高