ゴジラ－1.0

遅おくればせながら、鑑賞かんしょう。
最近さいきん高だか評価ひょうか作品さくひんでも自分じぶんには…って事ことがちらほらあるので、どんなものかな〜、という体からだで映画えいが館かんに足あしを運はこびました…。

横よこっ面つらを叩たたかれたような、見事みごとにひっくり返かえりました！！
これは嬉うれしい誤算ごさん、そして〜ゴジラで泣なくと思おもって無なかったので、ハンカチすぐ出でる所ところに持もってて良よかった…(^_^;)

これは恐怖きょうふに打うち勝かつ物語ものがたりだ…！
誰だれかが貧乏びんぼうクジを引ひかねばならない…
それを誰だれに押おしつけるではなく、各々おのおのが使命しめい感かん、自みずからの判断はんだんで献身けんしん的てきな行動こうどうをとる尊とうとさ、生いきろ！という強つよいメッセージに、心しんを打うたれる

誰だれだって、余あまりの恐怖きょうふに逃にげ出だしてしまうことって、あると思おもう…。

その恐怖きょうふは、ゴジラに限かぎらず、日常にちじょうに潜ひそんでいる事ことだってある。

無事ぶじに戻もどってきても、恥知はじしらず、と後うしろ指ゆびをさされる…悪夢あくむにうなされる日々ひび…

自身じしんのこれまでの事こと、かつて、だったり、現在げんざいの困難こんなんな状況じょうきょうと重かさなり、自分じぶん事ごとのように乗のり出だして観みていた
今いま、観みて良よかった！と思おもえる作品さくひん。

大だい画面がめんで迫せまりくるあのテーマ、ゴジラの身みのすくむ巨大きょだいさ、怖こわさ、強つよさ…画面がめん越ごしにも絶望ぜつぼうを感かんじる…

ゴジラの怒いかりゲージがたまると、尻尾しっぽから背せびれにかけて青白あおじろく光ひかりながらガシャーン！ガシャン！と出でてくるアレや、口くちから出でる波動はどう砲ほうみたいな熱線ねっせん、来くるぞ来くるぞ…が、目撃もくげきできゾクゾクしました！

アカデミー賞しょう視覚しかく効果こうか賞しょう受賞じゅしょうも納得なっとくの迫力はくりょくある映像えいぞう化かに驚嘆きょうたんしつつ、映画えいが館かんで映画えいがを観みられる幸しあわせを噛かみ締しめた…。
もう、すぐにもう一度いちど観みたい！と思おもわせる
素晴すばらしい映画えいがを、心しんからありがとうございます。

いや～～～よくやったな～～～
「特攻隊とっこうたい」というワードだけで嫌いやな作家さっかを思おもい出だしてー山崎やまざき監督かんとくが自身じしんで映像えいぞう化かしているわけでー、同おなじくナショナリズムに回収かいしゅうする物語ものがたりになると思おもったから観みる気きをなくしていた。けれどゴジラはかっこよくて恐こわかったし、VFXは凄すごかったし、物語ものがたりもよかった。隣となりの人ひとは感動かんどうで泣ないていたし。皆みながみて楽たのしめて感動かんどうできて、色いろんな人ひとの「ご意向いこう」を上手うまく調整ちょうせいして、面白おもしろくしているのだから素晴すばらしい。

例たとえば主人公しゅじんこう・敷島しきしま浩一こういちの名字みょうじについて。これがどこから出典しゅってんまたは創作そうさくされたか定さだかではないが、本ほん居きょ宣長のりながは「敷島しきしまの大和心やまとごころを人ひと問といはば朝日あさひに匂においふ山桜やまざくら花はな」と詠よんでいる。この発見はっけんはDHC元もと社長しゃちょうの新しん会社かいしゃがホームページで誹謗ひぼう中傷ちゅうしょうと差別さべつ発言はつげんをしているニュースから私わたしも閲覧えつらんしてできた。元もと社長しゃちょうには中指なかゆびを立たてて感謝かんしゃを示しめしつつ、本ほん居きょ宣長のりながという国学こくがく者しゃとの関連かんれんーというか「敷島しきしま」が日本にっぽんの別称べっしょうと後のちに知しるー、また物語ものがたりでも「戦後せんご復興ふっこう」という「日本にっぽん/人ひと」という想像そうぞう的てき共同きょうどう体たいを構築こうちくする物語ものがたりを準備じゅんびした点てんで本ほん作さくにナショナリズムの側面そくめんがあることは免まぬかれ得えない。簡単かんたんに言いえば、「俺おれたち」は焼やけ野原のはらから必死ひっしに働はたらいて復興ふっこうして高度こうど経済けいざい成長せいちょうを果はたしたのだ！俺おれたち日本人にっぽんじんは素晴すばらしい！そんな美うつくしい国くにニッポンに現在げんざいの俺おれたちは生いかされているのだ！である。

そういう言説げんせつを支持しじしたくなる気持きもちも分わからなくはないし、ある程度ていどの事実じじつは含ふくんでいると思おもいつつ、その言説げんせつから捨象しゃしょうされた事実じじつについても本ほん作さくは主眼しゅがんを置おいている。
例たとえば敷島しきしまは特攻とっこう逃のがれの内向ないこう的てきな人物じんぶつとして描えがかれており、それはとても現代げんだい的てきな人物じんぶつ像ぞうのように思おもえる。さらに彼かれはPTSDを患わずらっているようにみえ、戦後せんごになっても戦争せんそうの傷きずが癒いえていない。彼かれと同居どうきょする典子のりこは、彼かれに貧困ひんこんを指摘してきされ「パンパンになれと言いうの」と発言はつげんする。「パンパン」とは米兵べいへいを主おもな相手あいてとして売春ばいしゅんを行おこなう街娼がいしょうであり、この言葉ことばを物語ものがたりに登場とうじょうさせたことも大おおきな意味いみがあるだろう。このように二人ふたりの人物じんぶつ像ぞうをみれば、「モーレツ社員しゃいん」の「俺おれたち」から二に人にんは捨象しゃしょうされた人物じんぶつであると言いえる。

しかも二に人にんは共同きょうどうで生活せいかつを営いとなみつつ、規範きはん的てきな意味いみでの家族かぞくでもなければ性愛せいあい的てきな関係かんけいでもないことは驚おどろきである。そして二に人にんの間あいだに子こどももいるが、孤児こじであり血縁けつえん関係かんけいは一切いっさいない。つまりここでも結婚けっこんして血縁けつえん関係かんけいになることで家族かぞくになるといった保守ほしゅ的てきな家族かぞく観かんとは違ちがい、生いき延のびるために共同きょうどうで生活せいかつを営いとなむことで、結果けっか的てきに家族かぞくとなり、それを家族かぞくと呼よぶ転換てんかんが起おこっている。このような家族かぞくのあり方かたは戦後せんごに事実じじつとしてあっただろう。そういった点てんでこのような家族かぞく像ぞうを描えがこうとしたことも大おおきな意味いみがある。

このようにこれら二に人にんの人物じんぶつ像ぞうや家族かぞくのあり方かたは、ナショナリズム的てきな側面そくめんを批判ひはん的てきに捉とらえる逸脱いつだつがあるし、性愛せいあいー結婚けっこんー家族かぞくを強固きょうこな三角さんかく関係かんけいに捉とらえるロマンティック・ラブ・イデオロギーについても同様どうような眼差まなざしがある。

さらに敷島しきしまとゴジラの対峙たいじは、内向ないこう的てきな彼かれが勇気ゆうきをもってゴジラを退治たいじする私的してきな物語ものがたり≒個人こじん的てきな語かたりにもなり得えるが、批判ひはん的てきな視座しざをもたらすことも可能かのうにみえる。つまり自己じこ責任せきにんとしての語かたりの不可能ふかのう性せいである。

敷島しきしまは特攻とっこう逃のがれで大戸おおど島とうー硫黄いおう島とうの連想れんそうをしたのは私わたしだけ？ーに「不時着ふじちゃく」する。この逃にげで彼かれの臆病おくびょうが描えがかれるのだが、さらに島しまにゴジラが到来とうらいしてしまう。この時とき、彼かれが銃撃じゅうげきをしなかったことで整備せいび兵へいを死しなせることになり、彼かれらの死しを自己じこの責任せきにんとして、その傷きずに戦後せんごも苦くるしめられることになる。さらに時ときを飛とんで、ゴジラが銀座ぎんざを急襲きゅうしゅうする時ときも、銀座ぎんざに働はたらきに出でた典子のりこを救すくおうとする。しかしその気持きもちとは裏腹うらはらに敷島しきしまはゴジラの放射ほうしゃ火炎かえんによる爆風ばくふうから典子のりこに庇かばわれて、彼女かのじょが死しんでしまう悲劇ひげきに転てんじてしまう。このことからも典子のりこの死しを自己じこの責任せきにんとして責ぜめを負おうのである。

これは理路りろ整然せいぜんとした語かたりのように思おもえる。確たしかに敷島しきしまはその場ばにいて、彼かれだけが生いきて、他たの者ものは死しんだ。彼かれが他たの者ものが死しぬことを防ふせがなかったことには責任せきにんがある。だから彼かれは役やくにたないものであり、トラウマを抱かかえても仕方しかたがないし、死しななければならない。この語かたりが逆説ぎゃくせつ的てきにーつまりそう思おもわれたくなかったらモーレツに働はたらけー「戦後せんご復興ふっこう」を可能かのうにした側面そくめんはあるだろう。けれど現代げんだいに生いきる私わたしとしてはそんなわけないじゃんとも思おもってしまう。

ゴジラは圧倒的あっとうてきな暴力ぼうりょくだ。ゴジラが原水爆げんすいばくから生うまれたことから人為じんい的てきな側面そくめんもあるがーちゃんと本ほん作さくはそこも描えがいている。素晴すばらしいー、災害さいがいなのだ。だから敷島しきしま個人こじんがどうこうしても防ふせぎようがない。大戸おおど島とうの描写びょうしゃもそうだが、彼かれが銃撃じゅうげきできたとてゴジラが死しぬわけがない。だって後ごの描写びょうしゃで戦艦せんかんを簡単かんたんに沈しずめているのだから。典子のりこの死しも偶然ぐうぜんそうなっただけだ。なぜなら典子のりこが列車れっしゃの時点じてんで死しんでいたことだって十分じゅうぶんあり得えるからーむしろあの状況じょうきょうから生いき延のびたのが奇跡きせきだろうー。つまり私わたしたちは災害さいがいによる生せいき死しにを物語ものがたりとして理解りかいはしたい。けれど自己じこ責任せきにんとして語かたるには、災害さいがいも死しも人為じんいによる操作そうさ可能かのうな対象たいしょうではない。だから本ほん作さくは一見いっけん、現代げんだいに即そくした敷島しきしまの自己じこ責任せきにんについての物語ものがたりと思おもえつつも、その語かたりの逆説ぎゃくせつ的てきな不可能ふかのう性せいを示しめしてもいる。

このように自己じこ責任せきにんの物語ものがたりを排はいしつつ、ゴジラにされるがままに破壊はかいされることを受うけ入いれているわけでもない。そのために政府せいふによる介入かいにゅうや撃退げきたいというナショナリズムを導入どうにゅうするわけでもないーというか銀座ぎんざ襲撃しゅうげきで国会こっかい議事堂ぎじどうは暗あんに爆破ばくはされている。政府せいふ批判ひはんー。ここで本ほん作さくは、民営みんえいの防衛ぼうえい組織そしきをつくって、科学かがく技術ぎじゅつで退治たいじしようとするのだ。まさに人為じんいを超こえたゴジラの襲撃しゅうげきという災害さいがいをセカイ系けいのような個人こじんによる解決かいけつではなく、市民しみんが集団しゅうだんして民主みんしゅ主義しゅぎ的てきに解決かいけつする。このような問題もんだい解決かいけつに結実けつじつしたのは純粋じゅんすいに立派りっぱだと思おもう。今いま、私わたしたちに必要ひつような物語ものがたりはまさにこれなのだ。

だから典子のりこが実じつは生いきていたというご都合主義つごうしゅぎ的てきな結末けつまつも問題もんだいない。だって典子のりこにも浜辺はまべ美波みなみにも生いきていてほしいじゃん。やっぱり大切たいせつな人ひとには生いきていてほしい。その思おもいは大事だいじにして、災害さいがいのような事象じしょうを無理矢理むりやりに自己じこ責任せきにんの物語ものがたりに回収かいしゅうさせない。そもそも「自己じこ責任せきにん」という言葉ことば自体じたい、「責任せきにん」が「自己じこ」に内包ないほうされている以上いじょう、この言葉ことばを使つかう時ときには自己じこに責任せきにんをなすりつけたい集団しゅうだん心理しんり、イデオロギーが働はたらいていると考かんがえるべきでしょう。「私わたしに特攻とっこうをさせてください」「では、死しんでも自己じこ責任せきにんだからな」みたいな。ここでは特攻とっこうをしなくてはいけない構造こうぞう/権力けんりょく関係かんけいに対たいする言及げんきゅうは一切いっさいなく自己じこ責任せきにんに結実けつじつする。
それでも「責任せきにん」を負おぶおうとすること。そのために皆みなで協力きょうりょくして集団しゅうだん的てきに解決かいけつしようとすること。災害さいがいそれ自体じたいが起おこることは防ふせげないが、防災ぼうさいに努つとめること、起おこったことに懸命けんめいに対処たいしょすること、それは私わたしたちにもできるはずだ。そんな「責任せきにん」の原理げんりが今いま、私わたしたちが生いき延のびるために必要ひつようとされている。

そうは言いっても純粋じゅんすいに結末けつまつを称賛しょうさんできるわけでもないと思おもっている。二に点てん指摘してきするが、それは「民営みんえいの防衛ぼうえい組織そしきの表象ひょうしょう」と「敷島しきしまがパラシュートで脱出だっしゅつする描写びょうしゃ」についてである。
民営みんえいの防衛ぼうえい組織そしきについては、ナショナリズムを排はいする点てんでいいとは思おもいつつ、現況げんきょうにおいてどのように捉とらえられるかは注意ちゅういが必要ひつようだろう。現在げんざいにおいては、敷島しきしまのような市民しみんが集団しゅうだんで民営みんえいする形態けいたいは、いつの間まにか私企業しきぎょうのような私営しえいに取とって代がわり、災害さいがいといった問題もんだいを民主みんしゅ主義しゅぎ的てきに解決かいけつすることが、利潤りじゅんの追求ついきゅうに変かわってしまってはいないだろうか。それはオリンピックや万博ばんぱくの状況じょうきょうをみれば一目瞭然いちもくりょうぜんであるが、このようなイベントの理念りねんは形骸けいがい化かして、企業きぎょうの利潤りじゅん獲得かくとくという暴利ぼうりに変かわっているじゃないですか。しかも企業きぎょうは政府せいふと結託けったくして共犯きょうはん関係かんけいを成なしていることも明あきらかだ。本ほん作さくの民営みんえいの防衛ぼうえい組織そしきもそうだ。戦艦せんかんは自前じまえでは製造せいぞうされておらず、政府せいふによる譲渡じょうとだ。このような点てんで、結末けつまつが政府せいふを排はいしているように思おもいつつも実じつは、暗あんに結託けったく、関係かんけいせざるを得えないことは批判ひはん的てきな注意ちゅういが必要ひつようである。しかもゴジラの退治たいじを企業きぎょうによる科学かがく技術ぎじゅつで行おこなうことは、戦後せんご復興ふっこうのナショナリズム言説げんせつを再ふたたび浮上ふじょうさせることになりかねない。

敷島しきしまがパラシュートで脱出だっしゅつする描写びょうしゃも納得なっとくはいかない。彼かれは最後さいごの「海神わたつみ作戦さくせん」で、戦闘せんとう機きによる誘導ゆうどうを買かって出でて、「特攻とっこう」をする。しかしかつて怨恨えんこんのあった整備せいび兵へいによる技術ぎじゅつ改良かいりょうのおかげで、敷島しきしまはゴジラに突つっ込こむ直前ちょくぜんにパラシュートで脱出だっしゅつできるのである。もちろん敷島しきしまが死しぬべきだと言いいたいわけではない。そうではなく、観客かんきゃくは敷島しきしまが特攻とっこうして死しぬしかないと思おもいつつも、実じつは事前じぜんに脱出だっしゅつ方法ほうほうが説明せつめいされていたというカラクリがある点てんだ。このように描写びょうしゃされることは、敷島しきしまのみが生死せいしを操作そうさ可能かのうな主体しゅたいとして描えがかれてはいないだろうか。それは災害さいがいや生死せいし、自然しぜんも人工じんこう的てきに操作そうさ可能かのうな主体しゅたいを立たち現あらわさせて、再ふたたび自己じこ責任せきにんの主体しゅたい/語かたりを導入どうにゅうすることになりかねない。

そのような点てんで、結末けつまつを無む批判ひはんに擁護ようごしたいわけではないし、東宝とうほうといった企業きぎょうと関かかわらざるを得えない以上いじょう、限界げんかいはあると思おもいつつ留保りゅうほは必要ひつようだとは思おもっている。

これは、ゴジラを模もした平和へいわを希求ききゅうする物語ものがたりだと思おもう。
そういう意味いみでは原点げんてん回帰かいきだろうか。監督かんとくの英断えいだん。
見みる前まえは正直しょうじき、戦争せんそう映画えいがの文脈ぶんみゃくで「この国くにを守まもる」路線ろせんだと思おもってた（し、ゴジラにもアカデミーにも興味きょうみなかった←）。でも全然ぜんぜん違ちがう。
怪獣かいじゅうを前まえにして、しかも戦後せんご直後ちょくごの設定せっていで、「生いきよ」と。「絶対ぜったい死しぬな」と。そう繰くり返かえし口くちにする。「今度こんどは生いきてこそ」、「未来みらいのために」とゴジラに対峙たいじさせることが、どれだけ素晴すばらしいか。本来ほんらい見みえない死者ししゃとして扱あつかわれる怪獣かいじゅうの下敷したじきになる人ひとも顔かおをしっかり見みせたりもしていて、驚おどろいた。それを織おり込こんで刷すり込こみのように「生いきる」ことを言いい続つづけることが、いかに大事だいじか。ゴジラでまさか「戦争せんそうに行いかなかったことは幸しあわせ」なんだと語かたらせたのには、脱帽だつぼうした。
某ぼうワイドショーでの監督かんとくの熱あつい語かたりにほだされて見みて、本当ほんとうによかった。
確たしかに台詞せりふも展開てんかいも月並つきなみかもしれない。でもゴジラの源みなもとには戦争せんそうがあると思おもっていて、そこに真まっ向こうから挑いどんだ監督かんとくの勇気ゆうきが素晴すばらしい。脚本きゃくほんの勝利しょうり。

「シン・ゴジラ」の都内とない破壊はかいシーンはじめ、その迫力はくりょくや恐おそろしさ、そして全編ぜんぺん通とおして少すこしめんどくさいが、凝こったカメラワーク、逃にげ惑まどう人々ひとびと、高速こうそく道路どうろの渋滞じゅうたい、ゴジラの絶望ぜつぼう的てきな放射能ほうしゃのう攻撃こうげきの描写びょうしゃなど、見みごたえは大おおいにあった。

絶望ぜつぼう感かんを感かんじるという点てんでは、「54年版ねんばん」の銀座ぎんざの破壊はかいシーンの大だい火災かさいの表現ひょうげんは今いまでも恐おそろしいものがある。

本ほん作さくのCGについて、ハリウッドレベルにまで達たっした、という意見いけんもあるが、そこは正直しょうじきどうでもよくて、CGの完成かんせい度どは高たかいのかもしれないが、別べつに「シン・ゴジラ」ほどしろ、とは思おもわないが、カメラは退屈たいくつ。

また、緊迫きんぱく感かんが希薄きはくすぎるのは問題もんだい。時代じだい背景はいけいをそれにするなら、もっと悲惨ひさんな状況じょうきょうになるはずなのに、スケールが小ちいさい。

わかりやすいところで、深海魚しんかいぎょが浮うかんでくると、ゴジラが来くる、ということを描えがくにしても、浮うかび上あがった深海魚しんかいぎょの数かずが少すくなすぎて、いくらでもCGで書かけるのに、ああ、パニック映画えいがとか、あんまり興味きょうみないんだなあ、と。そのくせ、「ジョーズ」のパロディをするんだから、序盤じょばんのがっかり感かんは割わりとある。

ただ、これはオレのないものねだりだが、パニック、脅威きょういに対たいする政府せいふ、そして個人こじんの視点してんで描えがくことは、「ディープ・インパクト」というパニック映画えいががあったりするので、その辺あたり、いわば、「54年版ねんばん」と「シン・ゴジラ」の真まん中なかあたりで、作つくってほしかったなあ、と思おもうが、先さきに挙あげたように、そういう視点してんは初はじめから持もち合あわせていないのだろう。

なんだか、ストーリーとCG、エモいセリフにリキ入いれましたが、「映画えいが表現ひょうげん」は全まったく関心かんしんありません、みたいな。

山崎やまざき監督かんとくは仕事しごとが早はやく、「白しろ組ぐみ」との阿吽あうんの呼吸こきゅうなんだろうが、それって、「どこかで見みたことがある」「あれと一緒いっしょ」みたいなやり取とりだからか？、なんて穿うがった見方みかたもしてしまう。まあ、それはそれで、効率こうりつ、スピード、正確せいかくさ、という点てんでビジネスとしては、とても必要ひつようだが。

神木しぼくさんが、こんな表現ひょうげんしかできないとか、安藤あんどうさんがあまりにもひどく見みえるのも、子供こどもに見みてもらう、ということ前提ぜんていなので、その点てんはこちらが我慢がまんするしかない。が、途中とちゅうあまりに我慢がまんならなくなったが。

まあ、「54年版ねんばん」だって、核かく批判ひはんを普通ふつうにセリフで言いってるしね。

「シン・ゴジラ」で子供こどもを置おいてけぼりにしたので、子供こどもにゴジラを返かえしてあげた、ということである。

あ、でも海外かいがい版ばんゴジラ、ギャレス・エドワーズのやつや、ギドラがでるやつや、小栗おぐりさんが出でるやつに比くらべると、こっちのほうがいいかな。