水は海に向かって流れる
劇場公開日:2023年6月9日
解説
田島列島の同名コミックを、広瀬すず主演、「そして、バトンは渡された」の前田哲監督のメガホンで実写映画化。
高校に入学した直達は、通学のため叔父・茂道の家に居候することに。しかし最寄り駅に迎えに来たのは、見知らぬ女性・榊さんだった。しかも案内されたのはシェアハウスで、会社員の榊さん、親に内緒で会社を辞めマンガ家になっていた叔父の茂道、女装の占い師・颯、海外を放浪する大学教授・成瀬ら、くせ者ぞろいの住人たちとの共同生活が始まる。いつも不機嫌そうだが気まぐれに美味しいご飯を振る舞ってくれる榊さんにいつしか淡い思いを抱くようになる直達だったが、彼と榊さんの間には思わぬ過去の因縁があった。
広瀬すずが榊さん役で主演を務め、「キングダム」の大西利空が直達、「横道世之介」の高良健吾が茂道、アニメ映画「かがみの孤城」で主人公の声を担当した當真あみが直達の同級生で颯の妹の楓を演じる。
2023年製作/123分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ
劇場公開日:2023年6月9日
スタッフ・キャスト
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2023年6月9日
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鑑賞方法:映画館
週末の仕事帰りに、何か映画が観たいなと思い
たまたま時間があって、評価もそこそこだった本作品をチョイス。予告編すら観ていない真っ白な心で鑑賞いたしました。
途中まで、重い話かな?と
少し選択を間違えたかと後悔しかけましたが、
観終わった後は、あらまぁ不思議?!
ひと言で言うなら、
「なんだか清々しい気持ち」でした。
この気持ちの変化をもたらしたのは
紛れもなく広瀬すずちゃんの演技によるものでしょう。正直、世間で評価されているほど好きな女優さんではなかったけれども、今作品においては、彼女なくしては成立しなかったと思えるほど彼女の演技に釘付けになりました。
主人公の高校生を演じた大西くんもとても良かったです。
誰にでもある、こころの奥の一番柔らかい部分-触れられたくない、でも触れない限りは決して次には進めない人生の課題-
そういった課題には、こう立ち向かえ!
というお手本を見たような気がします。
主人公のナオタツくんの
ピュアなハートにやられました。
2023年6月12日
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鑑賞方法:試写会
衣装から花からインテリア小物までカラフルでキラキラな映像コーディネートは、インスタ世代を意識した“ばえ”演出か、将来の配信でのスマホ視聴を見据えた作りなのか。
「子供はわかってあげない」に続き田島列島の漫画が実写映画化されるのは2作目。数多くのランキングで上位に入り手塚治虫文化賞新生賞の受賞理由にもなった原作は未読ながら、映画公式サイトに掲載された抜粋を見ると、素朴だが味わいのあるキャラクター造形、恋愛しないと宣言している榊さんや売れていない漫画家の茂道をはじめ服装はシンプルで地味目の印象だ。
榊さん役の広瀬すずと茂道役の高良健吾は人気・実力で世代トップクラスの演者だし、高校生の直達役の大西利空と同級生の楓役・當真あみも共に十代ながら多数の作品で目にする売れっ子。前田哲監督は、生年は非公表のようだがインタビューで岩井俊二監督(現在60歳)とほとんど一緒の年齢と語っていたし、1998年に監督デビューして以来メガホンをとった映画は20本以上あり、ベテランの部類に入るのだろう。
高評価された原作漫画に、メジャーなキャスト陣と、素材は良いのに活かしきれていないもったいなさ。これは、思春期や青春期を描いた漫画を人気俳優のキャストとベテラン監督の組み合わせで手堅く(冒険しないで)稼げる実写映画化作品を量産してきた、日本の商業映画の構造的な問題ではなかろうか。まず榊さんのキャラクターで考えると、広瀬すずが(派手ではないにせよ)きっちりメイクして衣装もおしゃれで、恋愛から距離を置いている榊さんにしては人目をひく美人すぎ。代わりに誰とはすぐに思いつかないものの、広瀬すずほどわかりやすい美人でなく、もっとあっさりした顔立ちだが見慣れると人柄の良さがにじみ出てくるような、なおかつ化粧っ気のない顔でカメラの前に立てる二十代半ばの女優をキャスティングできなかったか。高良健吾が演じる脱サラした漫画家も、年齢不相応のキャラクターニット帽にカラフルコーデで薄っぺらくてリアリティーに欠ける人物造形だ。
冒頭に出てくるポトラッチ丼になぞらえるなら、高級和牛を普通のめんつゆで手早く味付けた料理を振舞われるのに似て、味覚が発展途上の十代なら最高に思えても、年相応に食の経験を積んだ大人なら「適切に調理すれば素材の良さをもっと楽しめるのにもったいない」と感じるようなもの。沖田修一監督・上白石萌歌主演の「子供はわかってあげない」が素晴らしかったからなおのこと、この「水は海に向かって流れる」も逸品になり得たのではないかと。
2024年6月15日
Androidアプリから投稿
両不倫親の子供同士の甘切ないストーリー
片方は、不倫した母が出ていって、別の家庭を持っている。直達の不倫した父は、今も家族としている。
現代社会の投影もあり、人間関係のほつれも学びになった。
素朴ながらいい味は出ていた。
年の差婚が生まれる理由がちょっと理解できた。
心が少しずつ解けていき、雨が川になり、最後に大海原へと繋がっていくところが、心情と重ならせていて、非常に文学的な表現だと思った。
2024年4月27日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD
<映画のことば>
千紗ちゃんは、16歳のまんまで時間が止まっちゃってる。
自分でだって、動かした方がいいってことは、分かってるだろうけど。
「何もなかったことにして暮らしたい」とは言うものの、その内心は、「何もなかった」訳でもないし、あまつさえ「何もなかったこと」には、できないことも、千紗自身の中では百も承知、二百も合点。
しかし、雨として地表に降った雨は、川に集まって流れ下り、いつかは海へとたどり着く。
その万古不変の自然の摂理と同じように、千紗と母親との関係性においても、結局は「血は水よりも濃かった」ということだったのでしょう。
そんなこんなの、千紗と彼女の母親との関係性が、なんとも胸に痛い一本でした。評論子には。
かてて加えて、千紗を演じた広瀬すずの演技が圧巻の一本でもありました。
佳作であったと思います。
(追記)
それにしても、ピュアですねぇ。直達君は。
彼と千紗との「年齢の差」というものも、その一点に昇華していたのかも知れないと思いました。本作の場合では。評論子は。
今はもうすっかり、そういうピュアさ加減というものは、人生のどこかにまるまる置き忘れて来てしまったような評論子ですけれども。
思い返してみれば、直達君と同じような世代の、やおら半世紀も前に遡ってみれば、こんな感じとも、そう違(たが)わなかったような気も、しないでもありません。